2022年08月06日
プロジェクト管理と日常生活 No.757 『ロシアによるウクライナ侵攻に見る「国連の機能不全」』
4月6日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でロシアによるウクライナ侵攻に見る「国連の機能不全」について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

ウクライナのゼレンスキー大統領は4月5日、ロシアの侵攻後、初めて国連の安全保障理事会(安保理)の会合でオンライン演説をしました。
「ロシア軍は逃げようとしている一般市民をわざと撃っている。」
「拷問され、目や頭を撃たれて道端で殺されていた。」
「(冒頭でブチャの惨状を訴え、)ブチャに限らず、他の街でも何が行われているのか、これから明らかになるだろう。」
「ロシアがウクライナで行ったことは第二次世界大戦以降で最も恐ろしい戦争犯罪だ。」

そして、ゼレンスキー大統領は国連に対しても「機能不全」だと糾弾しました。
国連ではこれまでウクライナ情勢を巡り、安保理の会合を15回開きました。
しかし、ロシアが常任理事国として拒否権を持つため、法的拘束力を持つ決議が採択出来ていません。
ゼレンスキー大統領は次のように演説しております。
「平和の保障を担う国連が効果的に機能していないのは明らかだ。」
「侵略者であるロシアを戦争の元凶として(国連から)排除するか、もしくは平和のためにきちんと機能出来ることを示すか、どちらも出来ないと言うなら国連はもう解散するべきだ。」

この会合にはロシアのネベンジャ国連大使も出席、次のように反論しました。
「今日もロシア軍についての大量の嘘を聞いた。」
「我々がウクライナで行った目的は領土の略奪ではなく、ドンバス地方に平和を築くためだ。」

一方、国際社会のロシア包囲網による圧力は徐々に強まっています。
これまでロシアに対峙するような発言を控えていたインドの態度にも変化がありました。
インドのティルムルティ国連大使は次のように発言しました。
「ブチャの民間人殺害は衝撃だ。」
「我々ははっきりとこの殺人を非難する。」

また、バチカンで4月5日に開かれた式典ではフランシスコ ローマ教皇がブチャから届いたというウクライナの国旗を掲げ、市民への攻撃を非難しました。
そしてアメリカのバイデン政権は間もなくロシアへの新規投資の禁止など、追加の経済制裁を発表する見込みです。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

ゼレンスキー大統領の演説のポイントを以下にまとめてみました。
・ロシアがウクライナで行ったことは第二次世界大戦以降で最も恐ろしい戦争犯罪である
・このロシアの戦争犯罪に対して、国連は「機能不全」である
・こうした国連の現状に対して、以下の方策のいずれかを取るべきである
侵略者であるロシアを戦争の元凶として国連から排除する
平和のために国連をきちんと機能出来るようにする
国連を解散する

こうしたゼレンスキー大統領による、国連は「機能不全」であるという指摘は全くその通りです。
国連ではこれまでウクライナ情勢を巡り、安保理の会合を15回開きましたが(番組放送時)、ロシアが常任理事国として拒否権を持つため、全て法的拘束力を持つ決議が採択出来ていないからです。
なぜならば、安保理常任理事国のうち1ヵ国でも反対すれば、議案は成立せず、また安保理常任理事国は国連憲章の改正に対しても拒否権を持っているからです。
ですから、ロシア、あるいは中国が常任理事国として拒否権を持つ限り、こうした状況は今後も繰り返されるのは当然です。
ロシアや中国がいかに人権を無視しても、あるいは他国に侵入しようとも安保理としては法的拘束力を持つ決議を採択することは出来ないのです。

なお、ロシアや中国のみならず、他にも新興国の中で独裁政権国家が国連に加盟していますが、これらの国々は中国を独裁政権陣営の盟主と仰いで中国の政治手法を参考にしているといいます。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.749 『”中国式民主主義”の世界展開による民主主義の危機』
また中国の一対一路政策により、中国の“債務の罠”にはまった途上国は表立って中国に反対しにくい状況になっています。
ですから、国連におけるアメリカを中心とする民主主義陣営対中国を中心とする独裁政権陣営、そして新興国/途上国陣営の構図も着々と中国陣営側の占める割合が増えつつあるのです。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.718 『ウイグル人の人権を巡る国連での米中支持の驚くべき割合!』プロジェクト管理と日常生活 No.666 『国連の専門機関の支配権を強める中国!』

さて、全ての国連加盟国は国連憲章(参照:No.4956 ちょっと一休み その774 『中国による“内政干渉”の一言で物事が進んでいいのか?』)を順守することが求められています。
ここで問題なのは、国連の6つの主要機関の中で最も大きな権限を持ち、法的に国連加盟国に拘束力を持つ決議を行うことが出来る、事実上の最高意思決定機関、国際連合安全保障理事会(国連安保理 こちらを参照)の存在です。
先ほども触れたように、国連安保理の常任理事国、5ヵ国のうち、ロシア、あるいは中国、1ヵ国でも反対すれば、国連安保理の議案は成立しないのです。
ですから、常任理事国はどんなに理不尽な行為をしても拒否権を行使することによって自国に不利な議案を不成立にすることが出来るのです。
今回のウクライナ侵攻においても、ロシアは常任理事国の立場を利用して法的拘束力を持つ決議を回避しているのです。
しかも、今の制度上、こうした仕組みを変えることは出来ないのです。
ですから、常任理事国の既得権を認める今の国連安保理の制度は致命的な欠陥があると言わざるを得ません。
現状のままでは、中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害、あるいは台湾進攻に際しても国連安保理は機能しません。

今回のロシアによるウクライナ侵攻は国際的にとても不幸な出来事ですが、こうした大事件はまさにこの欠陥を見直す絶好のチャンスでもあるわけです。
ですから、国連は国連憲章が国連加盟国により順守されるように、真剣に国連の再構築に取り組んでいただきたいと思います。
その際、考慮すべきは、民主主義陣営、あるいは独裁政権という立場にはこだわらず、国連憲章をいかに順守するかという観点から検討することです。
どのような政治思想の国であっても、国連加盟国は国連憲章に照らして、違反した場合はなんらかのかたちで罰せられる仕組みにしなければならないのです。

なお、プロジェクト管理においても、プロジェクト体制、あるいはそれぞれの役割分担をどのようにするかも管理項目の一つになっております。
そして、体制や役割分担があいまいだとプロジェクトの進捗に少なからず影響を例えるのです。
今の国連の機能不全はまさにこの体制、あるいは役割分担における極めて初歩的な“反面教師”と言えるのです。

 
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