2022年06月25日
プロジェクト管理と日常生活 No.751 『 経済指標で日韓の逆転が始まっている!』
3月7日(月)付けネット記事(こちらを参照)で日本経済は既に韓国に追い抜かれていることについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・日本経済研究センターが2027年には韓国が名目GDPで日本を上回りし、台湾も同年に上回ると予測したとき、大きなニュースとなった。しかし、国際通貨基金(IMF)によると、韓国はすでに2018年に日本を追い抜き、台湾は2009年に追い抜いている。
・さらに、韓国は2026年までに日本より12%リードするとみられている。 IMFは、購買力平価(PPP)と呼ばれる基準を用いており、これは、実際の生活水準を比較するために、価格と為替レートの変動を均衡するものだ。
・しかも、韓国は日本とは異なり、その成長成果を労働者に与えてきた。1990年から2020年までの30年間、平均的な日本の労働者は年間実質賃金(付加給付を除く)の上昇を享受しなかったが、韓国の労働者の賃金は2倍になっている。現在、韓国の労働者は日本の労働者よりも高い実質賃金を得ている。
・この「逆転」は、韓国よりも日本について多くを語る。健全な新興工業国は、経済的に裕福な国の技術レベルに追いつくペースが早く、経済的にも富裕国より早く成長する。日本と韓国も同様に先進国の技術に追いつき、経済成長を果たしてきた(そして日本については、奇跡の成長が終わった後も、技術的な進化は続いた)。
・1970年には日本の時間あたりの労働生産性は、アメリカのそれの40%に満たなかったが、1995年までに71%にまで上昇した。が、その後、失われた10年の間に日本が後退したことで、この数字は63%にまで低下している。
・一方、韓国はアメリカに追いつき続けた。1970年の時間あたりの労働生産性はアメリカの10%に過ぎなかったが、2020年までに58%に急上昇。まもなく、韓国はこの指標でも日本を追い抜くだろう。
・いずれにしても、日本と韓国における1人当たりのGDPは、アメリカやヨーロッパを大きく下回っており、韓国は追いつきつつある一方で、日本はこれに後れをとっている、というのが今の構図だ。しかも韓国は構図的欠陥の少なくとも一部を改善するため、より多くの取り組みを行っている。逆に言えば、日本は韓国から学ぶところがある、というわけだ。
・経済がきちんと成長するためには、高い潜在的成長を実現するための生産性向上を実現しなければいけない。同時に、経済がフル稼働するには、需要側の安定性が必要である。
・この点で、韓国は日本よりうまく需要側をコントロールしてきた。前述の通り、韓国では労働者の賃金がGDPと並行して上昇している。その結果、韓国の世帯は自国が生産したものを買う余裕がある。正常な経済では、民間需要の不足を補うために、慢性的な政府による支出と、必要以上に大きな貿易黒字は必要ないのだ。
・賃金格差については、韓国のほうが日本より状況が悪いが、韓国はこの改善にも取り組んでいる。例えば、最低賃金は中央値は62%に引き上げられており、これはOECDで3番目に高い比率になっている。日本はいまだ45%にとどまっている。
・韓国の対GDPにおける輸出額は日本の2倍だが、内需が強いことから、韓国は世界的な危機に対して日本より耐性がある。2008〜2009年の金融危機時、日本のGPDが7%減少した一方、韓国のGDPは4%増加した。また、過去2年のコロナ禍において日本のGDPは3%低下したのに対して、韓国のGDPは3%上昇した。一般的にマクロ経済危機の影響を受けにくい国は、長期的に平均成長率が高くなる。
・生産性の面では、経済成長に必要な第一要素は最新設備への投資である。1980年当時、韓国の各労働者は日本の労働者の23%の資本しか持っていなかったが、2020年までに韓国の労働者は日本の労働者より12%多く持つようになった。
・2つ目の大きな要素は、教育と訓練である。「人的資本」は、1人ひとりがどれだけ学校教育を受け、さらなる追加の学歴が各国の成長に貢献するものだが、1960年、韓国は日本と比べて70%の人的資本しか享受していなかった。これが2019年までに5%増加し、韓国の人的資本は先進国31カ国中5位となり、日本は13位になった。
・多くの日本人が大学を卒業しているにもかかわらず、日本はなぜ後れをとっているのだろうか。2020年には、24〜34歳の年齢層では韓国人の70%が大卒で、日本は62%と先進国トップレベルにある。ここからわかるのは、日本企業がこうした高い学歴を持つ人を最大限に活用する訓練やテクノロジーを導入できていない、ということだ。
・問題は訓練費用だけではない。大学以前の教育に投資する費用(GDP比)で見ても、韓国がOECD26カ国中15位なのに対して、日本は下からなんと2番目。大学教育に関して言えば、日本は公的資金に最もお金をかけていない。 経済的負担は家族に課せられる。その結果、裕福でない家庭の優秀な日本人学生は大学に進学できず、個人にとっても国にとっても損失となっている。
・ある国の経済が発展していくうえで最も重要な要素はインフラ、近代産業、および教育にどれだけ投資するかである。しかし、国がある程度経済的に成熟すると、より重要なのは国がどれだけ投資するかではなく、どれだけ賢明に投資するか、つまり、企業が投資した1円や1ウォンからどれだけの利益を得られるか、である。
・この点で見ると、サムスン電子はより優れた製品や、賢い労働者を持つからではなく、優れた戦略を実行したことからソニーに取って代わったと言える。
・国が物的資本と人的資本の両方からどれだけの利益を得るかを測る尺度は、全要素生産性(TFP)と呼ばれる。 資本と労働の投入量が2%増加し、GDPの生産量が3%増加する場合、その1%の差はTFPである。長期的には、TFPの堅調な成長は、1人当たりGDPの成長を最も確実に保証するものだ。 2014年から2019年にかけて、韓国はOECD 23カ国の中で1位となり、TFPは年間1.5%の成長を遂げた。対照的に、日本は0.6%でわずか10位だった。
・TFP成長の一部は、アーク式電気炉を備えた製鉄所など、より最新の技術に投資することによってもたらされる。しかし、先進国はどこも同じような技術を利用している。こうした中、TFPの差を生む要因の1つは、その技術をどれだけうまく利用しているか、である。
・試しにデジタル技術を見てみよう。日本と韓国はともに、大企業と中小企業間の大きなデジタルデバイドに悩まされているが、情報通信技術(ICT)に投資している韓国企業は、これをより効率的に活用する取り組みをしている。
・例えば企業は、ICTを事務作業や工場作業の自動化など、すでに実行している作業のコストを削減するために使うのか、それとも新製品や改良製品を生産するために使うのか、的確に顧客を狙うために使うのがいいのかという選択に迫られる。日本経営開発研究所は、デジタル分野におけるこのような「ビジネスアジリティ」で国をランク付けしているが、2021年に64カ国中、韓国は5位だったのに対し、日本は53位と完全に後れを取っている。
・企業は、従業員がICTをうまく使うスキルを持っていない限り、ICTを最大限に活用できない。 世界経済フォーラムが労働力のデジタルスキルで141カ国をランク付けしたとき、韓国は25位だったが、日本は驚くほど低い58位だった。
・韓国は新興企業や起業家育成にも力を入れている。特に研究開発分野への投資は国が生み出す高成長中小企業の数に大きな違いをもたらす。日本では従業員250人未満の企業に対する政府の財政援助は、研究開発分野での政府援助の12%と、OECDで最も少ない。対して韓国では研究開発への政府支援の半分は中小企業に充てられる。これが、韓国のビジネス研究開発全体の22%が中小企業によって行われている理由の1つである(日本ではたった4%である)。
・こうしたさまざまな取り組みの結果、2017年時点で韓国には8000を超える高成長企業(従業員が10人以上で、3年間連続で年間20%以上成長した企業)があった。先進国12カ国の中で、韓国は労働者100万人当たりの高成長企業数で5位にランクインしている。残念ながら、日本は起業家の成功に関する重要指標を測定したことがない。これは国が何を重要視しているのかを如実に語るものだ。
・さまざまな数字は日本にとって悪いニュースかもしれないが、これはいいニュースでもある。韓国の経験を踏まえて、正しい構造改革を行えば、日本にも明るい未来が待っている可能性を示しているのだから。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

