2022年08月08日
アイデアよもやま話 No.5341 問われる”G20の存在意義”!
4月20日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で問われる”G20の存在意義”について取り上げていたのでご紹介します。 

ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、G20G7を中心とした西側諸国と中国や新興国などとの対立が更に深まる場になる可能性すら否定出来ない状況です。
ロシアへの対応を巡り、足並みの乱れが表面化しているG20、アメリカのサマーズ元財務長官は番組の単独インタビューに応じ、”G20の存在意義”が揺らいでいるのではないかと危機感を示しました。
アメリカのクリントン政権時代に財務長官を務めたローレンス・サマーズさんは、今回のG20会議で西側諸国と中国やインドなどのロシアと関係が深い国との間で足並みが乱れることに懸念を示し、次のようにおっしゃっています。
「(制裁によって)ロシアに対して経済的な痛みと断絶を引き起こしているのは確かだが、(中国やインドなど)世界経済の主要国の一部がロシアの金融機関の一部と取引を続ける限り、必然的にロシアへの潜在的なダメージが軽減されることになる。」
「プーチン大統領の(秋に開催予定の)サミットへの参加は歓迎されるべきではない。」
「ロシアが攻撃的な戦争当事者である限り、どんなサミットでも参加を歓迎されるべきではない。」

世界経済の課題を話し合う場でありながら、米中の対立など、これまでも不協和音が生じてきたG20、サマーズさんはウクライナ侵攻をきっかけに枠組み自体の意義が問われると指摘しています。
「近年、G20はどこか漂流していて、物事を成し遂げるために効果的な場ではなくなっている。」
「ロシアや中国との連携を巡ってG20内で分裂が起きて、今後も漂流し続けるのではないかと危惧している。」

ロシアによるウクライナ侵攻という歴史的な危機の対応で、その力が発揮出来るのか、今G20の結束が問われています。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

アメリカのサマーズ元財務長官による”G20の存在意義”が揺らいでいるという危機感について、以下にまとめてみました。
・ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、G20はG7を中心とした西側諸国と中国や新興国などとの対立が更に深まる場になる可能性すら否定出来ない状況である
・中国やインドなど、世界経済の主要国の一部がロシアの金融機関の一部と取引を続ける限り、必然的にロシアへの潜在的なダメージが軽減されることになる
・近年、G20はどこか漂流していて、物事を成し遂げるために効果的な場ではなくなっている
・ロシアや中国との連携を巡ってG20内で分裂が起きて、今後も漂流し続けるのではないかと危惧している

要するに、プロジェクト管理と日常生活 No.757 『ロシアによるウクライナ侵攻に見る「国連の機能不全」』アイデアよもやま話 No.5330 ロシアをめぐる国連総会の非難決議!でもお伝えしたように、国連が機能不全を起こしているように、国連の外でも民主主義陣営と中国を中心とする新興国陣営の両方の国々が参加するグループにおいては双方の意見がぶつかり合い、合意を得ることがとても難しい状況になっているのです。
更に、こうした枠組みとは別に、軍事的、あるいは経済的な依存関係が深い国々の間では自国の利益を総合的に判断して、その都度どちらの陣営に与するか、立ち位置を決めています。
インドなどはその典型例です。
こうした国際的な状況において、”G20の存在意義”が揺らいでいるというサマーズ元財務長官の指摘はもっともだと思います。

では、なぜこのような状況になってしまったのか、その大きな要因はかつてのアメリカの対中国政策の失敗だと思います。
アメリカは、かつて人口13億人という中国の潜在的な巨大市場に魅力を感じ、積極的に中国との経済関係の強化を目指し、様々な面で中国を経済的に支援してきました。
そして、その際のアメリカ政府の判断は、中国は経済発展とともに共産主義から民主主義に移行するのではないかと期待していたからだといいます。
ところが、したたかな中国共産党政権は“まず中国共産党ありき”の方針は全くぶれず、経済発展にうまくアメリカを利用したということなのです。
そして今や、習近平国家主席は、経済的にも軍事的にもアメリカを凌駕する勢いで、国際社会を中国共産党を中心とした仕組みに再構築しようとしているのです。
更に中国は最近、中国式民主主義を唱えて、他の独裁政権国家に独裁政権の正統性を吹き込み、政治的にも国際的な支配を強めようとしています。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.749 『”中国式民主主義”の世界展開による民主主義の危機』
ようやくアメリカも最近になってこうした中国の脅威を無視出来ないとして、様々な対策を打ち出しているというわけです。

ということで、独裁政権国家、中国による国際社会における急速な影響力の強化が民主主義陣営との対立を増々深めつつあることが国連のみならずG20などのグループでも存在意義が問われるほどの両陣営の亀裂を深めているというのが現状なのです。

ではこうした打開策ですが、これまでお伝えしてきたように、究極的に目指す国家のあり方を世界各国が真剣に問い直して、その結果“国家のあるべき姿”に照らして長期的に望ましい判断に基づいて国家運営をすることだと思います。
その際、アメリカをはじめとする民主主義陣営の国々は自由や人権などの尊重の大切さを途上国を中心に積極的に説いて回ることが求められます。
その肝心のアメリカですが、残念ながらトランプ前大統領はいまだに「先の大統領選挙では不正が行われており、本当は自分が選挙に勝っていた」というような発言をしております。
しかも先の大統領選挙に勝利したジョー・バイデンさんが次期大統領に就任することを正式に確定しようとしていた最中の2021年1月6日に起きたアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件(こちらを参照)では、トランプ前大統領が1月13日に暴徒によるこの事件を扇動したとして弾劾訴追されていたのです。
民主主義陣営のリーダー国であるアメリカにおいて、このような事件が起きるなど誰も想像出来なかったと思いますが、起きてしまったのです。
しかもトランプ前大統領を支持するアメリカ国民の数はいまだに無視出来ないほどの割合を占めているといいます。
これが今のアメリカの現実なのです。
残念ながら、今のアメリカは民主主義陣営のリーダー国として相応しいとは思えません。
ですから、まず襟を正すべきはアメリカ自身だと思うのです。

 
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