2023年01月20日
アイデアよもやま話 No.5483 アジア脱炭素を巡る「ロードマップ合戦」!
昨年9月26日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアジアの脱炭素を巡る「ロードマップ合戦」について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

今日、都内で脱炭素に向けた国際会合が開かれ、日本をはじめ東南アジアなどの閣僚らが参加しました。
実は今、東南アジアの脱炭素化を巡っては世界各国が主導権を握ろうと水面下で激しい駆け引きをしているのです。

都内のホテルで22ヵ国と国際機関が参加するアジアの脱炭素を進める国際会議、「アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合」が開かれました。
主催したのは日本の経済産業省です、
西村経済産業大臣は以下のようにおっしゃっています。
「日本のCO2排出を削減するクリーン技術は、欧州各国からもあらためて期待と注目が寄せられています。」

再生可能エネルギーの導入が遅れるアジアの新興国、国際エネルギー機関の調査では、東南アジアは2050年時点でもエネルギーの7〜8割を化石燃料が占めると見られています。
そのアジアがこぞって脱炭素に移行する時、巨大なマネーが動きます。
それを手にするのは誰なのか、そんな水面下の駆け引きを間近に見つめる通産省の幹部、舞台裏で何が起こっているのかについて、経産省 資源エネルギー庁 石油・天然ガス課の早田豪課長は次のようにおっしゃっています。
「実は今、アジアでは「ロードマップ合戦」と言っていいほどに、先進国がアジアに入り込んで、自分たちの産業に都合のいいロードマップを相手国政府にある意味提示をすると。」

通産省幹部が語る「ロードマップ合戦」とは何なのか、複雑な地形と気候のアジアでは風力資源など再生可能エネルギーのポテンシャルがASEAN諸国それぞれで違うため、一国一国ごとに脱炭素化へのロードマップが異なるのです。
そこに目を付けた先進国が自分たちの産業に有利になるような脱炭素のロードマップをアジア各国に売り込んでいるというのです。
早田課長は次のようにおっしゃっています。
「日本としてカーボンニュートラルに向けたロードマップ作りのサポート支援を是非させていただきたいと考えております。」

実際に経産省がある国に提案した脱炭素のロードマップでは理想的なエネルギー構成などが示され、それに必要な技術を交渉で売り込むといいます。
ここで強調されていたのは水素とアンモニアです。
主に肥料として活用されてきたアンモニア、今、燃やしてもCO2を出さない脱炭素のエネルギー源として注目を集めています。
そのアンモニアをエネルギーに変える技術を持つのが三菱重工です。
液化したアンモニアだけを独自のガスタービンで燃やし、発電、CO2ゼロのエネルギーを作る技術を開発しています。
三菱重工は今回の会議に向け、アンモニアを使った脱炭素技術をシンガポールの政府企業に売り込み、発電事業を共同で進めることで合意、経産省のロードマップに基づいて官民連携で臨んだ成果だといいます。
三菱重工業の正田淳一郎シニアフェローは次のようにおっしゃっています。
「まず発電から入り、陸の脱炭素を実現していきますけども、弊社は船舶エンジンもやっておりますので船舶(燃料)のアンモニア化を進めて、海の方でも脱炭素をしていくと。」

日本政府は、独自の脱炭素ロードマップに基づき、インドネシアやタイなどと協議を継続しているということです。
早田課長は次のようにおっしゃっています。
「こういうエネルギーのゲームチェンジが大きく、その地殻構造が変わっていくと。」
「エネルギーの地殻変動が起こってくるというのがこれからの新しいエネルギーの世界でありまして、それに対するファイナンスの支援とか、人材育成の支援とか、知見の共有とか、こういったものを全部合わせ技で日本としては提案をしていきたいと思っています。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

地球温暖化は世界各国共通の問題です。
従って、国際的に協力しあって対応すべきなのです。
そうした中、今回ご紹介したアジアという地域内での取り組みとして「アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合」という国際会議が経産省主催で開催されたのはとても理に適っています。
なぜならば、再生可能エネルギーの導入が遅れているアジアの新興国では大量のCO2が排出されており、国際的に「2050年にはCO2排出量を実質ゼロにする」という目標が掲げられていますが、東南アジアは2050年時点でもエネルギーの7〜8割を化石燃料が占めると見られているからです。
一方、西村大臣がおっしゃっているように、日本にはCO2排出量を削減する優れた技術が沢山あり、その技術をアジア域内で展開することにより国際的な2050年の目標を達成する可能性が高まるからです。

なお、アジアがこうした脱炭素に移行する時、再生可能エネルギーへの投資に伴い、当然巨大なマネーが動きます。
ですから、先進国を中心に東南アジアの脱炭素化を巡って世界各国が主導権を握ろうと水面下で激しい駆け引きをしているわけです。
そして、アジアでは「ロードマップ合戦」と言われるように、先進国がアジアに入り込んで、自分たちの産業に都合のいいロードマップを相手国政府に提示している状況は決して悪いことではありません。
ASEAN諸国はそれぞれ複雑な地形や気候が異なり、再生可能エネルギーのポテンシャルがそれぞれで違うため、一国一国ごとに脱炭素化へのロードマップが異なるのです。
ですから、それぞれの先進国がASEAN諸国の一国一国ごとに脱炭素化へのロードマップを提示し、より低価格で、より効果的で、より安全で、といったように結果的により優れた脱炭素対策がASEAN諸国で取れればいいわけです。

そうした中、実際に経産省がある国に提案した脱炭素のロードマップでは理想的なエネルギー構成などが示され、それに必要な技術を交渉で売り込むといいます。
番組では、三菱重工によるアンモニアをエネルギーに変える技術について伝えていましたが、官民連携で是非「ロードマップ合戦」に勝ち抜いていって欲しいと思います。
その際、まず日本国内でこうした先進技術を実用化して実際に成果をあげ、実績に基づいたロードマップの提案がより説得力を増します。
そういう意味では、こうした取り組みと並行して、日本国内でのCO2排出量削減の成果が問われると認識すべきなのです。
そのためにも2050年と言わず、1日も早く日本国内の「CO2排出量を実質ゼロにする」という目標により一層近づけることが求められるのです。

 
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