2022年07月23日
プロジェクト管理と日常生活 No.755 『快進撃が続くネクストミーツに見られる日本のスタートアップ企業に対する支援環境の不備』
「代替肉」のスタートアップについてはアイデアよもやま話 No.5175 進化する代替肉!でお伝えしましたが、3月17日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で快進撃が続くネクストミーツについて取り上げていたのでご紹介します。

ネクストミーツ株式会社は今日(3月17日)最大で30%値下げすると発表しました。
原料高の中、値下げをした背景にはスタートアップならではの強みがありました。
都内新宿区にオフィスを構えるネクストミーツ、大豆を使ったNEXTカルビなどの代替肉を手掛けています。
今年度の売り上げは前年度比20倍以上、そして今日、主力4商品の値下げに踏み切りました。
80g400円前後で販売していましたが、300円を切る値段にしました。
佐々木英之CEOは次のようにおっしゃっています。
「(値下げ実現の理由について、)製造方法が全て確立されているものとは違って、まだいろいろなところが確立されていないもので、効率を上げることで単価を下げていくことが出来ましたね。」

更に販売の急拡大を受け、原材料の大量仕入れが可能になり、コストダウンにつながっています。
2020年6月に会社を設立したネクストミーツ、2人で立ち上げた会社が2年足らずで80人以上のスタッフを抱えるまでに短期間で急成長を遂げている理由の一つについて、次のようにおっしゃっています。
「決断というか判断は大手企業に比べれば何倍も早く出来るので、かなりスピードを出して事業を進めていけるというところはスタートアップの一番の優位なところ。」

商品の企画から販売まで約半年、消費者ニーズに対応した新商品を市場に素早く投入出来るのが強みだといいます。
更には成長を加速するため、2021年にはアメリカの証券市場に上場しました。
現在の時価総額は約600億円、世界に販路を拡げる方針のネクストミーツですが、一方で日本発のスタートアップの難しさを指摘します。
「日本で集められる資金は海外、特に欧米と比べると金額が10分の1になってしまうので、スピードを上げて事業をやっていこうと思うと、海外の方がよりお金は集まり易い。」
「規模感が日本に比べると海外の方が圧倒的に大きいかな。」

国内でのスタートアップの資金調達額は昨年7800億円を突破し、前年より46%伸びています。
しかし、アメリカは約39兆円で日本の約40倍、桁違いの規模で投資が行われています。
この規模の違いに経団連は危機感を抱いており、南場智子副会長は次のようにおっしゃっています。
「次から次へとイノベーションが沸き起こるような土壌を作るということをやらないと、競争力は挽回出来ないんですよね。」

そこで経団連が掲げた目標は5年でスタートアップ企業を10倍に、評価額10億ドル以上で未上場のスタートアップ、ユニコーン企業(こちらを参照)を増やして世界に打って出ようというのです。
現在、アメリカのユニコーン企業は539社、日本はわずか6社となっています。
南場さんは次のようにおっしゃっています。
「(スタートアップが国力に寄与するポイントについて、)生産性もベンチャーキャピタルに支えられた企業の方が高いし、イノベーションの波及効果も格段に大きい。」
「やってみようと思えば、誰でも(起業)出来る、面白い普通の選択肢の一つだなという社会にしていかなければいけないと思うんですよね。」
「例えば起業家やエンジニアをアジアから誘致するとか、あるいはキャピタリストや機関投資家、海外のカネや人材、それからグローバル企業のアジア展開拠点を日本にしっから置いてもらうと。」
「そこに日本の起業家も混ぜていくと、目線も自然と世界に開かれていくとなると思うんですよね。」

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「若い人で会社じゃなくて自分で事業を起こすという意欲を持っている人は多いと思っているんですけど、日本はちょっと事業を大きくしてから上場するっていうプロセスが土壌として出来ていない。」
「ここが一番大きいと思いますね。」
「(やることは沢山あり、)政府の後押しが必要ですね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

快進撃が続くネクストミーツについて以下にまとめてみました。
・2021年度の売り上げは前年度比20倍以上である
・決断の素早さなどスタートアップの強みを生かして以下のことを実現している
  商品の企画から販売まで約半年、消費者ニーズに対応した新商品を市場に素早く投入出来る 
  原料高の中、3月17日に主力4商品の値下げに踏み切った
  販売の急拡大を受け、原材料の大量仕入れが可能になり、コストダウンにつなげた
  更には成長を加速するため、2021年にはアメリカの証券市場に上場した
  現在の時価総額は約600億円に達する

一方で、国内のスタートアップには以下の課題があるといいます。
・ベンチャーキャピタルに支えられた企業の方が生産性が高いし、イノベーションの波及効果も格段に大きい
・しかし、日本で集められる資金は海外、特に欧米と比べると金額が10分の1になってしまうので、海外の方がよりお金は集まり易い
・イノベーションが沸き起こるような土壌を作らなければ、競争力を挽回出来ない
・現在、アメリカのユニコーン企業は539社だが、日本はわずか6社である

そこで経団連は以下の目標を掲げています。
・5年でスタートアップ企業を10倍に、評価額10億ドル以上で未上場のスタートアップ、ユニコーン企業を増やす
・そのための手段は以下の通りである
  起業家やエンジニアをアジアから誘致する
  キャピタリストや機関投資家、海外のカネや人材、グローバル企業のアジア展開拠点を日本に置いてもらう
  そこに日本の起業家も混ぜていく

さて、ネクストミーツのように代替肉という新たな市場を開拓する企業は途上国での食糧難や世界的な人口増による食料の消費増に対応するうえでその成長はとても重要です。
そして、こうしたスタートアップ企業が思う存分事業に取り組むうえで資金の確保は必須です。
ところが残念ながら日本のスタートアップ企業に対する支援環境はとても十分とは言えません。
そこで、遅ればせながら経団連は5年でスタートアップ企業を10倍に増やす目標を掲げたわけです。
そして、その狙うところは的を射ていると思われます。
ですので、経団連は政府とも協業して是非以下の課題を達成していただきたいと思います。
・起業家やエンジニアにとって世界一活動し易い環境を整備すること
・日本をグローバル企業のアジアの、更には世界の展開拠点にすること

こうした中、岸田総理が7月22日に新興企業の育成を支援する司令塔のスタートアップ担当相を新設すると表明しました。(こちらを参照)
ですのでスタートアップ担当相の強力なリーダーシップに期待したいと思います。

なお、アイデアよもやま話 No.5314 「培養肉」が食の救世主に !?で「培養肉」についてお伝えしましたが、食料安全保障の観点から「代替肉」、あるいは「培養肉」といった「人工肉」、あるいは「植物工場」の分野で今後とも新たなスタートアップ企業の登場を期待したいと思います。

ちなみに、「持続可能な社会の実現」を国家目標とすれば、食料安全保障、すなわち食料の自給自足はこの国家目標を達成するためのプロジェクトの一つと言えます。
そして、このプロジェクトの目標達成のための課題の一つが「人工肉」、あるいは「植物工場」の普及ということになるのです。

 
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