2022年07月01日
アイデアよもやま話 No.5309 21世紀型モノづくりの主役として期待される3Dプリンター!
これまで3Dプリンターについては何度となくお伝えしていきました。
そうした中、3月22日(火)付けネット記事(こちらを参照)で21世紀型モノづくりの主役として期待される3Dプリンターについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。

・試作品製造など個人主体の「デジタルファブリケーション」から台頭した3Dプリンターだが、この数年は大型化によってその可能性が一段と大きくなっている。
・米国では3Dプリントの街づくりが始まり、国内でも建築業界や自動車業界が注目している。さらにドローンと組み合わせればロボットアームの制約からも解き放たれる。「21世紀型ものづくり」とも言える動きだ。
・日本では近年大地震や豪雨などの災害が続くが、被災者向けのトイレやベッド、椅子などを避難所で製造出来れば早期復旧や事業継続計画(BCP)に役立つ。

(3Dプリンターのユーザー、會澤高圧コンクリート株式会社の事例)
・會澤高圧コンクリートが導入したオランダのスタートアップ企業「CyBe Construction(サイビ・コンストラクション)」製の3Dプリンターは積層しながら壁を作っていくイメージで、従来の構造物の制限にとらわれない柔軟なデザインを短時間で造形できる。
・インド向けのプロトタイプは排泄層にはおがくずを使用し、微生物が固形物を分解するバイオマストイレを採用。さらに空気中の湿気から水を生成する装置を備え、上下水道と連結しない自己完結型のオフグリッド仕様とした。これは清潔な水道インフラが整備されていないインドの状況を加味したためである。装置のコストや電気の供給など、まだハードルはあるものの安全で持続的に使い続けられるトイレのひな形になっている

なお、3Dプリンター事業を推進する入社10年目の若きリーダー、東大智さんは次のようにおっしゃっています。
「3Dプリンター技術は、間違いなく工期全体の短縮につながります。型枠を作って外す作業がなくなりますから。いまでは木材も手に入りにくく、職人が減ってきている問題もあります。我々の方法なら、3次元データとロボットがあればボタンを押すだけで型枠を出力できてしまう。曲線を生かせるなどの自由度が高いので、表現の幅が格段に広がる点は大きなメリットです。」

(3Dプリンターのメーカー、株式会社エクストラボールドの事例)
・2017年12月に設立した同社は、工業用グレードの純国産大型3Dプリンターを開発・販売するベンチャーだ。
・2021年9月には量産機となる「EXF-12」の販売を開始。自動車をはじめ、建築、製造、家具など幅広い業界での活用を見込む。
・EXF-12は最大で幅1.7メートル、高さ1メートル、奥行き1.3メートルの部材を製造できる。工作機械の安定性を基本とし、造形時間の長さ、サイズの小ささ、製造業用途に不向き、材料の選択肢の少なさといった3Dプリンターの課題を克服した点が特徴である。
・技術的には、射出成形スクリューを応用した独自開発の3Dプリントヘッドの存在が目を引く。これにより、1時間あたり最大15kgの高速造形を実現した。高剛性フレームとボールねじ、FAロボットのファナックの技術による制御を用いた安定動作、樹脂の収縮を抑える専用設計の厳密な温度コントロールにも配慮している。
・足腰の強さに加え、汎用の樹脂ペレット材やリサイクル樹脂ペレット材が利用できるのも特筆すべき点だ。3Dプリンターの材料は専用のフィラメントを使うのが一般的だが、EXF-12であれば工場から出る廃プラスチックを原料として製造が可能になる。このことは、SDGsの観点からも大きな意味を持つ。

なお、原雄司社長は次のようにおっしゃっています。
「(「EXF-12」をコンテナサイズにした理由について、)モビリティ(可動性)を意識したからです。12は12フィートの意味で、JRの標準貨物コンテナにすっぽりと入るサイズです。私はもともとコンテナの概念がすごく好きで、将来的にはコンテナタイプの3Dプリンター、切削機、塗装ブースなどをユニット単位で組み合わせてマイクロファクトリーを構築するのが夢です。」
「これが現実のものとなれば、災害時にも移動できるので今まで不可能だったことが可能になってきます。以前、ボランティアで被災地の瓦礫除去に参加したことがありますが、踏み抜き防止の靴を履かないと危険です。でも皆が持ってきているとは限らないじゃないですか。そこにEXF-12を運べば、万能サイズの踏み抜き防止サンダルを1足10分程度で作れるようになります。 」
「また、被災地で活用できる災害時仮設モジュールも試作済みです。ベッド、ソファー、椅子などをその場で1時間ほどの短時間の間に量産できます。2020年には大阪大学のプロジェクトに協力して、フェイスシールドのフレームを1時間で40個出力することに成功しました。」
「いずれにせよ、21世紀にビジネスを展開する上で、社会課題を解決するテーマは最優先だと思っています。今は大量生産・大量消費の社会から脱却している過渡期であり、適材適所のプロダクトが生まれつつあります。中央集権型ではないものづくりが求められる時代にあって、エクストラボールドは最適な提案やソリューション構築ができると自負しています。」

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

この記事を通して、将来のモノづくりのあり方がイメージ出来ましたので以下にまとめてみました。
・3Dプリンター、切削機、塗装ブースなどをユニット単位で組み合わせたマイクロファクトリーを構成する機器の生産工程、およびマイクロファクトリーによるモノづくりは全てCO2排出量ゼロである
・マイクロファクトリーによるモノづくりは地産地消である

