2023年01月08日
No.5472 ちょっと一休み その858 『子どもは社会の鏡』
昨年10月22日(土)放送の「NHK映像ファイル あの人に会いたい」(NHK総合テレビ)で写真家の田沼武能(たけよし)さんについて取り上げていたので、その内容の一部をご紹介します。 

田沼武能さん(2022年 93歳没)は、戦後の日本をはじめ、世界の様々な状況に置かれた子どもたちを撮り続けました。
2019年、写真家として初めて文化勲章を受章しました。
また日本写真家協会の会長を務めるなど、後進の育成にも力を注ぎました。
田沼さんは昭和4年(1929年)、東京の浅草生まれ、幼い頃から父の営む写真館で様々な写真に親しんで育ちました。
1945年3月、16歳で体験した東京大空襲が写真家としての原点になりました。
この時の体験について、次のようにおっしゃっています。
「本当に地獄絵ですね。」
「電車通りのところにね、死体がゴロゴロしていたんです。」
「うちのお店の前にあった防火用水の中に何歳ぐらいかな、ちっちゃな子どもがね、焼死体であったんですよ。」
「それはね、黒焦げになっているんだけれども、お地蔵様そっくりなんですよね。」
「もう鮮明にそれは残っています。」
「やっぱりドキュメンタリーに入ろうと思ったのも戦争を経験してかもしれないですね。」

後に田沼さんは次のようにおっしゃっています。
「子ども自身の持っているものというのは無限ですからね。」
「いろんな行動にしてもね、遊びにしても。」
「喜怒哀楽っていう4字だけじゃね、表現出来ないいろんなものが子どもにあると思う。」

「写真家というのはやっぱり自分が撮らなきゃいけないっていうものを撮って、数多くの人に知ってもらいたい。」
「要するに私が受けた、まあ素敵な感動もあるし、悲しい感動もある。」
「そういうものを伝える役目が写真家の使命だというふうに思っておりますから。」

黒柳徹子さんと30年以上にわたり世界を旅した田沼さんは、「子どもは社会を映し出す鏡」だといいます。
「子どもっていうのはね、特別にこう隔離されて生活しているわけじゃないですね。」
「大人の中に入って、社会の中へ入って生きているわけです。」
「ですから社会がどういう状態であるかということは子どもに顕著に表れるんですよ。」
「それこそ難民キャンプの中だとかね。」
「ものがないとか、そういういろんな状態が子どものところにも降りかかってくるわけですね。」
「そういう悲惨な思いをさせちゃいけないというふうに私は思うんですけど、原因を作るのは大人なんですからね。」
「ですから原因を作る大人が考えなきゃいけないということが一番大切だと僕は思うんですね。」

田沼さんが足を運んだのは120ヵ国以上、晩年まで撮影を続けました。
そして次のようにおっしゃっています。
「人間の魅力っていうのはそんな簡単に終わらないです。」
「やはりね、人間というのはね、それぞれが真剣にドラマを演じているわけですよね。」
「だから、いろんなドラマがあるわけ。」
「それぞれに魅力を感じるわけですね。」
「ですから、これは終わりなき私の挑戦だというふうに思いますね。」

子どもの生き生きとした姿に魅せられた田沼さん、世界各地の子どもたちをカメラを通して見つめ続けた93年の生涯でした。
「子どもというのはね、社会の鏡だと思うんですね。」
「ですから社会が良くても悪くても子どもにそういう風がみんなのしかかってくる。」
「子どもを撮ることによって、その背景となっている社会が映し出せるんではないか。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

写真を通した、小沼さんの想いを以下にまとめてみました。
・写真家にとって、写真を撮ることは自己表現の一つである
・自分が感動したものを撮った写真を数多くの人に伝えることが写真家の使命である
・子どもは社会を映し出す鏡である
・社会がどういう状態であるかということは子どもに顕著に表れる
・子どもを撮ることによって、その背景となっている社会が映し出せる
・子どもに悲惨な思いをさせる原因は大人が作っている
・人間はそれぞれが真剣にドラマを演じている

世の中には写真家と言われる人たちは沢山いるわけですが、それぞれの写真家は自分の撮りたいものを撮っているわけです。
そして、田沼さんは世界中の子どもの写真を撮り続けることによって社会を見つめ続けているということだと思います。
そして、子どもの悲惨な姿を写真を通して世の中に伝えることを通して、大人の社会に反省を促し、より良い社会を目指すような流れを作りたいという田沼さんの強い意志を感じます。
そして、そのキーワードが子どもは社会を映し出す鏡であるということなのです。
確かに子どもを理解することによって、その家庭や社会の一端が見えてきます。
ですから、子どもを理解することの大切さは侮れないのです。

 
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