2022年07月11日
アイデアよもやま話 No.5317 「新法」で進む脱プラ化!
これまでNo.4290 ちょっと一休み その692 『海洋プラごみは1年間に1200万トンにも!』アイデアよもやま話 No.5272 プラスチックの代替素材を木材から開発!などで、海洋プラごみやプラスチックの代替素材についてお伝えしてきました。
そうした中、4月1日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で「新法」で進む脱プラ化について取り上げていたのでご紹介します。 

使い捨てのプラスチックのフォークやスプーンなど12品目を削減するよう企業に義務づける新たな法律「プラスチック資源循環促進法」が4月1日に施行されました。
コンビニや宿泊施設などは今後素材の変更や有料化を求められるようになります。
こうした中、プラスチックに近い特徴を持ちながら100%植物由来という新たな素材に注目が集まっています。

王将フードサービスは「餃子の王将」の全店でテイクアウトのプラスチックのスプーンとレンゲを1本5円に有料化しました。
デリバリーだと1本10円かかります。

コンビニ大手のローソンでも4月1日から対策を始めました。
一部の店舗でお客に提供しているプラスチックのスプーンを木製のものに変更しました。
また、持ち手に穴をあけるなどして、プラスチックの使用量を最大14%ほど削減したスプーンも用意、今あるプラスチックのスプーンが無くなり次第、どちらかのスプーンに変更していきます。
ローソン銀座七丁目店の宇登裕紀オーナーは次のようにおっしゃっています。
「(プラスチックを他の素材に変更することによるコスト負担について、)プラスチックの3倍、変わることによってお客様の満足が高められればそれも良いですし、・・・」

宿泊業も対応に追われています。
東急ホテルズは今年度中に全てのホテルで無償で配っていたペットボトル入りの水を廃止し、木材を混ぜたボトルやタンブラーを導入、フロアにウォーターサーバーを設置し、水を入れる仕組みです。

プラスチック廃棄物の多くを占めるアメニティは、カミソリやヘアブラシなどを生物由来のバイオマスを取り入れた素材に変更、中でも力を入れるのが100%バイオマスの歯ブラシで、日本初の導入といいます。
これまでの歯ブラシは約70%がプラスチックでした。
しかし、この新しい歯ブラシの柄の部分はプラスチックを一切使用していません。
この新素材を開発した化学メーカー、株式会社カネカの門倉護取締役は次のようにおっしゃっています。
「我々が奇跡のポリマーと呼んでいるんですけども、微生物が植物油(などのバイオマス)を食べて作り出すポリマーです。」
「これは完全に天然物。」
「強度とか使い勝手は普通の汎用プラスチックと全く変わりません。」

石油化学原料を一切使っていない素材、その名も「グリーンプラネット」、ある微生物が食用油を食べて、体内にポリマー、高分子を蓄積、それを取り出したのが新素材「グリーンプラネット」です。
歯ブラシだけではなく、スプーンやボールペン、繊維まで作れるといいます。
そして一番の特徴が、海水に漬けておいたストローは90日後にはほとんど無くなっている状態です。
海水にいる微生物がこの素材を食べて分解していくのです。
土の中でも分解される、完全な資源循環型のこの素材、国内だけではなく世界的にも注目を集めているといいます。
門倉さんは次のようにおっしゃっています。
「ヨーロッパを見ても生分解出来る素材に変えていこうという動きが非常に強くて、引き合いは世界中から頂いています。」

こうした状況について、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は次のようにおっしゃっています。
「やはりもとになるのは気候変動対策、サステナビリティ、持続可能な社会に変革していくことですよね。」
「実は今年のアメリカの主要メディアで「サステナブルテック」、「サスティナブルテクノロジー」がトレンドとして見かけられまして、そのテクノロジーがこちらにある「資源循環促進のプロセス」で、今もそのまま活用可能です。」
「(そのプロセスは、)「設計・製造」、「販売・提供」、「回収・リサイクル」と、まさにぐるっと回る循環経済ですね。」
「(そこにテクノロジーが係わっていくわけですが、)「サステナブルテック」の3大要因と言われていますが、1つ目は、「設計・製造」に対してはバイオ技術、循環し易い素材の開発ということで、パイナップルからTシャツみたいなものが現れています。」
「「販売・提供」はデジタル技術が一番活用可能で、アメリカではAIが試算して牛乳が紙パックにカーボン表示、カーボンラベリング(こちらを参照)のようなものまで登場して、恐らくはカーボンラベリングは今年のトレンドになるかもしれません。」
「(「回収・リサイクル」に関しては、)そこはロボット技術が活用出来るところで、例えばロボットが効率的にゴミをピックアップする事例が出てきています。」
「(持続可能な取り組みとして、海外でうまくいっている事例について、)やはりここでも最先端企業はアップルですよね。」
「よく知られているところとしては、2030年までにサプライチェーンをカーボンニュートラルにするという宣言を2020年7月に既にされてますけども、実は目標年度は示してないんですけど、アップルは全製品を資源循環促進でやると。」
「全てリサイクル部材だけで生産するという宣言を既にしているんですね。」
「(アップルだと影響力が大きいという指摘に対して、)そうですね。」
「そういう意味では日本企業も先行して取り組む必要があるところが資源循環促進プロセスというところだと思いますね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

