2022年07月03日
No.5310 ちょっと一休み その832 『ロシアの情報統制が機能しなくなった!?』
以前、ロシアで強まる報道規制についてお伝えしてきました。(参照:No.5298 ちょっと一休み その830 『ロシアで強まる報道統制』
しかし、一方で6月15日(水)付けネット記事(こちらを参照)でロシアの情報統制が機能しなくなったことについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・ロシアが得意としてきた情報統制が、日を追うごとに機能しなくなっている。ロシア軍内部の兵士や司令官がアプリを通じ、厳しい戦闘の実情をロシア国民に直接発信するようになったためだ。
・情報漏洩(ろうえい)の主な舞台となっているのは、暗号化メッセージアプリの「Telegram(テレグラム)」(こちらを参照)だ。軍上層部を信頼しない兵士や司令官、そして退役軍人や独立系メディアなどが、それぞれ独自の視点で生の情報を発信し続けている。ある司令官はTelegramに投稿した動画を通じ、ひどい食糧不足により部隊全体が飢えていると訴えた。プーチンはロシア兵を虐殺している、との猛批判だ。
・生々しい戦場をその目でみたロシア兵の多くは、もはや政府発表の情報を信頼していない。
・興味深いことに、Telegram上で飛び交う現場の声はロシア軍の作戦立案にも反映されているという。
・このようなアプリを通じた情報公開は、以前の戦争であれば考えられなかった。状況を特異だとみる欧州政策分析センター(CEPA)は、「戦争から3カ月で、まったくもって前代未聞の事態が巻き起こった。ロシア軍内部に、検閲がなく、防衛省の管理も届かない議論の場が出現したのだ」と驚きをあらわにしている。
・Telegramのメッセージは携帯端末から送出する段階で暗号化されるため、通信経路の途中で政府の検閲を受ける心配がない。
・CEPAはロシアにおいてTelegramが、単一のアプリとしては「不相応なほどにまで重要な役割」を担っており、「同国において最も人気のあるマスメディア」になっていると指摘する。オープンな議論が限られた現地で、政府の不当な監視の及ばない貴重な場となっている。
・ソ連時代から情報統制をお家芸としてきたこの大国は、現代の情報化に対応できておらず、旧態然とした隠蔽(いんぺい)国策を続けている。ところが、たった1つのアプリ(Telegram)を経由して前線でのあらゆる出来事が筒抜けとなる始末だ。
・ITを積極活用するウクライナとは、好対照といえるだろう。ウクライナはかねて進めてきた電子政府化により、戦時下でも政府機能を維持している。ほか、スターリンク衛星通信を軍と市民生活の双方で積極活用するなど、近代技術を柔軟に取り入れている。(参照:アイデアよもやま話 No.5306 ITを最大限活用してロシアの侵攻に立ち向かうウクライナ!
・情報公開もむしろ積極的に進めており、英ミラー紙などが報じている死亡情報開示もその一例だ。ロシア兵の安否を気遣う家族向けに、確認されたロシア兵の死亡情報をTelegram上で確認できる枠組みを立ち上げた。同紙によると登録者数は100万人を超えたとのことで、ロシア兵の家族たちがロシア政府とウクライナのどちらを信用しているかは明らかだ。
・戦時の情報隠蔽は、ゆっくりと過去の戦略になりつつあるのだろう。CEPAは、ロシアが行っている報道規制について、「この完全隠蔽システムは平時であればうまく機能するかもしれないが、全面戦争という現実が立ちはだかったなら、存続は不可能だ」と指摘する。
・プーチンとしては戦時中にこそ、戦意高揚のため不都合な事実を隠蔽したいところだろう。だが、まさにその戦時中、前線に動員された司令官や兵たち自身がありのままの真実を発信している。肝心のときに限ってプロパガンダが機能しないという皮肉に、プーチンはいつの日か気づくのだろうか。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

以前お伝えしたように、健全な社会にとって、自由や人権の尊重とともに“情報の見える化”もとても重要です。
教育なども含めて入手する情報が時の政府にとって都合のいい情報ばかりになると、多くの人たちは歪んだ情報をもとに価値観が出来上がり、従って歪んだ判断しか出来なくなってしまい、健全な社会とはかけ離れた環境になってしまうからです。
そういう意味で、今のロシアや中国など独裁国家は健全な社会とは言えません。

さて、こうしたロシアの情報統制がTelegramというアプリによって機能しなくなりつつあるというのです。
ということは、いかに現実をありのままに知ること、すなわち“情報の見える化”が重要であり、Telegramのようなアプリがその手段として有効であるかを示しているのです。
しかし、こうしたアプリにも課題があります。
それは、フェイクニュース(偽情報)もこうしたアプリに存在し得るからです。
勿論、フェイクニュースは時間とともに真実が明らかになり消滅していきますが、それでも一時的な混乱を防ぐためにはAIの活用などにより素早くフェイクニュースを区別し、アプリのユーザーにフェイクニュースを識別出来るような機能が求められるのです。

それにしてもTelegramがロシア人技術者により開発されたという事実はプーチン大統領にとってはなんとも皮肉だと思います。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています