2022年06月20日
アイデアよもやま話 No.5299 ロシアによるウクライナ侵攻で変わる世界 その1 衰退するロシアと世界制覇に向けて前進する中国!
4月28日(木)放送の「プライムニュース」(BSフジ)でロシアによるウクライナ侵攻で変わる世界について取り上げていました。
そこで2回にわたってその一部をご紹介します。
1回目は、衰退するロシアと世界制覇に向けて前進する中国についてです。

4月18日、中国の楽外務次官とロシアのデ二ソフ駐中国大使が会談、このような発言があったと中国の外務省が発表しています。(こちらを参照)
ロシアに接近し続ける中国の狙いとスタンスについて、国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこさんは次のようにおっしゃっています。
「中国の最終的な狙いはアメリカですからね。」
「ロシアはそのための道具と言っても、ちょっと言い過ぎかもしれませんけども、このウクライナに対する侵略戦争でロシアの力は確実に落ちたわけですよね。」
「そして、ロシアに対する国際社会の見方も劇的に変わりましたよね。」
「ロシアが復権するということは当分ないし、ほとんどないだろうと思うんです。」
「これからロシアは凋落の一途だと思いますね。」
「でも非常に広い国土を持っていて、非常に豊かな資源がありますよね。」
「で、中国はロシアをジュニアパートナーとして、例えば資源供給国みたいなところに置くようにするだろうと思います。」
「勿論ロシアにもまだ相当の武器があるし、核兵器もありますからそんなに軽々には扱いませんけども、基本的には、例えばチベットとかモンゴルとかウイグルの土地を奪って、この人たちが持っている豊かな資源を中国の経済発展のために十分活用してきたわけですね。」
「それと同じような構造になると思いますね。」
「その先に中国が考えているのは自分たちの究極の敵として凌駕したいアメリカと対峙することですので、どんなに国際社会の評判が悪くても戦略を習近平さんは変えなかったですね、今回ね。」
「だから、この路線はその通りだろうと思います。」

「(「新たな国際関係の構築を推進する」という意味について、)文字通りそのまんまですね。」
「中国が主導する新しい国際関係を作りますと。」
「中国が主導する新たな国際社会こそが目的なんですね。」
「例えば4月21日ですから、つい数日前ですけども、ボアオというところでアジアフォーラム(こちらを参照)がありましてね。」
「そこに習近平国家主席がオンラインで演説をしたんですよ。」
「そこで打ち出したのが「グローバル安全保障イニシアティブ」(こちらを参照)というものなんですね。」
「これ読んでみたんですけど、非常にいろんな言葉が入っていて、象徴的で分からないんですけども、確かなことは、中国が掲げている「運命共同体」というのがありますね。」
「これ、2017年の3時間20分にわたる大演説の中で、私がすごく強く印象づけられた言葉なんですね。」
「この地球上の人類はみんな「運命共同体」で、その共同体の枠をつくるのは中国共産党であると。」
「で、中国共産党の価値感の中に全ての人類が包摂(一定の範囲の中に包み込むこと)されるんであって、その中で、「2049年、建国100年までに中国は全ての諸民族の中にそびえ立つ」という言葉があるんですね。」
「で、ボアオで行われたアジア・フォーラムで、グローバル安全保障イニシアティブというのは人類運命共同体の安全保障面のバージョンですということなんですよ。」
「ということは、安全保障においても中国がアメリカを凌駕して、安全保障のメカニズムを作りますという宣言をつい数日前にしているわけですね。」
「だから中国は、新たな国際関係というのは中国が掲げる中国共産党の価値感に基いた人類運命共同体であって、今回はそれに対して「安全保障の面でちゃんとやりますよ」ということなんですね。」
「その証拠に、ソロモン諸島にこの前協定を結びましたね。」
「で、あの協定の中身は実はよく分かっていないんです。」
「で、ソロモン諸島の首相が議会で追及されて、初めて締結したということを認めたんです。」
「つまり、議会にも内緒で、いわんや国民にも内緒で、いわんや南太平洋のいろんな島しょ国にも内緒で(中国と協定を)結んだ。」
「これ典型的な中国のやり口です。」
「トップの人を買収して、ものすごい巨額のお金とかいろんなものを与えたんだと思いますね。」
「トップを買収して、協定を結ばせて署名させる。」
「これで正式な国と国との協定になるわけですね。」
「中国はこれをもって、「我々はちゃんと条約を結びましたよ」ということを言うことが出来ますね。」
「それに対して、アメリカとかオーストラリアはすぐに密使を送り込んで「ここに中国の軍隊を常駐させるようなことがあったら直ちに対応策を取る」と言いましたね。」
「ソロモン諸島はガダルカナルがあるところで、日本とアメリカが激突して大東亜戦争の戦局がガラっと変わった要衝の地を中国は今、取ってオーストラリアとアメリカを分断して、この地政学上ですね。」
「で、中国の考える安全保障における枠組みでイニシアティブを取りたいと。」
「で、その前に中国はTPPに加盟を申請しましたよね。」
「で、このTPPに加盟を申請したと同時にデジタル経済パートナーシップというのがあるんですよ。」
「デジタル経済パートナーシップという仕組みがあって、この頃、デジタルが全てを制しますよね。」
「で、このデジタル経済パートナーシップはシンガポールとニュージーランドとチリが始めたものなんです。」
「これにブルネイが加わって、かつて何が出来たかというと、そこからTPPが生まれたんですよ。」
「つまり、太平洋諸国の、中国からすると「一帯一路」は今まで西にずーと行ってたわけでしょ。」
「それが今、ウクライナの戦争で中々難しい。」
「それから、いろいろと今までやったパキスタンとかはもう破たんしているということが分かって、西に展開することは諦めてはいないんだけれども、時間がかかるなということですね、戦争もあるし。」
「だから、その間に太平洋の方の東の方に、TPPであるとか、ボアオのセミナーで言ったグローバル安全保障のパートナーシップであるとか、そういったものをつくろうということで、これ全部グローバル安全保障イニシアティブとかTPPとかですね。」
「それからデジタル経済パートナーシップ協定(こちらを参照)、全部一緒のものなんですね。」
「で、これは全てに中国が係わっていて、もう一つはアメリカが比較的関与が少ないと。」
「そうしますとね、やっぱり中国は両方を考えて、西も東も、デジタルも安全保障も、それからいろんな含めて国際社会のTPPみたいな経済のルール、価値観のルールも含めて自分たちが主導出来るものをかたちの上で着々とつくっている、その一旦だと思いますね。」