あらためてプラスチックに関する情報を以下にまとめてみました。
(メリット)
・加工のし易さや高い耐久性などの特性がある
・従って私たちの生活のさまざまな部分で使われており、欠かせない存在である

(ディメリット)
・プラスチックの原料は採れる量に限りがある石油資源であり、プラスチックの製造によって資源の枯渇につながる
・生ゴミなどとは違い、自然には分解されない
・プラスチックが燃やされるときに温室効果ガスが発生し、地球温暖化の原因の一つになっている
・大量のプラスチックが海に流れ出て、海を汚染しており、数百年も消えずに存在し続ける
・その結果、海の生き物やそれを食べる人間などにもさまざまな影響を与える

(問題対応策)
・プラスチック使用量の削減
  プラスチックの使用量を削減したスプーンなどを使用
  プラスチック製スプーンやレジ袋などの有料化
・プラスチックのリサイクル
・プラスチックのディメリットを解消する代替素材へのシフト

こうした中、使い捨てのプラスチックの12品目を削減するよう企業に義務づける新たな法律「プラスチック資源循環促進法」が4月1日に施行されたというわけです。
そして、番組で紹介されたように、この法律に基づいて個々の企業が以下のように対応策を実施し始めたのです。

(王将フードサービス)
・「餃子の王将」の全店でテイクアウトのプラスチックのスプーンとレンゲを1本5円に有料化した
・デリバリーでは1本10円とした

(ローソン)
・一部の店舗でお客に提供しているプラスチックのスプーンを木製のものに変更した
・持ち手に穴をあけるなどして、プラスチックの使用量を最大14%ほど削減したスプーンも用意し、今あるプラスチックのスプーンが無くなり次第、どちらかのスプーンに変更していく

(東急ホテルズ)
・今年度中に全てのホテルで無償で配っていたペットボトル入りの水を廃止し、木材を混ぜたボトルやタンブラーを導入し、フロアにウォーターサーバーを設置する
・プラスチック廃棄物の多くを占めるアメニティは、カミソリやヘアブラシなどを生物由来のバイオマスを取り入れた素材に変更する

一方で、カネカ食品はプラスチックに代わる石油化学原料を一切使わない新素材、微生物が植物油を食べて作り出すポリマーを開発しました。
その特徴は以下の通りです。
・強度や使い勝手は普通の汎用プラスチックと全く変わらない
・海水にいる微生物がこの素材を食べて分解していくので、海水に漬けておいたこの素材のストローは90日後にはほとんど無くなっている状態になる
・土の中でも分解される、完全な資源循環型の素材である
・プラごみの分別収集、廃棄処分が不要になる

今や持続可能な社会の実現は世界的な課題となっていますから、この素材に対して世界中から引き合いが来ているのは当然です。

さて、田中教授により紹介された「資源循環促進のプロセス」と「サステナブルテック」との対応例は以下の通りです。
設計・製造:バイオ技術
販売・提供:カーボンラベリング
回収・リサイクル:ロボット

ですから、あらゆる経済活動が「サステナブルテック」を最大限に活用して「資源循環促進のプロセス」を実施していくことにより、持続可能な社会の実現に大きく貢献出来るのです。
ということで、今回ご紹介した取り組みの事例はこうした枠組みの中の一部なのです。
そしてアップルの取り組んでいる全製品の「資源循環促進のプロセス」の実現はまさに経済活動における持続可能なモデルの先駆けと言えます。

 
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