2022年08月16日
アイデアよもやま話 No.5348 ヒューマン・エイジ 人間の時代 その1 火星進出を実現する驚異の技術!
4月24日(日)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)で「ヒューマン・エイジ 人間の時代 プロローグさらなる繁栄か破滅か」をテーマに取り上げていたので4回にわたってその内容をご紹介します。
1回目は、火星進出を実現する驚異の技術についてです。

およそ6万年前、私たちホモ・サピエンスの祖先は、誕生の地・アフリカから地球全体へと広がる大冒険に乗り出しました。
「出・アフリカ」と呼ばれる人類史上の大転換点です。
その後、急速な進歩を遂げ、高度な科学技術を生み出すまでになった「人間」は、2022年3月、また新たな挑戦に乗り出しました。
地球から6000万キロ以上も離れた「火星への移住」を目指そうというのです。
まさに「出・地球」です。

しかし同じ頃、同じ地球の上で人間の高度な技術が戦争に使われて人間自身の命を奪い、あるいは環境を破壊し、地球の気候まで急速に変えつつあります。
「人間」という生き物が、自分自身はおろか地球全体の未来をも左右する力を手にした現代、それは「ヒューマン・エイジ(人間の時代)」とも呼ばれ始めています。
行く先にあるのは更なる繁栄か、それとも破滅か、その答えを壮大なスケールで探ります。
なお、NHKスペシャル『ヒューマン・エイジ』は、そんな壮大なテーマに、これから放送百年を迎える2025年にかけて、さまざまな視点から迫っていく大型シリーズです。

2022年3月17日、アメリカ・フロリダ州、NASAの巨大な新型ロケットが発射台に姿を現しました。
この夏にも予定される初の打ち上げに向け、最後の調整に入ります。
その目的は、地球から6000万キロ以上も離れた、火星への挑戦、これはNASAが公開している火星進出計画のスケジュールです。

まず今年、巨大ロケットを火星への中継拠点となる月に向けて打ち上げ、2025年には月面に降り、基地の建設準備に着手、その後、火星での長期滞在を想定したさまざまな実験や検証を行います。
そして2040年までに、人類を初めて火星に立たせる計画です。
火星への移住を目指して、民間企業のスペースX社は、なんと100人も乗れる巨大宇宙船まで開発しています。

近い将来、あなたやあなたの子ども世代が体験するかもしれない火星生活、今回、科学者たちの予測に基づいて映像化しました。
宇宙からの強い放射線で赤く変色した大地、重力は地球の3分の1、気温は、夏には30度、冬にはマイナス130度にもなる、地球とは全く違う世界です。
そんな火星の表面に都市を建設、野菜なども栽培し、食糧を自給自足する計画です。

しかし、この計画を実現するためには、突破しなければならないいくつもの「高い壁」がありました。
まず必要なのが、火星まで大量の食糧や建設資材を運べる強力なロケットエンジンです。
しかし、従来の方法でエンジンをパワーアップしようとすると、部品の数が大幅に増加、それらを組み合わせて補強するうちにエンジンが大きく、重くなってしまうという宿命がありました。
この問題を突破したのが、ものづくりに革命を起こした画期的な新技術、「3Dプリンター」です。
どんな複雑な形のものでも、設計図どおり一気に作り上げることが出来る夢の技術、これを使って、従来いくつもの部品を組み合わせていた複雑なロケットエンジンを一つながりの構造にまとめることが可能になりました。

従来の製造法では、とても複雑でかさばっていたものが、3Dプリンターを導入したところ、大幅にシンプルに、そのおかげで燃焼効率も向上し、24%のパワーアップに成功したのです。

3Dプリンター製造会社のCEO、ベニー・ブラーさんは次のようにおっしゃっています。
「最も大切なのは、技術革新の素早い連鎖です。」
「私たちは100年かけて火星に行きたいのではありません。」
「生きているうちに実現したいのですから。」

立ちはだかる難題はまだあります。
火星への着陸方法です。
火星の大気は、地球のわずか1%、そのため、パラシュートによる空気抵抗だけでは十分減速することができず、地面に激突してしまいます。
そこで、スペースX社の100人乗りの宇宙船が挑んだのが「ロケットを逆噴射して着陸させる」という大胆な方法です。
ところが、最大1300トンもある巨大な宇宙船を逆噴射の勢いで減速しながら軟着陸させるのは至難の業です。
何度も失敗を繰り返しながら自動制御システムを改善し、ついに昨年5月、逆噴射による軟着陸に成功したのです。

スペースX社のCEO、イーロン・マスクさんは次のようにおっしゃっています。
「人生とは、あなたの心を揺さぶるようなものであるべきです。」
「人類が火星に行って文明を築き、SFのような世界を現実にすることはその一つです。」「45億年の地球の歴史でそれが初めて可能になったのです。」

不可能を可能にするさまざまなアイデアと、それを実現する技術の革新、人間特有の力によって、私たちは今、「出・地球」時代という新たな歴史の幕を開こうとしているのです。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

科学技術の進歩により、今や人類は2040年までに人類を初めて火星に立たせる火星移住計画を進めています。
そして、これまで火星移住計画についてはアイデアよもやま話 No.5309 21世紀型モノづくりの主役として期待される3Dプリンター!などで何度となくお伝えしてきました。

今回は、あらためて番組を通して、人類が他の惑星に移住する際に重要な技術について以下にまとめてみました。
・大量の食糧や建設資材を運べる強力なロケットエンジンの製造を可能にする3Dプリンター
・大気の少ない惑星への着陸を可能にするロケットの逆噴射
・都市を建設するための3Dプリンター
・野菜などを栽培し、食糧の自給自足を可能にする植物工場

注目すべきは、こうした技術のベースは既に確立されており、実用化されつつあるということです。
そして、スペースX社のCEO、イーロン・マスクさんも指摘されているように、人類の中のごく一部の人たちの好奇心や壮大な夢、そしてその夢を何としても実現したいという強固な意志が火星という遥かかなたの惑星への移住まで実現させようとしているのです。

そして、とても重要なことは、この火星移住計画を実現させることは、地球温暖化の阻止、あるいはエネルギー問題の解決を図るうえでも技術的にとても参考になるということです。
火星移住計画の実現は、単なる他の惑星への移住のみならず、地球再生の実現にもつながるのです。

 
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