こうしてみてくると、いかにかつての経済大国、日本は経済的に停滞しており、かつての面影はなくなっております。
そして経済指標の多くの面で韓国に追い抜かれていることが分かります。
今や、日本は韓国の経済政策を見習う立場になってしまったと言えます。
そうした中、岸田政権は新たな経済政策「新しい資本主義」を掲げております。
勿論、国の経済政策においてどのような目標を掲げるか、その内容はとても重要です。
しかし、目標を達成するうえで、プロジェクト管理の観点から目標設定の数値化も重要です。
そして、今回ご紹介したネット記事で示されている経済指標で見ると明らかにその数値は悪化している、もしくは停滞しているのです。
ですから、国の経済政策の成果が国民に理解し易いように、最終目標、およびそれを達成するための個々の目標を数値化、すなわち“見える化”して目標を達成して欲しいと願います。
その際、個々の目標において、世界ランキングも明示すべきです。
それによって、世界的に見て日本の経済政策の良さの程度が分かるからです。
そして、長期的には全ての経済指標で世界トップを目指して欲しいと願います。

なお、これまでの日本の経済が長期的に見て停滞していた背景には大きく2つあると思います。
1つ目は、国も国民も日本の経済状況を世界的な視点から数値的に直視してこなかったことによる危機感の欠如です。
2つ目は、デジタル化、あるいはDX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り遅れてしまったことです。

 
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