2022年12月24日
プロジェクト管理と日常生活 No.777 『世界に広がる干ばつや洪水の被害とそのリスク対応策』
まず8月22日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中国の記録的な熱波について取り上げていたのでその一部をご紹介します。

今(8月22日)、中国各地を熱波が襲っていまして、水力による発電量が減るなどした結果、深刻な電力不足に陥っています。
以下は上海の8月22日の様子です。
・8月22日の最高気温は39.9℃まで上がった
・夜9時半頃の気温は32.9℃で非常に不快な夜となっている
・日本でも有名な夜景の観光スポットも、今日(番組放送時)からライトアップが止まっている

また、四川省では先週(番組放送時)始まった計画停電が延長されまして、現地の日本企業への影響も拡大しています。
四川省の政府は、工業用電力を使用している日本企業を含む約1万6000社に対して、当初は8月20日までの生産の全面停止を命じていました。
ただ、中国の気象局によると、この猛暑は25日まで続くとしており、その停止措置も25日まで延長されています。

中国の象徴とも言えるこのライトアップも消え、更にコロナ禍、そして不動産不況に続いて熱波が追い打ちをかけ、先が見通せない状況になっています。
今後の日本企業への影響が懸念されます。

この電力供給リスクについて、IGPIグループの冨山和彦会長は次のようにおっしゃっています。
「(電力の安定的な供給は工場などの拠点を置く際の重要なポイントになるが、そこが揺らいでいる状況について、)日本も電力不足でしょ。」
「で、欧州ももっと酷い状態で、地政学的な問題、それから脱炭素の問題、あと今の気候変動ですね。」
「これ世界中どこに行っても、この電力供給の不安定という問題付きまとっちゃうんですよね。」
「これはある意味、もう与件というか、そういうもんだと思ってやっていくしかないですね。」
「(この電力供給のリスクに対応するには今後どうすればいいのかという問いに対して、)結局、これどこへ行ってもあるので、分散ということになっちゃうんですよ。」
「1ヵ所に集中しているのが危険ということになるのでサプライチェーンを分散していく。」
「これは他の要因から見てもそういうことなんですけども。」
「だから地政学的な問題もあるでしょ。」
「それからコストだけをおっかけていくと当然1ヵ所に集中しますよね。」
「だいたい安いところにみんな行っちゃうんで。」
「そこに引っ張られ過ぎると心配なので多少コストをかけてもサプライチェーンを分散するのがカギになりますね。」
「(そのコストが安いところに拠点が集中するとリスクが高まることについて、)そこで例えば停電が起きちゃうとアウトですし、そこで最悪戦争とか内乱が起きちゃうこともあるわけで。」
「そうする集中が一番危険ということになります。」
「ただ、その代わり一番安いところじゃないところにも生産拠点をつくっていくことになりますね。」
「そうすると当然分散する分のコストは増える、コストが上がる場合があるので、そうすると今度はビジネスモデルの問題になってきて、要は大量生産・コスト一辺倒勝負でやっていると、サプライチェーンの分散が出来ないんですよね。」
「結局、究極的な解は、コスト勝負・大量生産のビジネスからもっと付加価値で、お客さんが高いお金を払ってくれる、ちゃんと粗利を取れるビジネスに転換していくということをやっていかなきゃ駄目で、たぶん現状、今の日本の製造業が一番やられちゃうんですよ。」
「まだまだ昭和型の大量生産・コスト勝負で従業員にかなり依存していますから、これを転換して、例えばGAFAはそんなに電力供給の影響は受けてないですよね。」
「で、彼らは圧倒的に付加価値型の商売だし、ヨーロッパなんかのブランドビジネスも影響飢えにくいでしょ。」
「付加価値率がすごいので。」
「だから日本も人口減ってきて人手不足になっているわけですから、大きいビジネスをやって、沢山人を雇う必要ないわけなので、産業全体を付加価値型に転換するというのがここでも求められているということでしょうね。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

次に8月29日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で世界に広がる干ばつの影響について取り上げていたのでご紹介します。

