2022年06月27日
アイデアよもやま話 No.5305 クライナ危機の根源はミンスク合意!?
2月23日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でクライナ危機の根源と見られるミンスク合意について取り上げていたのでご紹介します。 

ロシアのプーチン大統領は2月22日の会見で、ウクライナへのロシア軍の派遣という自らの主張を正当化しました。
「もはや「ミンスク合意」(こちらを参照)は存在しない。」
「我々が(親ロシア派の)独立を認めたのに、なぜ従う必要があるのか。」

ウクライナ東部の紛争の和平解決を目指し、当事者らで交わされたミンスク合意(2014〜2015年)、合意ではウクライナが親ロシア派に自治権を与える代わりに親ロシア派側は外国部隊を撤退させる取り決めでしたが、ロシアはウクライナ側が先に合意を破ったと主張、ロシアからウクライナへの軍の派遣を正当化しました。
更にプーチン大統領は独立を認める新ロシア派の領土について、現在実効支配する地域だけではなく、ドネツク州とルガンスク州の全体が対象になり得ると発言、親ロシア派が支配していない地域にもロシア軍を派遣する可能性を示唆したのです。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

また2月22日(火)付けネット記事(こちらを参照)でも同様のテーマについて取り上げていました。

私たちはバイデン大統領が「ロシアがウクライナ侵攻を実行に移す可能性が高い」という報道からロシアによるウクライナ侵攻について知るようになったと思います。
しかし、今回ご紹介したテレビ番組やネット記事を通して見ると、必ずしもロシアのプーチン大統領が一方的にとんでもない決断をしたとは言えないところがあります。
ロシアによるウクライナ侵攻のきっかけと言われるミンスク合意前からウクライナ侵攻の直前までの状況について以下にまとめてみました。
・ロシアとウクライナの関係が悪化した発端は、2014年にウクライナに親欧米政権が誕生したことにある。
・「新政権がロシア語話者(親ロシア系住民)を迫害する」との警戒から、親ロシア系住民が多数を占めるドンバス地域(ドネツク州とルガンスク州)で分離独立の気運が高まり、ドンバス地域の一部に半ば独立状態が生まれた。
・ドンバス地域では当初、ウクライナ政府軍と分離派武装勢力との間で激しい戦闘状態になったため、ドイツとフランスが仲介に乗り出し、2015年2月に現在の停戦協定であるミンスク合意を成立させた。
・ミンスク合意は単なる停戦協定ではない。「ウクライナ政府がドンバス地域の一部に強い自治権を認めるなどの内容を盛り込んだ憲法を改正する」という高度な政治的取り決めも含まれている。
・2019年に就任したゼレンスキー大統領は、不利な戦局の中で結ばれたミンスク合意の修正を求めたが、ロシアはこれに応じなかったことから、昨年1月「ミンスク合意を履行しない」と宣言した。
・これに対し、ロシアは「ウクライナがミンスク合意を破棄して武力解決を試みようとしている」と警戒、昨年3月からウクライナ国境沿いに軍を増派して圧力をかけた。
・この動きに敏感に反応したのが本来の調停者であるドイツやフランスではなく、部外者である米国だった。バイデン政権の対ロ強硬派がこれを奇貨としてロシアの脅威を煽ったことから、焦点がミンスク合意からNATOの東方拡大にすり替わってしまった感が強い。
・フランスのマクロン大統領は2月7日にロシアを訪問、その直後にウクライナのゼレンスキー大統領と会談して「ミンスク合意に基づき憲法改正を実施する」ことを約束させたといわれている。2月15日にロシアを訪問したドイツのショルツ首相もミンスク合意に言及したことで、「問題の本質はミンスク合意だ」との認識に戻りつつある。
・「ミンスク合意の遵守に絞って協議が続けば、ウクライナをめぐる事態はいずれ鎮静化する」と筆者は考えているが、ミンスク合意に関するロシアとウクライナの溝は深く、2月11日に行われた協議でも進展はまったく見られなかった。
・ウクライナ東部では2月17日から戦闘が激化し、双方が「責任は相手側にある」と非難する事態になっている。分離派武装勢力が劣勢となり、親ロシア派住民の安全が脅かされるようになれば、ロシアがウクライナ領内に軍を投入せざるを得なくなるかもしれない。
・繰り返しになるが、ウクライナ危機の根源はNATOの東方拡大ではなくミンスク合意である。最悪の事態を回避するために、日本を含め国際社会はウクライナ東部の停戦を早期に実現させるための最大限の努力をすべきなのではないだろうか。

こうしてまとめてみると、プーチン大統領がウクライナ侵攻を決断した背景には、不利な戦局の中で結ばれたとは言え、ミンスク合意(2015年2月)をゼレンスキー大統領が昨年1月に「ミンスク合意を履行しない」と宣言したことにあると言えます。
ですから、上記ネット記事の筆者、経済産業研究所コンサルティングフェロー、藤和彦さんは「ウクライナ危機の根源はNATOの東方拡大ではなくミンスク合意である」と指摘されているわけです。

なお、2月7日にマクロン大統領はゼレンスキー大統領と会談して「ミンスク合意に基づき憲法改正を実施する」ことを約束させたと言われています。
ですから、もし、この時点で即座にゼレンスキー大統領がプーチン大統領にミンスク合意についての協議を強力に働きかけていれば、ロシアによるウクライナ侵攻を未然に防げた可能性があるのです。
ですからウクライナとロシアとの国家間の合意である「ミンスク合意」をゼレンスキー大統領が昨年1月に一方的に「履行しない」と宣言したことは大失態と言えます。
従ってロシアによるウクライナ侵攻はプーチン大統領に一方的に責任があるという見方は間違いだと思うのです。

いずれにしてもロシアによるウクライナ侵攻はまだ続いており、いつまで続くのか全く分からない状況ですが、このような状況はウクライナ、およびロシアの国民に限らず、世界各国の経済状況に大きな被害をもたらしているのですから、一刻も早く停戦に持ち込むことが求められるのです。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています