2022年12月11日
No.5448 ちょっと一休み その854 『昆虫食をこよなく愛する人!』

昆虫食についてはアイデアよもやま話 No.5139 自販機大国、日本の最新事情!アイデアよもやま話 No.5399 原材料高騰で注目される昆虫産業!でお伝えしてきました。
そうした中、8月21日(日)放送の「桂文珍の園芸図鑑」(NHK総合)で昆虫食クリエーター、篠原祐太さんを対談のゲストに迎えていたのでご紹介します。

落語家、桂文珍さんとの対談で篠原祐太さんは次のようにおっしゃっています。
「(世の中は食糧難が昨今、話題になったりしていますが、地球全体の中で食糧難の時代が来た時に、ひょっとすると昆虫が人類を助けてくれるんじゃないかというところで、最近昆虫食が注目されるようになってきましたが、)2015年に国連のFAOという機関(国連食糧農業機関:世界の食料の安全保障と栄養、作物や家畜、漁業と水産養殖を含む農業、農村開発を進める先導機関)が昆虫の栄養価の高さとか環境にすごい優しい食べ物で、その辺に注目して昆虫の可能性を論じるレポートを出して、そこから以降、結構世界的にも日本国内でも注目されるようになってますね。」
「でも、そもそも虫を食べること自体は日本でも昔からされてきたりとか、世界中にも食べる文化というのは意外とあって、今でも世界で20億人ぐらいが2000種類の虫を食べていると言われていて、そう考えると決して珍しいものではなかったりもするんですけど・・・」
「(レストランの取り組みについて、)今、日本橋の馬喰町っていうところでレストランをやっております。」
「コオロギでだしをとったラーメンなんですけど、(「コオロギラーメン」が)一番看板的な。」
「(その味について、)例えるんだったら、煮干しとかみたいな、ちょっと苦みのあるうま味があったりとか、あとエビとかカニとかの甲殻類の仲間で、そういう香ばしさとかは結構特徴的な素材ですね。」
「(栄養価について、)栄養価的にはコオロギはタンパク質が多いので、大豆もタンパク質自体は多いので、それに比べてめっちゃではないんですけど、普通に栄養価も高いし、あとは何よりコオロギはグルタミン酸とかうま味が結構豊富なので、まあうま味の強いだし醤油みたいな仕上がりで、ラーメン一杯にした時にやっぱ結構コオロギのうま味はちゃんと楽しめるように。」
「(そういうものは、今までテレビでは罰ゲームみたいな扱いを受けていたが、)それが僕は小さい頃からずっと嫌で嫌で、もう幼少期からずっと虫が好きでずっと食べてきたんですけど、やっぱ幼稚園の先生とかからは「虫は汚いから持ってくるんじゃありません」って言われたり。」
「それこそテレビをつけたら罰ゲームに使われているのとかを見て、「何でこんな面白い生き物たちがこんな嫌われ者にならなきゃいけないんだろう」みたいな、結構そういうふうにずっと心を痛めながら、こう過ごしてきた中で、まあ自分は本当にコオロギを筆頭にした、いろんな虫の魅力をどストレートに美味しさとして、あとは個性ですよね。」
「その虫にしかない香りとかもあったりするので、楽しんで欲しいなと思ってお店だったりいろんな商品を作ったり、やってますね。」
「(そもそものこうしたきっかけについて、)何か生まれた時からずっと好きだったので、きっかけというきっかけもなくて。」
「多分、幼稚園とかで虫捕り好きな子とかいると思うんですけど、まあ僕もそういう子だったんですけど、なんか好き過ぎて食べずにいられなかったんじゃないですかね。」
「何かもう、だから我慢出来ずに気付いた時には食べていて、美味しいなとか面白いなとか、いろんなかたちで魅了されていって。」
「(印象に残っている食べ物というか虫について、)僕が幼稚園の頃にすごい印象に残っているものだと、よく公園の桜の木だとかにケムシがいらっしゃる・・・、いるじゃないですか。」
「あのケムシ、初めて食べた時にめちゃくちゃ上品な桜餅の味がして、しかも桜餅の中でも、かなりその品のある桜餅というか。」
「(桂文珍さんが箱に入ったケムシの糞を取り出すと、)それがめちゃくちゃいい香りがするんですよ。」
「上品な感じがして、そのままでも勿論香るんですけど、お湯を注いだりすると、もう綺麗なピンク色のお茶になって、本当にその桜の香りがふあって広がるんで。」
「食べてもその味がするし、糞も桜の香りがして。」
「まあ、でも、それが彼ら、桜の葉っぱしか食べてないケムシなので、まあ必然的にそういう味になってるんですけど。」
「それを幼稚園の時に初めて食べた時にああ僕らが普段こうやって食べているものも同じように他の生き物も食べて、こうやって回りまわって自分は生きられているんだみたいなものを何かふと感じて。」
「まあ食物連鎖とか、そういう生態系みたいなものを感じて、何かめっちゃ地球に生きているっていうことだなみたいな。」