EU(欧州連合)のヨーロッパ委員会は最近の報告書でヨーロッパの47%で土壌の水分が不足し、17%では農作物に悪影響が出ている状態だと指摘しました。
そのうえで、「少なくとも過去500年で最悪の状況」と懸念を表明しています。
また、河川の水位低下によって「水力発電や発電所の冷却システムに深刻な影響を与えている」と報告しています。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「ここにいろいろ出ていますけど、例えば土壌で水分が不足しているが47%、農作物に悪影響があるのが17%、これ相当なウエイトですよね。」
「そして、収穫量、気になりますよね。」
「トウモロコシや大豆が過去5年の平均に比べて16%減、15%減とえらい減り方になるリスクがあると、こういうことを言ってるわけですよね。」
「イタリアなんですけど、水力発電、水が干上がっちゃって大変ですよね。」
「フランスだと、原子力発電所を冷やす水に不足が生じているということで、水が足りなくなるということは大変なことが起きつつあるんだと思いますね。」
「(ヨーロッパでいうと、エネルギーはロシアから入って来なくなって、そこでまず絞られているが、更に干ばつによる影響で“踏んだり蹴ったり”の状況だが、)エネルギーもそうだし、しかも食料は連鎖しますから、日本は食料輸入国として他人事じゃないわけですよね。」
「(この食物に関しての懸念材量について、)やっぱり(欧州最大規模の)ナポリ―ジャの原発は、ウクライナとロシアが原発を挟んで睨み合っているわけですよ。」
「まかり間違って流れ弾が原子炉の建屋に当たってしまうというようなことになると、これはウクライナ側の試算で、風向きによってはロシアの穀倉地帯がやられるわけじゃないですか。」
「逆の風向きだとウクライナの穀倉地帯がやられるということで、いずれにしても今、世界の食料がナポリ―ジャの原発の問題で相当危ういところにあるんじゃないでしょうか。」

ということで様々なリスクがいろんなところに潜んでいるようです。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

そして8月30日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でパキスタンの史上最悪レベルの洪水被害について取り上げていたのでご紹介します。

パキスタンの洪水被害が史上最悪レベルとなっています。
気候変動担当大臣は、国土の3分の1が水没したと述べました。
最大の輸出品目である繊維製品も大きな被害を受けていまして、日本の私達にも影響が出てきそうです。

パンジャブ州では水に浸かってしまった多くの建物、道路は川のようになってしまっています。
こちらでは雨が止んでも建物が崩れ、更には泥が家に押し寄せ、片づけに追われる住民の姿が見られます。
6月から続いたモンスーンの豪雨、その死者数が1136人に達しました。
被災した人はパキスタンの全人口のほぼ15%にあたる3300万人以上となり、住宅被害は100万軒を超えました。(国家災害管理庁調べ)
こうした状況について、レーマン気候変動大臣は次のようにおっしゃっています。
「地方はまるで大きな海のようです。」
「モンスーンは毎年やってきますが、こんな“モンスター”は経験したことがありません。」

レーマン大臣は被害について、豪雨だけでなく、地球温暖化で氷河が溶け出していることも影響していると指摘しました。

また、イクバル計画開発大臣は、現時点での被害総額は100億ドル(約1兆3800億円)以上と推定、復興に5年かかるという見通しを示しました。
多くの農産物が被害を受けていますが、最大の輸出品目である繊維製品の原料、綿花については45%以上が失われたことを明らかにしました。
現地で貿易支援に取り組んでいるJETORO(日本貿易振興機構)のパキスタン・カラチ事務所の山口和紀所長は次のようにおっしゃっています。
「パキスタンの綿花は輸出品の最たるもので、パキスタンの輸出の約6割は綿を使った綿製品なんですね。」
「ですから、これが被害を受けるということは輸出にも影響してくると思われますね。」

綿花の生産量で世界5位のパキスタン、繊維製品の製造も盛んで、綿花で作ったシーツやタオルなどは日本にも輸出されています。
今回の被害は生産基盤も失う、深刻なものだといいます。
山口さんは次のようにおっしゃっています。
「水をかぶった畑を元に戻すのは、また大変な作業になると思いますね。」
「生産基盤となる畑が被害を受けてしまい、そういう意味でも非常に深刻だと思います。」

その影響は世界に広がる可能性があると専門家は分析しています。
日本綿花協会の大下信雄代表理事は次のようにおっしゃっています。
「玉突き的にパキスタンが自国綿花では足りない、輸入量を増やして他国の綿花を輸入するとなってくると、輸入綿花全体の供給が増々ひっ迫してくるという。」
「相場を更にもう一段押し上げていく材料になりかねない状況だと思いますね。」