また、昨年12月12日(水)付けネット記事(こちらを参照)で従来の製造技術の限界を超える金属3Dプリンターについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・Velo3Dはサンフランシスコ・ベイエリアに拠点を置く、金属3Dプリンターの市場で急激に業績を伸ばすスタートアップだ。金属粉末を敷き詰め、熱源となるレーザや電子ビームで造形する部分を溶融・凝固させるPowder Bed Fusion方式というテクノロジーを利用し、複雑な金属物体を3Dプリントする。支持構造を使うことなく幾何的な立体を作成できるので、複雑な形状の部品を精度高く製造できるのが特徴だ。
・同社のソリューションは、宇宙開発、航空、発電、エネルギー、半導体といった先端テクノロジー分野で、設計の自由度を広げ、技術革新を可能にした。
・2018年に最初のシステムを納入以来、スペースX、Honeywell、ホンダ、Chromalloy、Lam Researchなどのイノベーターと戦略的パートナーを結んだ。
・約30年前に発明されたDfAM(Design for Additive Manufacturing)と呼ばれる金属3Dプリント技術は、技術的な制約があって、特定のニッチな分野にしか使用ができなかった。
・Velo3Dは、この金属制限を克服し、これまでの3Dプリンターでできなかった、内部構造が複雑な部品も作れるようにしたのだ。素材はニッケル超合金、チタン合金、アルミニウム合金や鉄などに対応し、強度についても一般的な鋳造部品よりも同等かさらに高いという。
・Velo3Dの技術は、航空、宇宙、ガス、石油、半導体など高い製造技術が必要とされる分野ほど需要が高い。具体的な成功事例として、Velo3D創業者のBenny Buller氏は2社を紹介した。
・その一つ、スペースXでは、ロケットエンジンをVelo3Dの技術をベースに再設計した。非常に高い効率でエネルギー密度を持つため、エンジンの重量と効率が改善され、ロケットの打ち上げコストが劇的に向上した。
・最先端部品に挑戦することによって、Velo3Dの技術はさらに磨かれ、半導体装置ほか、3Dプリンターメーカーとの競争優位性を保っている。
・ほかにもVelo3Dが積層造形/3Dプリントの競合他社と比べて優れている点がある。それは、当社のソリューションが本当にエンド・ツー・エンドのソリューションとなっている点だろう。競合他社のソリューションでは、プリントされる部品を専門家がわざわざ設計する必要があるが、Velo3DのSapphireソリューションには、標準的な設計用CADファイルをアップロードするだけで、自動的に3Dプリント用に最適化するソフトウェアや「Flow」や品質管理のシステム「Assure」も含まれているのだ。
・2020年から2021年(2650万ドル)は41%の成長をしたが、2022年には3倍以上(8900万ドル)の売上となる見込みだ。この背景には、生産性が5倍に向上し、製造コストを3倍に削減できる新しいシステムがあるという。そして、2021年9月、Baron Capitalなどから1億5500万ドルを調達して上場を果たした。
・現在、社員数は154名でアメリカが中心だが、ヨーロッパやアジアにも進出したいとしている。日本では大陽日酸と販売契約を結んでおり、山梨研究所に、3Dプリンティングの専任技術者を配置。Velo3D社製品のデモンストレーションや技術サポートをしており、すでにいくつかの日本企業に対して提供をしている。
・なお、自動車分野など、大量生産品の部品の場合はコスト的に見合わないため現在は参入していない。しかし、熱交換器など、多くの部品で構成される機器を1つのパーツで実現するなどで、コストに見あってなおかつ自動車の効率を高める部品の製造は考えられる。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

なお、アイデアよもやま話 No.3471 火星有人探査が2024年に実現!?でもお伝えしたように、スペースXは2024年には火星移住計画を実行に移すといいます。
そして、この計画にVelo3Dの3Dプリンターは無くてはならないものなのです。
なぜならば、従来のロケットエンジンは多くのパーツから構成されており、とても重いので燃焼効率が悪く、火星に到達することは不可能だったのです。
ところが、Velo3Dの3Dプリンターはこうした多くのパーツを不要にし、更に再設計によりエンジンの軽量化、および燃焼効率を格段に高めたことにより火星への到達が可能になったのです。
更に、火星に到達後の暮らしにおいても3Dプリンターはモノづくりにおいて欠かせない存在になるはずです。

要するに、どこかに位置する大きな工場で大量生産された製品が購入者のもとに輸送されるのではなく、地球上のみならず、宇宙空間での暮らし、あるいは月や火星など他の惑星への人類の移住に際し、いずれ3Dプリンターにより必要な場所で必要なだけモノづくりが出来るようになると期待出来るのです。
まさしく、3Dプリンターにより新たな産業革命がもたらされると言えます。

ちなみに、数年前に行った展示会で多くの3Dプリンター関連のブースに立ち寄りましたが、説明員によれば、当時はまだまだいろいろと課題山積で本格的な普及は当分先という感じでした。
それが短期間のうちにこれほどまで3Dプリンター関連の技術が進化したという状況はいかに3Dプリンターの将来性が世界的に注目されていたことを物語っていると思うのです。

 
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