2022年08月03日
アイデアよもやま話 No.5337 石油に代わる国産新素材「改質リグニン」!
4月18日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で石油に代わる国産新素材「改質リグニン」について取り上げていたのでご紹介します。 

世界的に原油価格が高騰しております。
そこでコップをはじめ、身近な石油由来の製品の価格も上がっています。
そうした中、石油に代わる新たな素材が普及に向けて一気に動き出すかもしれません。

株式会社リグノマテリア(東京都新宿区)の研究施設(茨城県常陸太田市)の実験室に置かれていたのはクルマのボンネットです。
その原材料となっているのが花粉症の原因ともなる杉のある成分です。
この施設では杉を使った全く新しい素材を製造しているといいます。
見せてもらったのは茶色い粉、杉の粉末に薬剤を加えて作られた「改質リグニン」です。
植物に含まれる細胞壁を頑丈にするための成分「リグニン」を薬剤で抽出したもので、石油に代わる原材料として期待されています。
リグノマテリアの三浦善司社長は次のようにおっしゃっています。
「プラスチックに代わるもの、何にでも出来ますよ。」
「いろんな部品、例えば電子機器の基盤にも使えますし、何にでも使えます。」

植物油来で環境への負荷が少ない「改質リグニン」、耐久性に優れているため強度を保ちながら石油由来の製品よりも軽量化出来るのが特徴です。
クルマのボンネットも女性が片手で持てるくらいの軽さです。
ボンネットの他にも既にスピーカーの部品として実用化されている他、スクラブ(毛穴の汚れを落とすための細かな粒子の入っている洗顔剤)を使った化粧品への活用も想定されています。

現在、化粧品メーカーや大手自動車メーカーなどと商品開発に向けた協議を進めています。
しかし、商用化するためには課題もあります。
三浦社長は次のようにおっしゃっています。
「この工場は年産100トンくらいですから、ナフサ(石油)原料のプラスチックに当然コストでは勝てません。」

平均的な石油由来のプラスチックに比べて製造コストは約6倍、製造コストを下げるためには今の100倍以上の生産量が必要だといいます。

この新素材の普及のため、国も動き出しています。
自民党の議員らは4月18日、改質リグニン活用議連を設立、設備投資など財政支援で事業をバックアップする方針です。
自民党の甘利前幹事長は設立の場で次のようにおっしゃっています。
「実は足元にすごい資源があるじゃないかと。」
「これを日本の成功事例としていきたいと思っております。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して、石油に代わる国産新素材「改質リグニン」について以下にまとめてみました。
・「改質リグニン」は花粉症の原因ともなる杉に含まれる細胞壁を頑丈にするための成分「リグニン」を薬剤で抽出したものである
・「改質リグニン」は植物油来で環境への負荷が少なく、耐久性に優れているため強度を保ちながら石油由来の製品よりも軽量化出来る
・既にクルマのボンネットやスピーカーの部品として実用化されている他、スクラブを使った化粧品への活用も想定されている
・しかし、商用化するためには低コスト化という課題がある
・この新素材の普及に向けて国も動き出している

要するに石油に代わる国産新素材「改質リグニン」は既にクルマのボンネットなどで実用化されているのです。
ですから、低コスト化が実現すれば、環境への負荷が少なく、耐久性などにも優れているのですから、国内外を問わず、様々な業界から引き合いがあると見込まれます。
更にSDGs(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)の観点も追い風になります。
そうした中、自民党の議員らが4月18日に改質リグニン活用議連を設立したといいますが、国を挙げて「改質リグニン」の国内外への普及に向けて積極的に取り組んでいただきたいと思います。

それにしても花粉症の原因である杉が「改質リグニン」の原料になるというのは、世の中、何が役立つようになるのか分からないものです。

 
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