2022年08月02日
アイデアよもやま話 No.5336 世界各国の利上げに日銀はどう動くべきか?
4月14日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で世界各国の利上げに日銀はどう動くべきかについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

世界のあらゆる地域の国が物価の上昇を背景に利上げに動いています。
一方、日本は政策金利を変えていません。
こうした中、ECB(ヨーロッパ中央銀行)はインフレ率が今後も高止まりするとの予測を示したうえで量的緩和策について「7月から9月に終了の見通しが強まった」と発表しました。
これによりECBが年内にも利上げを実施する可能性が高まったと言えます。

世界で物価上昇が続いており、各国が利上げに転じていますが、日本は日銀が粘り強く金融緩和を続けると円安が進んでいますが、こうした状況について、番組コメンテーターでピクテ投信投資顧問 シニア・フェローの市川眞一さんは次のようにおっしゃっています。
「これはもうはっきり言えば、日銀は失敗したんだと思うんですね。」
「9年間にわたって歴史的な金融緩和を続けたにも係わらず、日銀が求めたような内需主導型の2%の安定的な物価目標はいまだ達成出来ていないわけです。」
「ところが、GDPに対する中央銀行の資産規模はアメリカに比べると日銀は4倍です。」
「そして、ECBと比べても2.5倍なんですね。」
「で、ここまでバランスシートが膨らんでしまっているということはリスクが高くなってきているということですよね。」
「そこで特に日銀は、今、長期金利が、10年国債の利回りが0.25%を超えようとすると、そこで「全て買います」ということをやっているわけですけども、そうするとインフレ化が強まってきて、物価が上がってきて金利が上がったところで日銀は国債を大量に買うことになりますから、そうするとインフレ下で量的緩和策を強化していることになるんです。」
「そうすると、例えばECBは量的緩和を止めることになるかもしれない。」
「アメリカはもうそこに踏み出そうとしている。」
「更に他の中央銀行も出口戦略を取っている。」
「こうなれば日本だけが緩和していることになりますから、円安が進んで更に輸入物価が上がってしまうという悪い循環に入ってきていると思いますね。」
「その意味では、日銀はここで政策の抜本的な見直しをする必要があるのではないかと思います。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

なお、その後のアメリカ、およびEUの金融政策の動きは以下の通りです。
・米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月14、15日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利を0.75ポイント引き上げ、2022年末までに3.4%まで引き上げの見通しである(こちらを参照)
・欧州中央銀行(ECB)は7月21日、2011年以来となる政策金利の引き上げを決定するとともに、市場安定化に向けた新たな債券買い入れ措置を承認した(こちらを参照)

要するに、世界のあらゆる地域の国が物価の上昇を背景に利上げに動いている中、日本だけが政策金利を変えない状況が続いているのです。

この日銀のゼロ金利政策に対する市川さんの見解を以下にまとめてみました。
・9年間にわたる歴史的な金融緩和を続けたが、日銀が定めた内需主導型の2%の安定的な物価目標はいまだ達成出来ていない状況から日銀のゼロ金利政策は失敗したと言える
・日本だけが金融緩和を維持していることから、円安が進んで更に輸入物価が上がってしまうという悪い循環に入ってきている
・従って日銀は政策の抜本的な見直しをする必要がある

そもそも他の国々が利上げに動きている中、日本だけがゼロ金利政策を続けていれば、金利差が開くほど円安は進んでしまいます。
そして、円安であるほど自動車業界を中心に海外進出している企業は利益が潤ってきますが、一方、原料などを輸入に依存している企業は利益が圧迫されてきます。
ですから、常識的に考えればどこかで円安の進行を抑える政策が必要になるはずです。

また、素人考えですが、結果的に経済政策を日銀のゼロ金利政策(こちらを参照)に過度に依存してきたというのも国の政策が失敗だったということになると思うのです。
具体的には、国は以下のような取り組みを真剣にすべきだったと思うのです。
・将来的に国が重視する産業分野(再生可能なエネルギー、DX(デジタルトランスフォーメーション)、医療、観光など)を明確にし、取り組みに積極的な企業への重点的な支援を図ること
・ベンチャー企業の活動のし易い環境の整備

要するに企業の経済活動が継続的に活性化しており、世界を圧倒する競争力を持つ企業をいかに多く育成するかが国、および各企業に求められており、このことが国の基本戦略だと思うのです。
ところが、残念ながら“失われた30年”(こちらを参照)と言われるように、日本経済は低迷状態が続いています。
このまま国として適切な政策が実施されなければ、“失われた40年”を迎えてしまいます。

ということで、現政権には危機感を持って、抜本的な打開策に果断に取り組んでいただきたいと思います。

 
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