「(本当に美味しい昆虫ベスト3について、)こちらが第3位のタガメですね。」
「東南アジアが原産の、タイとかラオスによくいるタガメを3位に選ばせてもらいました。」
「これはフェロモンの香りが最高なんです。」
「具体的にはタガメも人間と同じで、オス、メスいるんですけど、オスのメスを誘う時のフェロモンの香りがめちゃめちゃフルーティな香りがするんです。」
「洋ナシとか青リンゴみたいな香りがするってよく言われます。」
「(どういう料理が出来るかについて、)これはめちゃくちゃ、いろいろ活躍してて、夏だったらタガメを使ってかき氷のシロップをつくって「タガメかき氷」をやったりとか、本当にデザートからドリンクから、はては料理まで、タガメは万能の虫です。」
「2位は桜の木にいるケムシで、先ほどは桜の香りがして味がいいと話したんですけど、触ってもめちゃめちゃ肌触りがよくて、もう、それこそずっと抱きしめていたくなるような、ふわふわな極上の手触りです。」
「1位はざざむしで、個人的に一番好きな味の虫なんですけど、ざざむしっていうのはそもそも、その写真にあるように、きれいな川の川底にいる住んでる虫なんですよ。」
「彼らは昔から伝統的に長野県とかを中心に食べられてきた食材でもあって、多くは佃煮にされて、ざざむしの佃煮として楽しまれてきたものなんですけど、本当に味がシンプルに良くて、いろんな要素を持ってるんですけど、例えばシジミとかアサリみたいな貝のだしみたいなうま味があったりとか、ちょっとノリみたいな、何かその・・・、磯を思わせるような香りがあったりして、もう、これはそのまま食べても美味しいですし、それこそ、ざざむしをたっぷり使ってソースとかつくると本当にいいうま味のあるソースがつくれて、個人的に一番好きな虫ですね。」

「(ワークショップをおやりになって、昆虫食を広めたいという思いについて、)みんながみんな、「虫を食べて下さい」とか、「欲しいです」とは全く思ってないんですけど、でも子どもたちって、やっぱり今、都会の子とかって自然と触れる機会だったりとかもやっぱ減ってたりする部分もあって、主にワークショップをやる場合は幼稚園、児童館とか、小学生の子どもたちにやることが多いですね。」
「で、具体的にはみんなで例えば原っぱとかに集まって、虫捕りをみんなに配って、「じゃあそれでは今から虫を捕りましょう」っていうところから始まって、みんなで虫を捕まえて、捕った虫の中で、まあ、「この虫はこういう味がするんですよ」とか、「この虫はちょっと苦みが強いので美味しくないんでやめときましょう」とか、まあ、そんな話をしながら、最終的には実際、その場で調理して、みんなで自分たちで捕った虫を食べていただくっていう。」
「(子どもたちの反応について、)実際、例えば素揚げにしてみんなで食べていくと、「これは美味い」みたいな言葉が出てくるじゃないですか。」
「そうすると、さっきまで泣いてた子どもが嘘みたいに「じゃあ食べる」て食べ始めて、「美味しい」ってなって、食べ終わると、「無くなっちゃったから、また捕りに行く」と言って捕りに行くみたいな。」
「だから、本当に虫捕り網を持ったことない子がやっと虫捕りを始めて、のめり込んでいって、でも「食べるのはかわいそうだからやだ」って言って、泣いちゃって、食べてみたら美味しくて、泣き止んだら、また捕りに行くみたいなことが高々1時間半から2時間の間で起こったりするので、そうやって自分で生き物を捕まえて、捕ってみて観察して、食べるって、一連の体験事態が子どもにとっても一つの食育だったり、自然体験だったり、いい機会になればなっていう思いでやっていますね。」

