2023年01月13日
No.5477 日本の宇宙ベンチャーの取り組み事例 その3 賑わいを見せる宇宙関連ビジネス!
今や、宇宙ビジネスが産業界のニューフロンティアとして注目を集めています。
そして、これまでアイデアよもやま話 No.4707 ロケットの洋上打ち上げで宇宙ビジネス拡大へ!などでご紹介してきました。
そこで、3回にわたって日本の宇宙ベンチャーの取り組み事例についてご紹介します。
3回目は、昨年12月12日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通して、賑わいを見せる宇宙関連ビジネスについてです。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

今、日本の企業が宇宙ビジネスに続々と参入していて、国も支援に本格的に乗り出しています。

昨日の日本時間、午後4時半過ぎ、アメリカのフロリダ州から打ち上げられた、独自に開発された月面着陸船、日本の宇宙ベンチャー、株式会社ispace(アイスペース)が月への着陸を目指すプロジェクトです。
民間企業としては世界で初めてとなる月面着陸を目指します。
打ち上げから約50分後には、打ち上げ用ロケットから着陸船の切り離しにも成功しました。
ispaceの袴田武史CEOは次のようにおっしゃっています。
「この我々の打ち上げが民間での月の探査をする、世界で初めてのミッションになっていきますので、素晴らしい打ち上げが実行出来て。本当にうれしく思っております。」

来年4月頃に月に到着する予定で、成功すれば民間企業としては世界初、見据えるのは地球から月への輸送ビジネスの実現です。
袴田CEOは次のようにおっしゃっています。
「宇宙に経済が出来ていって、産業としてしっかりと確立していくことが重要だと。」
「技術だけではなく、資本と経営をしっかりと両立をさせていくことが自分自身の非常に大きな関心でして、世界の宇宙の産業に貢献出来るような立ち位置にしていきたい。」

今回の打ち上げについては、自動車メーカーのスズキなど、複数の民間企業がサポート、中には三井住友海上火災保険による月保険もあります。
航空宇宙ユニット長の林洋史さんは次のようにおっしゃっています。
「今回の打ち上げに合わせて、世界で初めての月保険を開発いたしました。」

この月保険は、打ち上げから月面探査まで様々な段階で起きたトラブルに対応するというものです。
林さんは次のようにおっしゃっています。
「宇宙に挑戦する企業がどんどん増えてくるということであれば、それを支援する我々もビジネスチャンスといううえでも非常に大きな魅力を感じている。」

今、宇宙関連ビジネスが賑わいを見せています。
今日、都内で宇宙ビジネスに取り組む企業が技術を披露しあう展示会「NIHONBASHI SPACE WEEK2022」が開催され、参加団体は昨年よりも5割近く増えました。
中でも注目されていたのは、前回ご紹介した株式会社デジタルブラストで開発中の国内初の商業宇宙ステーションです。(参照:アイデアよもやま話 No.5476 日本の宇宙ベンチャーの取り組み事例 その2 日本初の独自宇宙ステーション建設!

現在、約30兆円規模の世界の宇宙産業の市場(こちらを参照)、2040年までには100兆円規模に成長すると見られています。
国も民間企業の支援に乗り出しています。
今日、行われていたのは経済産業省(経産省)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が共同で開催したコンペ、1位の賞金は1000万円、懸賞金を出すのは政府が係わる事業としては初めてです。
条件には、経産省が開発したTellus(テルース)を使うこと、衛星で得られた様々なデータ(光学や気象、標高など)を高速処理し、無償で企業などに提供される衛星データのプラットフォームです。
株式会社Synspectiveが提案した内容について、同社の小串聡彦さんは次のようにおっしゃっています。
「船舶混雑、コンテナ混雑、トラック混雑の3つを通じて、想定顧客に売っていくと。」

