2022年08月29日
アイデアよもやま話 No.5359 今や国連安保理は機能不全!
5月12日(木)付けネット記事(こちらを参照)でフィンランド大統領によるNATO加盟の声明、およびロシアの警告について取り上げていたのでその一部をご紹介します。

・フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相は5月12日、「北大西洋条約機構(NATO)に遅滞なく加盟申請しなければならない」との共同声明を発表した。
・ロシアのウクライナ侵攻で欧州の安全保障環境が激変する中、フィンランド首脳が加盟意思を明確にしたのは初めて。同国にとって伝統的な中立路線の歴史的転換となる。
・2月のロシアによるウクライナ侵攻後、北欧2ヵ国でNATO加盟を求める世論が急増。フィンランド放送協会(YLE)によると、最新の世論調査では加盟支持が76%に達した。隣国スウェーデンも国民の約6割が支持、近く加盟への意思表示をするとみられる。
・ロシアは、加盟すれば軍事的な結果を伴うとの警告を北欧2カ国に発してきたが、逆に両国民の警戒と反発を誘発し、皮肉な展開を引き起こしている。
・北欧2カ国は5月11日、英国との相互安全保障宣言に署名。有事の際は相互に軍事支援することや、機密情報の共有、合同軍事訓練、サイバー攻撃への対応強化などを確認した。
・今後フィンランドでは、政府の特別委が15日に最終判断を下し、6月末のNATO首脳会議までに正式申請するとみられる。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

なお、その後のフィンランドとスウェーデン、2ヵ国のNATO加盟の動きですが、NATO首脳会議当日の6月28日にスウェーデンのアンデション首相、フィンランドのニーニスト大統領、ストルテンベルグNATO事務総長と会談し、トルコの武器売却制限の撤廃とその「テロとの戦い」への協力を条件に加盟に合意しました。(こちらを参照)

また、5月12日(木)付けネット記事(こちらを参照)でフィンランドとスウェーデンでのこうした動きに対する中国の反応について取り上げていたのでその一部をご紹介します。

・中国国営の中央テレビは5月12日、「フィンランドとスウェーデンの願いとは逆になる」とのタイトルで、「NATOに入ればロシアは不安を募らせ対抗措置をとるだろう」との見方を伝えました。
・また、国営の新華社通信も「NATOが北へ拡大すれば深刻な結果に」と題する論評を掲載し、2カ国の加盟は「ロシアとの対立をエスカレートさせ、ヨーロッパの安全保障環境はさらに悪化する」と主張しました。
・中国メディアはロシア寄りの立場からNATOの拡大を批判する一方で、実際に侵攻を続けるロシアへの批判は避け続けています。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

そもそも今回の北欧2ヵ国のように、突然のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、自国防衛のためにNATOへの加盟申請をすることに対して、ロシアが、加盟すれば軍事的な結果を伴うとの警告を発したというのは北欧2ヵ国への内政干渉に他なりません。
それ以前にロシアがウクライナを侵攻したこと自体が国際法に違反した行為として処罰されるべきなのです。(参照:アイデアよもやま話 No.5260 ロシアによるウクライナ侵攻、司法の追及が始まる!

一方、中国は国際法違反を繰り返しているにも係わらず、アメリカなどからの指摘に対して、常に“内政干渉”の一言で片づけています。(参照:No.4956 ちょっと一休み その774 『中国による“内政干渉”の一言で物事が進んでいいのか?』
また、ロシアによるウクライナ侵攻について、実際に侵攻を続けるロシアへの批判は避け続けているというのも、自国の覇権主義の拡大の否定になるからだということを自白しているようなものです。

ということで、“内政干渉”の基準は国連憲章や国際法に違反しているかどうかで判断されるべきなのです。
そういう意味で、中国政府による新疆ウイグル自治区や香港での人権侵害に対するアメリカからの批難、あるいは台湾の武力統一について、「台湾は中国の一部であることは認めるが、武力統一に対しては民主主義の台湾を支援する」というアメリカの方針は妥当と考えられます。

そもそもアメリカ、一国が矢面に立って中国の人権無視や一方的な領土拡大といった国際法無視に対して抗議するという今の状況は望ましいとは言えません。
本来は、国連が国際法に照らして、国際法を違反した国に対して指摘し、それでも無視されたら、罰則規定に従って罰するという状況が国際社会のあるべき姿なのです。
ところが、プロジェクト管理と日常生活 No.757 『ロシアによるウクライナ侵攻に見る「国連の機能不全」』でもお伝えしたように、ロシアと中国も国連の安全保障理事会(安保理)の常任理事国であり、ロシア、あるいは中国、1国が拒否権を行使すれば安保理の決議案は通らない仕組みなのです。
そのロシアも中国も人権無視、かつ覇権主義国家なのですから、言わば犯罪者が自らが加害者である事件の裁判官になっているようなものです。
ですから今の国連は機能不全を起こしているのです。

ちなみに5月27日(金)付けネット記事(こちらを参照)で、自民党の世耕弘成参院幹事長は27日の記者会見で、国連安全保障理事会で北朝鮮への制裁を強化する決議案が、中国とロシアが常任理事国として持つ拒否権を行使して否決されたことについて「北朝鮮の暴挙に2カ国から拒否権が発動されて決議に至らなかったことは、国連安保理が機能不全に陥っているとしかいえない」と述べています。
また、「常任理事国のラインアップや、決議の在り方などを抜本的に見直すべき時期に来ているのではないか」と強調したことは極めて妥当だと思います。

ということで、今の国際社会の混沌とした状況を立て直すためには、まず国際社会を、自由や人権を尊重する国連憲章に則って再構築し、違反行使に対する罰則規定を明確にすることが求められているのです。
その最大の課題は常任理事国の構成、およびその役割の見直しです。

そうすれば、ロシアによるウクライナ侵攻のみならず周辺国への侵攻や中国政府による「“内政干渉”は許さない」といった独善的な主張は通用しなくなるのです。
逆に言えば、どのような政治体制の国でも国連憲章、あるいは国際法に則っていれば、国際社会から非難されることはないのです。

なお、こうした取り組みは民主主義陣営対独裁政権陣営という、国際社会の二極分化をもたらすリスクを秘めています。
しかし、今やこうしたリスクがあっても国連憲章に則って、国連の再構築を進めなければなばらないほど国際社会は事態が悪化しているのです。

 
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