「(日本の伝統食について、)今、僕らが普段出しているものって、結構新しいものとか珍しいって言われるんですが、実は全然そんなことはなくて、昔から楽しまれてきたものだったりとか、逆にあったけど、今はそんなに新しいやり方が注目されてなかったりするものなんですよ。」
「で、日本にはそういう伝統的に食べられてきた面白いものって沢山あるので。」
「例えばですけど、虫以外にもいろいろ扱っていて、ドジョウだったりとかコイだったりとか、柳川鍋にした。」
「あと、ドジョウをから揚げにしたりとか、あるんですけど、あれも食べられ方が結構、柳川鍋なのか、から揚げなのかみたいな、パターンってある程度限定的じゃないですか。」
「でも冷静にドジョウを味わった時に、もっとドジョウのポテンシャルを発揮出来る食べ方があるんじゃないかなっていうのは思っていて、今はドジョウをもうたっぷり詰め込んだ、ちょっと揚げ春巻きみたいな料理を作って、コース料理で出したりとかはしてますね。」
「身の回りにあるもので面白いものがまだまだごまんとあると思ってるので、やっぱそういうところを見直すのも大事かなというのは同時に。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

そもそもFAOという国連の機関の存在を知りませんでしたが、世界の食料の安全保障などの観点から2015年に昆虫の可能性を論じるレポートを出していたといいます。
しかし、1994年生まれの篠原祐太さんはこのレポートが出される以前の幼少期から既に地球を愛し、昆虫などの野生の恵みを味わっていたのです。
そして慶應義塾大学在学中から飲食の世界に関わり、「ラーメン凪」や「四谷うえ村」などで修業し、食材としての昆虫の可能性を探求し、「コオロギラーメン」を生み出し、レストラン「ANTCICADA」オーナーとしても活動されているのです。(こちらを参照)

番組を通して、篠原さんの語り口からはいかにも今の若者っぽさ、そして飾らない人柄といった印象を受けました。
また篠原さんの昆虫に対する親しみ、愛情、そして昆虫の食料としての美味しさや香りがひしひしと伝わってきました。

以下に篠原さんのお話の内容をまとめてみました。
・そもそも虫を食べること自体は日本も含め、世界中に食べる文化はあり、今でも世界で20億人ぐらいが2000種類の虫を食べていると言われている
・篠原さんは幼少期に昆虫が好き過ぎて、我慢出来ずに気付いた時には食べていて、美味しさとか、いろんなかたちで魅了されていった
・幼稚園の頃に初めて食べたケムシは上品な桜餅の味がして、その糞にお湯を注ぐと綺麗なピンク色のお茶になって、桜の香りが広がった
・この初めての経験を通じて、食物連鎖や生態系、そして地球に生きているということを強く感じた
・それぞれの昆虫には魅力や個性があるので、こうした虫の美味しさや香りなどを楽しんで欲しいという願いからお店や商品を展開している
・篠原さんの選ぶ、美味しい昆虫ベスト3は、1位 ざざむし、2位 桜の木にいるケムシ、3位 タガメである
・1位のタガメの特徴は以下の通りである
  ざざむしはきれいな川の底に住んでる
  多くは佃煮にされて、ざざむしの佃煮として楽しまれてきた
  そのまま食べても美味しいし、うま味や香りなど、いろんな要素を持っている
・2位の桜の木にいるケムシの特徴は以下の通りである
  桜の香りがして味がいい
ずっと抱きしめていたくなるような、ふわふわな極上の手触りである
・3位のタガメの特徴は以下の通りである
洋ナシや青リンゴみたいなフェロモンの香りが最高である
タガメからかき氷のシロップをつくって「タガメかき氷」が出来る
デザートやドリンク、料理まで、タガメは万能の虫である
・篠原さんが経営している、日本橋の馬喰町のレストランではコオロギでだしをとった、グルタミン酸とかうま味が豊富な「コオロギラーメン」が看板メニューになっている
・昆虫食を広めたい思いから、主に幼稚園や児童館など小学生の子どもたちを対象としたワークショップも開催しており、最終的には実際にその場で調理して、自分たちで捕った虫を食べていただくことにしている
・日本には伝統的に食べられてきた面白いものが沢山ある
・篠原さんのレストランでは、虫以外にもドジョウをから揚げにしたり、ドジョウやコイを柳川鍋にしたりとかしているが、パターンはある程度限定的である
・ドジョウのポテンシャルをもっと発揮出来る食べ方があると思っており、ドジョウをたっぷり詰め込んだ、揚げ春巻きみたいな料理を作って、コース料理で出したりしている
・身の回りにあるもので面白いものがまだまだ沢山あると思っており、そういうところを見直すのも大事だとも思っている

こうして見てくると、篠原さんに対して、以下のような思いが沸き上がってきました。
・昆虫食の開拓者であり、一方で子どもたちを対象としたワークショップも開催もしており、今後の国内外の食生活に大きな影響を与える可能性を秘めた貴重な存在である
・日本の食の安全保障においても大きな貢献が期待出来る

 
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