悪天候で雲がかかっても気象を観測出来る独自の画像解析技術を使い、船舶やトラックなどの港湾における輸送の混雑状況を常に把握し、スムーズな物流をサポートします。
この企業は港湾部門で2位に選ばれ、500万円を獲得しました。
小串さんは次のようにおっしゃっています。
「これまで使われていなかった衛星データが今後使われるようになって、ソリューションもどんどん出てくると新しいサービスが出て、産業自体の構造が少しずつ変わっていく。」

株式会社SPACE SHIFT(スペースシフト)が発表したのが災害時に活用出来るシステムです。
大規模な洪水の時、衛星データを活用して浸水域をAIで自動解析、道路情報や工場、住宅、商業施設の情報を重ねることで、被害状況をリアルタイムに可視化して提供するというものです。
災害部門で、見事1位を獲得、衛星のデータ解析では日本は世界に後れをとっていない分野だといいます。
スペースシフト 事業開発部の川上勇治部長は次のようにおっしゃっています。
「SAR(こちらを参照)衛星、レーダー衛星は人の目で見ると中々解析は難しいというとこで、ここに特化して解析している会社はまだ世界でもそんなに多くないと思いますので、まだまだ優位性は世界で十分に戦える。」

宇宙ビジネスを巡っては、今、国同士の競争が激化しています。
日本政府も今後、発展が見込まれる宇宙ビジネスを国としてバックアップしていく考えです。
NEDOの久木田正次理事は次のようにおっしゃっています。
「(宇宙ビジネスに関して、)これまで中々安全保障として大きな声で実施してこなかったところなんですね。」
「これは何となく防衛とか内々でやってきた。」
「ただし、経済安全保障という意味で、これ(宇宙産業)は今から大きなうねりになるのではないかと思います。」

NEDOに注目している解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「予算ですよね。」
「研究機関であるNEDOなんですけど、これまで年間予算約1500億円だったわけでしょ。」
「それがここにきて基金という格好で約3兆円がドンとついてますよね。」
「要するにDX(デジタルトランスフォーメーション)でしょ。」
「半導体、そして経済安全保障といったような極めて重要な戦略分野にNEDOが位置付けられているということですよね。」
「その意味で、いろんな研究に対してコンペをやっていくのは今後の戦略性という意味で重要になってくるんじゃないでしょうかね。」
「(お金を有効に使っていくためにもコンペのような懸賞金型の工夫をしていくことの必要性について、)そうですね。」
「3兆円、宝くじに当たったような感覚じゃ困るので、有効に使ってもらいたいですね。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通して、個々の宇宙ベンチャー関連ビジネスについて以下にまとめてみました。
(ispace)
・地球から月への輸送
・月面探査による新たな資源の獲得
・新たな月保険の誕生

(Synspective)
・悪天候でも気象を観測出来る独自の画像解析技術を使い、船舶やトラックなどの港湾における輸送の混雑状況を常に把握し、スムーズな物流をサポート

(SPACE SHIFT)
・大規模な洪水の時、衛星データを活用して浸水域をAIで自動解析、道路情報や工場、住宅、商業施設の情報を重ねることで、被害状況をリアルタイムに可視化して提供

こうして3回にわたって宇宙ベンチャー関連ビジネスをみてくると、その内容は以下に大別出来ます。
・人工衛星
・衛星データの解析
・輸送ロケット
・宇宙ステーション
・月など他の惑星での資源開発
・火星など他の惑星への移住

まだ宇宙ビジネスへの取り組みは歴史が浅いですが、2040年までには100兆円規模に成長すると見られていますから、これからも宇宙ベンチャーは次々に登場してきて百科騒乱が見込まれます。

そうした中、日本政府もこうした状況に対応すべく、宇宙ビジネスに年間3兆円の予算を基金として準備するということは、その本気度がうかがえます。
滝田さんも指摘されているように、宇宙関連ビジネスにこの基金が有効に活用され、ビジネス全体の活性化につながっていって欲しいと思います。

 
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