2022年07月28日
アイデアよもやま話 No.5332 電気料金の値上げに日本は何をすべきか!
4月14日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で電気料金の値上げに日本は何をすべきかについて取り上げていたのでご紹介します。 

食品や衣料品と同様に値上がりを続けているのが生活に不可欠な電気代です。電気を巡っては電力自由化で生まれた新電力と呼ばれる小売電気事業者が窮地に立たされています。
サービスの停止が相次ぎ、新電力を巡る混乱が広がっています。
楽天エナジーやハチドリ電力などは3月に新契約の受け付けを停止、更に事業から撤退する企業も多く、新電力会社の2022年度の倒産件数は14件で過去最多となりました。(帝国データバンク調べ)
新電力会社の撤退が相次ぐ中、家庭向け電気を提供しているNATURE株式会社( 横浜市)は昨年3月にサービスを開始しましたが、6月末で撤退することを決めました。

そもそも新電力会社はどのように電気を調達しているのでしょうか。
その調達先は電力卸売市場です。
新電力会社は自前で電力を発電していません。
発電会社や大手電力会社などが発電した電気を電力卸売市場を通じて購入、その電気を家庭向けに販売しています。
ただ重要なのは電力卸売市場の電力価格です。
NATUREの塩出晴海代表は次のようにおっしゃっています。
「これが今日(4月14日)の電力市場の価格、今は24.39円/kwh。」
「昨年の3月とかでいうと、5.34円/kwh、今はこの約5倍です。」

電力の卸売価格は急激に上昇、新型コロナからの回復による経済再開やロシアのウクライナ侵攻による資源価格高騰が影響しています。
更に今後の先行きは不透明です。
お客から得る電気料金より市場から調達する電気価格が上回ったため、売るだけ損失が膨らむ状況が続いているのです。
塩出代表は次のようにおっしゃっています。
「当然マーケットのリスクがあるというのは認識してたんですけど、ここまでビジネスの採算が完全に取れなくなるという状況が来るというところは織り込めてなかった。」
「電源を持っていない弊社としては、採算性が取れるビジネスとして継続するのは難しい。」

NATUREでは、電気料金の高騰は続くとみて、元々の主力事業であるスマートリモコンを使って電気の使用量を自動で抑えるサービスなどの電力マネジメント事業に注力していくとしています。

さかのぼること2016年4月、消費者に安い電力を届けることを目指し、新電力会社が続々と誕生しました。
競争の激化は大手電力会社の経営にも影響を与えました。
コストの削減を迫られた大手電力会社は火力発電所を中心に廃止を進め、その結果、日本国内の火力発電所の稼働状況は電力自由化前に比べて半分以下に落ち込んでいます。
専門家で常葉大学の山本隆三名誉教授は次のようにおっしゃっています。
「赤字になる設備は電力会社は持てないということですので、今は発電設備が減っていて、それが毎年起こる電力危機の一つの理由ですね。」

3月22日、政府が初めて「電力需給ひっ迫警報」を発令した電力危機もその原因の一つで、電力の安定供給には今後も不安が残ります。
更に気になるのは今後の電気料金の行方です。
大手電力会社の電力料金は上がり続けています。
電気料金は石炭など、上昇した燃料費を料金に上乗せ出来る仕組みですが、その上限は決められていて、既に上乗せ出来る上限に達している電力会社も出ています。
山本名誉教授は次のようにおっしゃっています。
「大手電力で標準的な料金ですと頭打ちになる、そこから先は上がりません。」
「ただ、そんなことがいつまで出来るのかですよね。」
「事業を続けるのが難しいほど燃料代が上がり、発電コストがあがるのであれば、それはやっぱり何か考えないと電力会社が倒産したら停電しますよね。」

