2022年06月30日
アイデアよもやま話 No.5308 ロシア情勢の悪化でリサイクル市場が拡大!
3月11日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でロシア情勢の悪化によるリサイクル市場の拡大について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

ステンレス、リチウムイオン電池、そして50円硬貨、これら全てに使われているのがレアメタルの一種であるニッケルです。
実はこのニッケル、ロシアへの経済制裁の影響で価格が一気に高騰しているのです。
ニッケルの高騰は私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

コロナ禍の供給不足でニッケルや鉄などの原料価格が上昇したことでステンレス製品の仕入れ値が高騰、更にロシア情勢を受け、今後も値上がりしていく可能性があるといいます。
東京・台東区のかっぱ橋にある調理器具の専門店、高橋総本店 調理道具部の國府田麻理菜店長は次のようにおっしゃっています。
「海外情勢が悪化いたしますと、半年後や1年後に(商品の)価格の上昇になってしまう可能性はございます。」
「既に過去最高、見たことがないくらい上がっておりますので、昨年に対しては(販売価格が)全体を通して2倍近くになる商品も出てくるのかなと。」

加工用のステンレスを製造する大同特殊鋼 渋川工場(群馬県渋川市)を訪ねると、世界有数の特殊な設備でステンレスなどの合金を生産しています。
その原料の一つ、ニッケルがありました。
大同特殊鋼では2月、ニッケルを含むステンレスの価格を4月契約分から10%値上げすると発表しました。
大同特殊鋼の清水哲也取締役は次のようにおっしゃっています。
「ニッケルは2年前と比べると2倍の価格、2月時点で1トンあたり約2万4000ドルになっています。」
「今、ロシアがウクライナに侵攻したことに伴ってニッケルの価格が高騰しまして2万4000ドルの倍ぐらいの価格になってしまっていると。」

世界第3位の生産量を誇るロシアからの供給不安でニッケル価格は急上昇、その影響でロンドン金属取引所は3月8日からニッケルの取引の停止になったため、大同特殊鋼ではニッケル製品の注文を受けても見積りが出せない状況になっているといいます。
清水取締役は次のようにおっしゃっています。
「全くこれは異常な事態だという認識ですね。」
「見積りが出せないということは当社にとっても全く記憶にないですから、原料・市況の価格に応じて値上げは適正な価格をお願いしていかなきゃいけないと思っております。」

こうした中、需要が高まっているのがステンレスのリサイクルです。
静岡県富士宮市にあるエンビプロ・ホールディングスのリサイクル工場では月に2000〜2500台の自動車が持ち込まれ、約30トンのステンレスを取り出しています。
エンビプロ・ホールディングスの佐野文勝専務は次のようにおっしゃっています。
「今はロシアとウクライナの問題でステンレスに使われているニッケルの価格が急騰しているということで、そのような需要もあるんですけども、過去にはなかったEVのマーケットからニッケルが引っ張られているんで、(市場)価格が急騰していると思います。」

こちらではEVやノートパソコンに使われるリチウムイオン電池のリサイクルにも取り組んでいます。
佐野専務は次のようにおっしゃっています。
「(分解した電池から取り出す)「ブラックマス」と我々呼んでいますけども、ニッケルも多いものではこの中に30%含まれているものもありますし、この中からそういう希少金属を回収するという意味では「宝の山」。」

需要の高まりからリチウムイオン電池リサイクル事業の売り上げはこの1年で3倍に増加しました。
世界でのEV拡大に伴って、電池が不足すると専門家は指摘します。
伊藤忠総研の上席主任研究員の深尾三四郎さんは次のようにおっしゃっています。
「半導体も電池も同じなんですけども、材料の争奪戦になっていると。」
「国レベルの争奪戦になっていると。」
「経済安全保障の観点でリサイクル技術の強化と回収の仕組みを強化するのは国家戦略上非常に重要になってきていると。」

またロシア情勢の悪化で原油高、ガソリン高などになっていることからEV化が加速すると予想、リサイクル市場が更に拡大すると深尾さんは見ています。
「既に日本の企業はリユースですとかリサイクルの技術は高いものがありますので、日本の自動車産業はモノづくりだけでなく、海外に強固な販売流通網を持っていますので中古のEVと使用済みのバッテリーを回収する仕組みを作ることによって、EV車載電池は「都市鉱山」そのものなので、それを囲い込む戦略が非常に重要になってくると思っています。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通して、ロシアへの経済制裁の影響が私たちの生活にどのような影響を及ぼしているのか以下にまとめてみました。
・コロナ禍による供給不足の中、更にレアメタルの一種であるニッケルなどが供給不足になり、ニッケルは2年前と比べると2倍の価格に急上昇するなど、見積りが出せない程原料価格が高騰している
・こうした中、ステンレスやリチウムイオン電池のリサイクル需要が高まっている
・世界的なEVの拡大に伴ってリチウムイオン電池の世界的な需要の高まりにより国レベルの争奪戦になっている
・経済安全保障の観点でリサイクル技術の強化と回収の仕組みを強化するのは国家戦略上非常に重要になってきている
・ロシア情勢の悪化による原油高、ガソリン高でEV化が加速すると見込まれ、リサイクル市場は更に拡大する
・日本の企業はリユースやリサイクルの技術が高く、日本の自動車産業はモノづくりだけでなく、海外に強固な販売流通網を持っている中、EV車載電池は「都市鉱山」(参照:アイデアよもやま話 No.5132 日本は資源大国になり得る!?)そのものなので、それを囲い込む戦略が非常に重要になってくる

こうしてみてくると、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻はいろいろな原材料の供給不足による価格高騰を招いており、経済安全保障の観点から大変な状況にあると言えます。
しかし、見方を変えれば、こうした世界的な供給不足はリユースやリサイクルを拡大させる千載一遇のチャンスと捉えることが出来ます。
しかも、資源小国、日本にはこうした技術の蓄積があります。
ですから、こうした関連企業においては、このチャンスを捉えて是非リユースやリサイクル関連技術を更に高めて「都市鉱山」の開拓に取り組んでいただきたいと思います。
また、こうした一連の取り組みはSDGs(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)の達成、すなわち持続可能な社会の実現につながるのです。

 
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