2022年09月15日
アイデアよもやま話 No.5374 原発再稼働をどう考える?
6月2日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で原発再稼働をどう考えるかについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

今日も関東から九州の広い地域で最高気温が25℃を超える夏日となりました。
本格的な暑さを前に電力不足が懸念されますが、そんな中、注目が集まっているのが原子力発電所(原発)の再稼働の行方です。
日本のエネルギー事情は今後どう変わっていくのでしょうか。

フラワーショップ、ローランズ(東京・渋谷区)では、電気の使用量は昨年とほとんど変わらないといいます。
しかし、昨年と今年の1月から4月の電気料金を比較すると、特に3月は3万7000円も上がっています。
更に東京電力や中部電力など大手4社は7月分の電気料金の値上げを発表しており、今後の経営に対する不安も隠せません。
ローランズの福寿満希社長は次のようにおっしゃっています。
「これ以上電気代が上がり続けてしまうと、商品価格の設定を変えざるをえなくなってしまうので、(電気代が)年間20万〜30万円上がるのですごく不安ですね。」

値上げとともに懸念されているのが電力不足です。
政府は一般家庭などに夏の節電を呼びかけています。
そもそも日本は2011年の東日本大震災以降、発電電力量全体に占める原発の割合が激減、今では約8割を火力発電に頼っています。(こちらを参照)
ただ火力発電所の能力に余力はなく、発電量を増やすのは難しい状況です。
今日、萩生田経済産業大臣(当時)はBSテレ東の番組収録で次のようにおっしゃっています。
「本当にギリギリのところだと。」
「(例えば)引退した選手にユニフォームを着せてグラウンドに降ろしているような状況が今の発電状況なので、予定通り発電したらという数字なので、誰か、けが人が出たら試合が途中で止まってしまうという、こういう状況。」

こうした状況で注目が集まっているのが原発の再稼働です。
今日、島根県の丸山知事が島根原発2号機の再稼働に同意すると表明しました。
島根原発2号機を巡っては、2013年12月に中国電力が再稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請、7年以上の時間を要し、昨年審査に合格しました。
島根原発は全国で唯一、県庁所在地にあり、事故が起きてしまった際の住民の避難など、課題は残ります。
再稼働は早くても2023年度の見通しです。

さて、日本の原子力発電所の稼働状況ですが、建設中のものも含めて18ヵ所に60基ありますが、24基は廃炉が決まっています。(こちらを参照)
現時点で稼働しているのは西日本の大飯、高浜、伊方、そして川内、4ヵ所で1基ずつ、合計4基の原発です。
残りの32基は停止中となっています。
この中には再稼働したものの、検査や安全対策のために停止したものや今日発表があった島根原発のように再稼働に向けて準備を進めているものが含まれています。
こうした状況について、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「本当に重い決断だったと島根県知事の心中をお察ししますよね。」
「原発の問題というのは、そもそも都市と地方との格差が内在していて、どちらかというと、今、知事からも出ましたけど、例えば東京や大阪府には原発施設は1基もないわけですよ。」
「その中で、最近は原発をどんどん稼働させればいいじゃないかというトーンが非常に強まっていますけども、地元にとってみれば、たやすい決断ではないわけで、私個人としては本当にこういう地方の決断については感謝したいぐらいの気持ちになります。」
「(原発再稼働について個人的にどう思うかという問いに対して、)今の電力事情を踏まえると、これはやむを得ないと考えています。」
「一つ、見ていただきたいのは主要国のエネルギーの自給率なんですが(こちらを参照)、日本は12.1%と全く低いわけですね。」
「アメリカやイギリスみたいに自国に資源を持っているとこならともかくとして、フランスやドイツと比べても大きく開きがあるわけですね。」
「(ですから、例えばドイツのように再生可能エネルギー(再エネ)を日本もどんどん増やすことは出来ないかという問いに対して、)勿論再エネを日本も全力でこれから拡充していかなければいけないんですが、ただヨーロッパは地続きになっていますから、例えばドイツが困ったら、いざとなったら原発大国であるフランスを頼るっていうような、お互いに補完関係にあるんですけど、日本の場合は島国ですから、やはりそう考えると、原発の再稼働と再エネの拡充をセットで進めるというのが現実的だと思いますね。」
「(ただ原発には安全性の問題があるが、)勿論です。」
「最終的に突き詰めると、最後まで残るのは“核のゴミ”、つまり放射性廃棄物は無害化するまでに約10万年かかると言われているわけで、それをどうやって、どこで処分するか、10万年て言ったら、ネアンデルタール人の時代まで遡るわけです。」
「気が遠くなるほどの時間、どこでどう管理するのか、この先、原発の新設まで踏み込むとすると、この議論は避けて通れないと思います。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通して、原発の再稼働を中心に日本のエネルギー事情について以下にまとめてみました。

(電力の需要事情)
・電気料金の値上げが続いており、広範囲で経済への影響が出ている
・特に夏や冬の電力需要のピーク時には電力不足が懸念される

(電力の供給事情)
・2011年の東日本大震災以降、発電電力量全体に占める原発の割合が激減し、今では約8割を火力発電に依存している
・火力発電所の能力に余力はなく、発電量を増やすのは難しい状況である
・原子力発電所は、建設中のものも含めて18ヵ所に60基あるが、稼働中の原発は4基、残りの32基は停止中(再稼働に向けて準備を進めているものも含む)で、24基は廃炉が決まっている
・こうした日本のエネルギー事情から、エネルギーの自給率は12.1%で、主要国の中では最も低い
・そこで原発の再稼働が検討されているが、原発と再エネの拡充をセットで進めるというのが現実的である
・一方で原発には“核のゴミ”問題があり、いまだ解決の目処は立っていない

さて、日本のエネルギー安全保障を考えるうえで、エネルギーを供給する機器、あるいは施設には以下の5つの観点があります。
・安定供給
・低価格
・安全性
・設計寿命
・持続可能な社会(“脱CO2”による地球温暖化の抑止など)

こうした観点からすれば、一気に自然エネルギーである太陽光や風力などを使用した再生可能エネルギー発電にシフト出来れば、そして余剰電力を蓄えるバッテリーと組み合わせれば、一挙に日本のエネルギー安全保障を確立することが出来ます。
しかし、そのためには現状では膨大な土地とコストがかかります。
そこで山川さんも指摘されているように原発と再エネの拡充をセットで当面進めることが現実的な対応策として考えられます。
ただし、“核のゴミ”問題を速やかに解決する必要があるので、飽くまでも可能な限り早く再生可能エネルギー発電へのシフトを実現するためのプランづくりが求められるのです。

 
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