こうした状況について、番組コメンテーターでピクテ投信投資顧問 シニア・フェローの市川眞一さんは次のようにおっしゃっています。
「2007年、アメリカでカリフォルニア電力危機というのがあって、不正会計でエンロンという会社が経営破綻しているんですけど、まさにそのきっかけは電力料金の逆ザヤだったんですね。」
「日本でも昨年の平均と比べますと、5月の電力価格をみると標準世帯の年間の負担は2万6000円ぐらい増えることになりますから、これは家計に対する影響は非常に大きいですね。」
「(更に夏場、冬場の電力安定供給が心配になってくるが、日本としてはどのように備えるべきかという問いに対して、)3つあると思っています。」
「一つは原子力発電所、安全が確認された原子力発電所はしっかりと稼働していくことが重要になってくると思います。」
「2つ目は、長期的に考えれば脱化石燃料化の加速をしっかりしていかなければいけない。」
「これは再生可能エネルギーもそうですし、水素などもあると思うんですけども、これをやらなければいけない。」
「そして3つ目ですが、当面日本がやるべきこととして、中東との関係強化があると思うんですね。」
「今、ご覧いただいているように(こちらを参照)、例えば原油とか天然ガスの確認埋蔵量を見ていただくと、中東は非常に大きなウエイトを占めています。」
「1990年の湾岸戦争以降、特に中東の主要産油国であるサウジアラビアはアメリカへの協力姿勢を非常に強く打ち出してきたんですけども、ところがアメリカでシェール革命が起こると、2020年に新型コロナ危機の問題で原油価格が急落した時にOPECがアメリカに対して原油の減産を求めるんですが、トランプ大統領がこれを拒否したと。」
「そのことで中東、特にサウジアラビアが資源国であるロシアと一緒になって原油価格の高値維持を図ってきたというのがここまでのところですから、我々がウクライナの戦いに協力するという意味においてはロシアへの資源依存度を減らすということと我々の経済を安定させるということになりますので、その意味でもロシアと中東の間にしっかり日本はくさびを打つ、これが重要なんじゃないでしょうか。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下に整理してみました。
・2016年4月、消費者に安い電力を届けることを目指し、新電力会社が続々と誕生した
・新型コロナからの回復による経済再開やロシアのウクライナ侵攻による資源価格高騰により電力卸売価格は急激に上昇している
・昨年の3月の5.34円/kwhが4月14日には24.39円/kwhへと約5倍に上昇している
・お客から得る電気料金より市場から調達する電気価格が上回ったため、売るだけ損失が膨らむ状況が続いている
・その結果、電力卸売市場から電力を調達している新電力会社の撤退が相次いでいる
・一方、大手電力会社の電力料金も上がり続けている
・従って家計に対する影響も非常に大きくなっている
・電気料金は石炭など、上昇した燃料費を料金に上乗せ出来る仕組みだが、その上限は決められており、既に上乗せ出来る上限に達している電力会社も出ている
・従って事業を続けるのが難しいほど燃料代が上がり、発電コストが上がれば、倒産する電力会社が出てくる
・また、コストの削減を迫られた大手電力会社は火力発電所を中心に廃止を進め、日本国内の火力発電所の稼働状況は電力自由化前に比べて半分以下に落ち込んでおり、それが毎年起こる電力危機の一つの理由となっている
・更にこうした今後の先行きは不透明で、電力の安定供給には不安が残る
・こうした状況に対する日本の対応策として、ピクテ投信投資顧問の市川さんは以下の3つを挙げている
安全が確認された原子力発電所(原発)の再稼働
脱化石燃料化の加速
中東との関係強化

さて、こうしてみてくると、新電力会社はともかく電力会社の倒産は絶対に避けなければなりません。
ですから、短期的な選択肢の一つとして、市川さんも指摘されているように、緊急措置として燃料費が一定の上限を超えた場合には安全が確認された原発の再稼働が重要になります。
一方で長期的にはやはりあらゆる方策を総動員して脱化石燃料化の加速に取り組むことが求められます。
そういう意味で、岸田総理が7月22日に脱炭素で経済・社会・産業構造を転換するためGX(グリーントランスフォーメーション)実行推進担当相を新設すると表明したことは、遅ればせながらではありますが、望ましいと思います。(こちらを参照)
是非、政府として真剣にGXに取り組んでいただきたいと思います。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています