2023年01月05日
アイデアよもやま話 No.5470 高専生による事業モデルの評価額が「10億円」!
昨年9月6日(火)付けネット記事(こちらを参照)で評価額が10億円の高専生による事業モデルについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・ディープラーニング(深層学習)とものづくり技術を生かし、事業の完成度を競うコンテストで過去最高の企業評価額10億円、投資額5億円の評価を獲得し、注目されているアイデアがある。
・軽度認知障害(MCI)の早期発見と予防に活用できるシステム「D-Walk」で、一関工業高等専門学校(岩手県一関市)の学生3人によるチーム「Team MJ」が考案した。
・システム名のDはディープラーニングとディメンチア(認知症)の頭文字をとったもの。インソール(中敷き)型のセンサーを靴の中に入れ、腰にスマートフォンを着けて、歩き方や姿勢のデータを検出し、軽度認知障害かどうかを判定する。
・スマホで体の動き(3軸の加速度と各軸回りの角速度)を測定すると、85%の精度で軽度認知障害が判定できる。インソール型センサーを併用すると、精度はさらに向上する。現在、インソールメーカーと共同で小型化、低コスト化を進めている
・軽度認知障害を早期発見して治療すれば、40%の人が快復するというデータがある。
・同システムの関係者としてはD-Walk開発チームのほかに、保険会社、被保険者の3者がいる。同チームとしては、保険会社が1人当たり月に500円の利用料をD-Walk側に支払うサブスクリプションモデルを考えた。また保険会社は被保険者に対してD-Walkを使用することで保険料を毎月100円割り引く。
・この内容だと保険会社は1人当たり毎月600円損するように思える。しかし、D-Walkを利用することで軽度認知障害の予防につなげられれば、保険会社が被保険者に支払う一時金は減らせる。軽度認知障害から認知症になった場合、何百万円もの一時金が支払われるが、早期治療によって軽度認知障害から40%が快復すれば、一時金の支払いを減らせ、保険会社には大きなメリットが生まれることになるのだ。
・Team MJの3人は、最優秀賞で獲得した「起業資金100万円」を元手にして、年内に起業する予定だ。顧問に就任する未来創造工学科機械・知能系教授の鈴木明宏氏は「試作費などは私の研究費から出しますし、給料を払うわけでもないので、ノーリスクです。失敗を恐れずに、やるだけやった方がいい。こんないいチャンスはない」と話す。
・高専DCONからは起業資金100万円のほかに、「DCON Start Up 応援1億円基金」から100万円が寄付されるほか、設立された会社に対して普通株で100万円の出資を得られる。また日本ディープラーニング協会では法人登記の手続き、税金の処理などを格安で請け負ってくれたり、契約書の内容についてアドバイスしてくれたりするという。

・実行委員会委員長の松尾氏からは「考えていないで、とにかく走れ」と励まされたそうだ。松尾氏は専門のディープラーニングだけでなく起業についても詳しく、さまざまなアドバイスをしてくれるという。
・高専DCONの特別協賛である丸井グループからは企業賞をもらい、「協業したい」との言葉をかけられた。今後の保険会社との交渉、高齢者からのさらなるデータの取得など様々な場面での協業が期待される。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

AIやロボットなどテクノロジーの変化が激しい時代においては、年功序列、終身雇用といった組織風土では十分な対応が出来ませんし、対応するスピードも遅くなってしまいます。
従って、大きなビジネスチャンスに乗り遅れてしまうのです。
そうした中、若くても先進テクノロジーの知識に明るい若い世代が様々な分野でこうした知識をベースに従来の製品やサービスのあり方を見直すことによって新たな製品やサービスを生み出し、経済の活性化につながるのです。

今回ご紹介した、一関工業高等専門学校(岩手県一関市)の学生3人によるチーム「Team MJ」が考案した、軽度認知障害(MCI)の早期発見と予防に活用出来るシステム「D-Walk」、そして事業モデルの発見は、まさにこうした望ましい事例の典型と言えます。
しかも、こうした製品や事業モデルのビジネス化を進めるにあたって、年内に起業する予定で、その際、高専DCONなどからの支援金、あるいは日本ディープラーニング協会などによるアドバイスが得られるというのです。
ベンチャー企業の弱点である、資金調達などの経営力不足をこうした支援体制で補うというのとても望ましいかたちです。

ということで、様々な業界ごとに、あるいは業界を問わず、こうした若者の斬新なアイデアをかたちにするための場の提供、すなわちインフラの構築の重要性を感じます。
なお、こうした素晴らしいアイデアの発掘の際には、海外の若者のアイデアも取り込んだ方がより一層、多くの質の高いアイデアが集まってくると期待出来ます。
ですから、国としてもこうした国際的な観点から支援のあり方を検討すべきだと思います。

 
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