2023年01月10日
アイデアよもやま話 No.5474 上海協力機構の首脳会談にみる、あなどれない中露陣営の動き!
昨年9月16日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で上海協力機構の首脳会談にみる、あなどれない中露陣営の結束について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

ロシアや中国、インドなどが参加する上海協力機構(SCO こちらを参照)の首脳会議は、今日、全体会合を開き、アメリカを念頭に制裁や内政干渉に反対する首脳宣言を採択しました。

ウクライナ侵攻によって孤立を深めるロシアのプーチン大統領は中国に続いてインドとも首脳会談を行い、欧米各国に対抗しようとしています。

欧米によるウクライナによる軍事支援などを受け、一部の地域で撤退を余儀なくされたロシア、ウクライナ侵攻によって孤立を深める中、プーチン大統領が関係強化を目指しているのがアジアなど、「非」欧米諸国です。
サマルカンドで行われている中国とロシアが主導する国際的な枠組み、上海協力機構の首脳会議、加盟8ヵ国にオブザーバーのトルコを含む、合わせて14ヵ国が出席しました。
会談ではサマルカンド宣言を採択、欧米による対ロシア制裁を念頭に、「国連安全保障理事会(国連安保理)の認めていない、一方的な経済制裁は国際経済に悪影響を引き起こす」と強調しました。
会談の場で、プーチン大統領は次のようにおっしゃっています。
「我々が世界全体とともに協力するために開かれている連携は閉鎖的なものではない。」

また、習近平国家主席は次のようにおっしゃっています。
「外部勢力の扇動による革命を防ぎ、いかなる口実であれ、他国の内政干渉に共同で反対する。」

アメリカを軸とする西側諸国に対抗する姿勢を鮮明にしました。
プーチン大統領が首脳会議に合わせて行ったのが各国との会談です。
昨日行われた習近平国家主席との会談で、プーチン大統領はウクライナ情勢を巡って、中国側が抱く疑問や懸念について理解しているとしつつ、中国の台湾政策について支持する姿勢を表明、更にインドを加えた3ヵ国でも首脳会談も開催、ロシアの天然ガスをモンゴル経由で中国に運ぶパイプラインの建設計画を積極的に推進することで合意しました。
そして、今日行われたインドとの首脳会談で、インドのモディ首相は次のようにおっしゃっています。:
「今は戦争の時代ではない。」
「我々は可能な限り早く終結させたい。」

今月7日に開かれた国際経済フォーラムで、プーチン大統領は「アジア太平洋地域とのパートナーシップはロシアに新たな機会を開く」と強調し、アジアの将来性を称賛したプーチン大統領ですが、アジア重視の狙いについて、防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長は次のようにおっしゃっています。
「苦境に立たされたロシアが中国やインドなどにエネルギー輸出を強めようとしているわけでありまして、それ以外の国にも輸出先を拡大していきたいと。」
「西側諸国の制裁によって経済的に苦境に立たされる中で、そこをいかに打開していくか、そのためにもアジア地域の国々との連携を図りながら、その抜け道を探りたいという思惑もあるのではないかと思います。」

ウクライナ侵攻から半年が過ぎ、外交攻勢を活発化させるロシア、来週にはラブロフ外相が出席する予定の国連総会があり、プーチン大統領も来月カザフスタンで行われる国際会議「アジア相互協力信頼醸成会議」(CICA)や11月にインドネシアで行われるG20、20の国と地域の首脳会議に出席する見通しです。
しかし、兵頭さんは、ロシアが描くアジア戦略は順調に行かないだろうと次のように指摘します。
「ロシアのこれまでの同盟国、友好国の間でも、少しロシアと距離と保とうとする国が出始めていると。」
「「アジア転換」を果たしながら、アジアで友好国を拡大していきたいというロシアの狙いも中々難しいところがあるのではないかと思います。」
「日本をけん制する動きを中国と軍事的な連携を深めながらロシアがこれから強めていく、そのあたりは日本としても十分に警戒していく必要があるのではないかと。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

民主主義陣営vs専制主義陣営(こちらを参照)という図式の中で国際社会でもめ事を解決しようとしても、双方とも自分の属する陣営の立場を少しでも有利にしようという考えをベースに屁理屈でも何でも並べて、相手の陣営を攻撃し、一方で自らの非は認めようとせず、自らの主張の正当性を強調する傾向があります。
同時に、どちらの陣営にも属さない国々に対して自らの陣営への取り込みを図ろうとします。
まさに陣取り合戦です。

今回ご紹介した上海協力機構は、中国とロシアを中心とする専制主義国家陣営の結束を固め、更にどちらの陣営にも属さない国々の取り込みを狙っているのです。
なお、中国による一帯一路政策やアフリカ諸国への経済的な支援、あるいは南の島しょ国での覇権拡大(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.766 『中国が南の島しょ国での覇権拡大を進める真の狙いとは』)などはその典型例です。
このように陣取り合戦では中国は民主主義陣営の一歩先を行くしたたかな戦略を進めています。

さて、今回の会談ではサマルカンド宣言を採択、これまで繰り返しお伝えしてきたように、中国とロシアは国連安保理の常任理事国の立場、すなわち拒否権を利用し、ロシアによるウクライナ侵攻による対ロシア制裁を念頭に「一方的な経済制裁は国際経済に悪影響を引き起こす」と強調しているのです。
また、今回の上海協力機構の首脳会議の場で、プーチン大統領は「我々(専制主義陣営)が世界全体とともに協力するために開かれている連携は閉鎖的なものではない。」と主張しているのです。
また、習近平国家主席も「外部勢力(民主主義陣営)の扇動による革命を防ぎ、いかなる口実であれ、他国の内政干渉に共同で反対する。」と主張しているのです。
ちなみに、習近平国家主席は折に触れ、自らの政策に異を唱える他国に対して内政干渉という一言で片づけています。(参照:No.4956 ちょっと一休み その774 『中国による“内政干渉”の一言で物事が進んでいいのか?』

ここで思い出されるのはアイデアよもやま話 No.5359 今や国連安保理は機能不全!でお伝えしたウクライナのゼレンスキー大統領の次の言葉です。
「平和の保障を担う国連が効果的に機能していないのは明らかだ。」
「侵略者であるロシアを戦争の元凶として(国連から)排除するか、もしくは平和のためにきちんと機能出来ることを示すか、どちらも出来ないと言うなら国連はもう解散するべきだ。」

民主主義陣営vs専制主義陣営という図式の中で、国際社会でのもめ事を解決することは、双方の利害が対立する場合においてはほとんど期待出来ないのです。
ですから、“法による支配”を前提とすべきなのです。
そして現実には国際連合(国連)という組織が存在し、国連憲章をはじめとする様々なルールが規定されています。
しかし、残念ながら国連安保理の常任理事国の5ヵ国、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランスの中で、1ヵ国でも決議案件に対して拒否権を発動すれば、決議は否決されるのです。
ですから、この重大な国連安保理の欠陥について、ゼレンスキー大統領は先ほどのように国連に向けて訴えているのです。

時間はとてもかかると思いますが、国際平和や人権、あるいは自由といったものが尊重され、守られる社会を実現するためには、国連の再構築、そして“法による支配”を徹底することが求められるのです。

 
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