2022年07月25日
アイデアよもやま話 No.5329 ゼロコロナ政策で中国経済に変調!
前回、中国のロックダウン、そしてロシアによるウクライナ侵攻を例にあげ、中露の弱点、「無謬性(むびゅうせい)」へのこだわりにお伝えしました。
そうした中、7月15日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でロックダウンによる中国経済の変調について取り上げていたのでその内容の一部をご紹介します。

7月15日に発表された、4月から6月までの中国の実質GDP、国内総生産(前年比)は0.4%の増加に止まり、4.8%だった前の3ヵ月から大きく鈍化しました。
中国の景気減速が鮮明になる中で、消費や労働の現場では大きな異変が起きていました。

上海市内にある大型ショッピングモール、龍之夢購物公園ではロックダウン解除後も店内飲食の制限が続いたため、閉店になった飲食店も目立ちます。
更に別のモール、国華広場では、中国で初めてショッピングモールの中につくられたIKEA(イケア)ですが、7月6日に閉店しました。
イケアは閉店について、「新型コロナによる不安要素に対応するため」とは発表しています。
ロックダウンの影響が色濃く残る中国、7月15日に発表された、今年上半期の小売売上高(前年比)はマイナス0.7%と大きく減速しました。

しかし、中には売り上げを伸ばす業種もあります。
ロックダウンによる落ち込みから回復するため、政府は補助金をはじめとした様々な購入支援を実施、6月の自動車販売台数は約250万台と、前年比23.8%増えています。

中国政府は急激な景気の悪化を食い止めようと、自動車への補助金の他、大規模なインフラ投資や減税を進めるなど、景気対策を矢継ぎ早に打ち出していますが、順調に回復出来るかは不透明です。

中国政府は今年の成長率目標として5.5%前後を掲げています。
上海のロックダウン解除後の6月から景気は持ち直しを見せていますが、目標達成は厳しいとの見方が広がっています。
その大きな理由は習近平指導部が引き続き堅持するとしているゼロコロナ政策です。
また、ゼロコロナ政策は雇用情勢も悪化させています。
北京では仕事を探す人たちが溢れ、不安を募らせています。
朝5時過ぎ、北京市内の一画に突然仕事を求める大勢の人たちが集まってきています。
交差点の真ん中で行われていたのは日雇い労働の斡旋です。
仕事を仲介する業者の周りには労働者たちが我先にと群がっています。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「(仕事を失っている人たちが沢山いる中で、中国はゼロコロナ政策にこだわり続けるのかという問いに対して、)習近平国家主席は自らゼロコロナ政策の正当性を強調しているので方針は変わらないですね。」
「いつまた感染者が増えて、都市封鎖や行動制限があっても不思議じゃないです。」
「引き続き中国経済の最大の不確実性ですね。」
「(EVの補助金をはじめ景気対策を次々に打ち出しているが、その効果は不透明なのかという問いに対して、)そこはもう一つのポイントで、習主席なのか李克強首相なのか、経済対策の主導権が見えないんですね。」
「党大会で3期入りを目指す習主席が昨年共同富裕でバブルつぶしに力を入れたんですが、最近は李首相の出番が増えて、最近は二人の対立と捉える見方が増えているんです。」
「5月の下旬に国務院が開いた景気対策に全国10万人の幹部が参加したんですが、習主席は不在、代わりに李首相がコロナを乗り越えてマイナス成長を避けようと訴えたんですね。」
「ところが、公式メディアの扱いは極端に小さくて、10万人という数字も無視されたんです。」
「これは習主席に忖度する共産党宣伝部が李首相の陣頭指揮というイメージを消したいんじゃないかと言われましたね。」
「(実態としては、李首相が経済問題を主導しているのに、つまり評価されていないということなんですが、)そこはゼロコロナと景気対策を両立させるのがすごく難しいわけですよ。」
「で、李首相は来年の春、退任するのが決まっているわけで、その前に損な役回りを押し付けられているように見えますね。」
「貧乏くじかもしれない。」
「(そうなると景気対策を打っても効果は限定的かもしれないとなると、日本にとってどういう影響が考えられるかという問いに対して、)当然景気にも響いてきます。」
「それに中国がゼロコロナを続けるから、いつ工場が止まるかわからないと。」
「供給網のボトルネックを無くすには拠点の見直しが必要になる、それが日本企業の課題になるんじゃないでしょうか。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。


まず番組の要旨を以下にまとめてみました。
・ロックダウンなどのゼロコロナ政策により、中国の景気減速が鮮明になる中で、消費や労働の現場では大きな異変が起きている
・中国政府は急激な景気の悪化を食い止めようと、景気対策を矢継ぎ早に打ち出しているが、回復出来るかは不透明である
・その大きな理由は習近平指導部が引き続き堅持するとしているゼロコロナ政策である
・習近平国家主席なのか李克強首相なのか、経済対策の主導権が見えない
・今秋開催予定の党大会で3期入りを目指す習近平国家主席は、来年の春、退任が決まっている李克強首相に損な役回りを押し付けているように見える
・こうした中国の状況において、日本企業は供給網のボトルネックを無くすために拠点の見直しが必要になる

プロジェクト管理と日常生活 No.690 『中国式“法治”の脅威!』でもお伝えしたように、中国では“まず中国共産党ありき”で中国共産党が全てに超越する存在で、憲法よりも上にあり、憲法も法律も全ては中国共産党の存続のための道具という位置付けなのです。
しかし、こうしてみると、その実態は“まず中国共産党の最高権力者ありき”で、中国共産党の最高権力者、すなわち習近平国家主席の意向で物事が進んでいるのです。
そしてその肝心の習近平国家主席はゼロコロナ政策を堅持しており、一方で今後とも新型コロナウイルスの変異株の感染力次第で中国経済はどのように推移していくか分からないのです。
しかも、習近平国家主席の意向次第で、中国のネット通販最大手、アリババグループに代表されるようにいつ事業活動に規制がかかるか分からないという不安要素があるのです。(参照:アイデアよもやま話 No.4886 アリババグループ傘下のアント上場延期に見る国外企業による中国進出の危うさ!
ですから原田さんも指摘されているように、日本企業は供給網のボトルネックを無くすための対策を講じる必要がるわけです。

では具体的に日本企業はどのような対策を講じるべきかですが、その基本方針について以下に私の思うところをまとめてみました。
・エネルギーや原料などの地産地消
・供給網のリスク分散
・DX(デジタルトランスフォーメーション)による事業活動の再構築

なお、習近平国家主席は経済的、軍事的にアメリカに追いつき、追い越せで中国を中心とした国際社会に再構築しようと意図しています。
そうなると、国際社会は自由も人権も尊重されない“暗黒な社会”と化してしまいます。
ですから、こうした中国の狙いを阻止するために、また日本企業が海外で活動し易くするために国としてやるべき重要な役割があります。
以下に私の思うところをまとめてみました。
・アメリカをはじめ民主主義陣営の国々と協力して、習近平国家主席に代わる、国際社会との融和を図るような国家主席の登場を画策する
・独裁政権に対する民主主義の優位性を積極的に途上国に説いて回り、経済的に支援する

 
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