2022年08月14日
No.5346 ちょっと一休み その837 『学徒出陣した学生の発言に象徴される日本の軍隊の不合理性!』
8月5日(金)放送の「NHKスペシャル 選「雨の神宮外苑〜学徒出陣・56年目の証言〜」(NHK総合テレビ 2000年08月14日放送の再放送)をたまたま途中からですが、視聴しました。
今回は、番組の中で特に印象に残ったある学生の言葉を中心にご紹介します。 

1943年(昭和18年)10月21日、秋雨が降る神宮外苑で出陣学徒壮行会が催されました。
そこには軍靴の音を響かせ行進する男子生徒、約25000人、それを拍手で見送る女学生、約65000人の姿がありました。
戦局が悪化し、徴兵猶予を解かれた学徒たちが戦地に赴くことになったのです。
番組では、彼らは何を思い、何に苦悩していたのか、当時のフィルム映像を追いながら、壮行会に参加した若者たちの心の動きを証言で描いていました。

その中の一人、志垣民郎(みんろう)さんは、陸軍の中国戦線に送られました。
志垣さんが陸軍で経験したのは、暴力が繰り返される毎日でした。
志垣さんは次のようにおっしゃっています。
「軍隊というものは恐ろしく非合理な、不合理な、まあ、でたらめな組織だと言ってよかったと思います。」
「私的制裁って、軍隊のね、一用語ですけども、本当の上官の指示じゃなくて、私的に初年兵を殴るわけですね。」
「2週間目から。」
「訳もなく殴られましたね。」
「合理的にものを考えて、いかにして敵に勝てるとかね、組織はどうしたら強くなるのかとか、人の能力を有効に出すにはどうしたらいいかというような発想は無くて、遮二無二日本精神で鍛え、ひっぱたいて、ある方向にもっていくというだけなんですよ。」
「何も教育方針ってないんですよ。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

志垣さんは、自らの軍隊生活の経験を通して、当時の日本軍の最大の弱点、すなわち“不合理的発想”を指摘していたのです。
そもそも真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争において、アメリカが日本を戦争に突入するように仕向けた事情はあるにしても、当時の政府はアメリカとの戦争に勝てる見込みがないにもかかわらず、開戦を決意してしまったのです。
また、訳もなく初年兵を殴る私的制裁、遮二無二日本精神での軍隊教育、帰還する見込みのない特攻(特別攻撃隊 こちらを参照)といったように“不合理的発想”が大きな比重を占めていたのです。

では、現在の日本はこうした“不合理的発想”から“合理的発想”に転換しているかと言えば、必ずしもそうとは言えません。
以下はその代表例です。
・“失われた30年”と言われるほどの経済の停滞(参照:アイデアよもやま話 No.5336 世界各国の利上げに日銀はどう動くべきか?
・DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの遅れ
  官庁の一部ではいまだにファックスでのやり取りが常態化していること
  コロナ禍での事務手続きにおける不十分なITの活用
・企業における不十分な女性の活用

ということで、“不合理的発想”から“合理的発想”への大転換は日本国民にとって今なお大きな課題なのです。
あらゆる面において、“不合理的発想”が本来やるべきこと、あるいは生産性向上の阻害要因となっているのです。

 
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