新型コロナウイルスの影響で綿花の国際価格は上昇、一時は価格を下げましたが、今再び上昇傾向にあります。
今回の被害でパキスタンが輸入を増やせば、世界的に綿花の需給がひっ迫し、価格の更なる上昇につながりかねないのです。
ものの値上げが相次ぐ日本でもタオルや衣類など、身近なものの値上げにつながる可能性があります。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「IMFがパキスタンに対して11億ドル(番組放送時、約1500億円相当)の追加支援を決めたんですけども、とても追いつかないですよね。」
「パキスタンの状況をフリップで整理したいんですけど、インフレ率直近で34.9%でしょ。」
「政変が起きて、今度は水害ですから、まさに“踏んだり蹴ったり”という状況にあると見ていいと思います。」
「(そしてパキスタン以外にも南アジアの国々が苦境に立たされていますが、)例えばスリランカはデフォルト、債務不履行に陥った上に政変で、インフレ率も60%を超えているというようなとんでもない状況ですよね。」
「バングラデシュですけれども、今、外貨準備が急減してましてね、ISM(米供給管理協会)に対して融資を要請しているのが現状だと思います。」
「でね、共通する点があるんですね。」
「何なのかというと、資源・食料の輸入国なんですよね。」
「その値段が上がって大変な中にいろいろな苦労が集中していると、こんな感じじゃないですかね。」
「(更にそちらに資本が出ていっているとありますが、今、アメリカが金融を引き締めている場面なので、こういう時に新興国で通貨危機が起き易い状態ではないかという指摘に対して、)そうですね。」
「まさに新興国に投資されていたお金が引き上げられちゃっているのが一つきついんですね。」
「中国の「一帯一路」でお金を貸してあるんですが、こういう時に全然役になっていないというのがもう一つあるんです。」
「だから全体的に南アジアではマネーの貧血状態なんですよね。」
「でね、1997年から1998年にかけて思い出していただきたいのは、タイ、韓国、インドネシアで連鎖的に通貨危機が起こったんですね、アジア通貨危機。」
「新た通貨危機が起こるとすれば、今回は南アジアからではないかと言われているんです。」
「相当警戒すべき状況にあると思います。」
「(日本も影響は避けられそうにないので他人事ではないのではという指摘に対して、)全くそういうとこだと思いますね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

上記の内容から今夏の干ばつによる国ごとの被害状況について以下にまとめてみました。

(中国)
・中国各地を熱波が襲来した
・水力による発電量の減少により深刻な電力不足に陥った
・四川省の政府は、工業用電力を使用している、日本企業を含む約1万6000社に対して、一時、生産の全面停止を命じた

(EU)
・ヨーロッパ委員会は最近の報告書でヨーロッパの47%で土壌の水分が不足し、17%では農作物に悪影響が出ている状態だと指摘した
・「少なくとも過去500年で最悪の状況」と懸念を表明している
・河川の水位低下によって「水力発電や発電所の冷却システムに深刻な影響を与えている」と報告している
・イタリアでは水力発電の水が干上がっている
・フランスでは原子力発電所を冷やす水に不足が生じている

一方、史上最悪レベルの洪水被害も出ており、以下にまとめてみました。

(パキスタン)
・モンスーンによる洪水被害が史上最悪レベルとなっている
・気候変動担当大臣は、国土の3分の1が水没したと述べている
・最大の輸出品目である繊維製品も大きな被害を受けている
・6月から続いたモンスーンの豪雨で死者数が1136人に達した
・被災した人はパキスタンの全人口のほぼ15%にあたる3300万人以上となり、住宅被害は100万軒を超えた
・豪雨だけでなく、地球温暖化で氷河が溶け出していることも影響している
・現時点での被害総額は100億ドル(約1兆3800億円)以上と推定、復興に5年かかるという見通しを示した
・多くの農産物が被害を受けているが、最大の輸出品目である繊維製品の原料、綿花については45%以上が失われた
・綿花の生産量で世界5位のパキスタン、繊維製品の製造も盛んで、綿花で作ったシーツやタオルなどは日本にも輸出されている
・洪水以外にも政変が起きており、インフレ率が直近で34.9%である
・玉突き的にパキスタンが自国綿花では足りず、輸入量を増やして他国の綿花を輸入すると、輸入綿花全体の供給が増々ひっ迫し、価格の更なる上昇につながりかねない

(パキスタン以外の南アジアの国々)
・スリランカはデフォルト、債務不履行に陥った上に政変で、インフレ率も60%を超えている
・バングラデシュは外貨準備が急減しており、ISM(米供給管理協会)に対して融資を要請している
・これらの国々には資源・食料の輸入国という共通点がある
・こうした商品の価格が上がっている中、新興国は通貨危機が起き易い状態だが、米中は役に立っていない

なお、日本もこうした自然災害の発生や物価上昇といった影響を避けられそうにない状態です。

次に干ばつや洪水の被害のリスク対応策について以下にまとめてみました。
・発電所、および関連サプライチェーンを分散させる
・一方で、製造業はビジネスモデルを大量生産・低コストから少量生産・高付加価値に転換する
・世界的に化石燃料発電から再生可能エネルギー発電への早急なシフト

さて、干ばつや洪水といった地球温暖化の進行に伴う大災害以外に、世界各国は以下のような問題やリスクを抱えています。
・ロシアによるウクライナ侵攻
  ロシア軍によるナポリ―ジャの原発への攻撃、あるいは流れ弾による破壊
高まるロシア軍による核兵器の使用の可能性
・中国による台湾への軍事侵攻

ということで様々なリスクがいろんなところに潜んでいるのです。
そして世界各国は第二次世界大戦終結以来、最大の問題やリスクに遭遇していると言えます。
そして間違いないのは、これらはいずれも人類自らの行為に起因しており、人類が解決する以外に解決の手段はないということなのです。

 
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