「(ロシアによるウクライナ侵攻でロシアは)つまはじきにされていて、誰も自分たちのガスも買ってくれない、ヨーロッパもどんどん(パイプを)閉め始めましたね。」
「これ買ってくれるのは、発展途上国は買ってくれるかもしれないけれど、やっぱり中国ですよ。」
「だから中国を頼らざるを得ない。」
「もう嫌だとかそんな次元を超えて生き延びるために頼らざるを得ないところまで落ちてしまっていて、私たち日本人が考えることは、中国にはこれからユーラシアの覇者になりますよということですね。」
「それは時間の枠組みはまだ分かりませんよね。」
「今、このウクライナ戦争がまだ続いていますし、どれだけ、どういうかたちで“一帯一路”がどんどん西に伸びていくのか分かりませんけども、中国はそっちがまだ停滞しているのであるならば、東に伸びて、今のうちに取れるところを取ろうという、この両方に展開していて、私たちがやっぱりしっかり見なければいけないのは恐るべき大国としての中国の出現ですよね。」

「(ウクライナ侵攻はクリミヤ併合のように短期間で軍事行動は終息すると)プーチンは見誤った。」
「私たちはこれを見て、絶対に中国に見誤まらせないようにしなければいけないということです。」
「中国は、ここでロシアが成功すればむき出しの力でやれるんだ、核の脅しでやればやれるんだという教訓を得るわけですね。」
「そのような教訓は絶対に中国に与えてはならないのであって、私たちはこのようなことを絶対に許しませんよと。」
「許さない構えも作ってますよと。」
「許さない気持ちも十分ありますよと。」
「許さない体制もちゃんと作ってますよということで、2度としてはならないという強いメッセージを中国に与えるということがこのウクライナ戦争から学ぶべき日本の教訓なんですよ。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通して、国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこさんのご指摘の内容を以下にまとめてみました。
・ウクライナに対する侵略戦争でロシアの力は確実に落ち、凋落の一途でロシアが復権することは当分ない
・ウクライナ侵攻が長引く中、当面ロシアは世界的に孤立する中で中国に頼らざるを得ない
・しかし、ロシアは非常に広い国土があり、非常に豊かな資源がある
・そこで中国はロシアをジュニアパートナーとして、資源供給国のように位置付けようとしている
・その先に中国が考えているのは究極の敵として凌駕したいアメリカと対峙することである
・更にその先に中国が考えているのは中国が主導する新しい国際社会を構築することである
・その具体的なイメージとして習近平国家主席が提唱しているのは、この地球上の人類は全て中国共産党の価値感に基いた「人類運命共同体」であり、その共同体の枠をつくるのは中国共産党であるということである
・「グローバル安全保障イニシアティブ」は「人類運命共同体」の安全保障面のバージョンである
・中国による南太平洋の島しょ国への協定締結の働きかけやTPPへの加盟申請はこうした中国の長期目標達成のための一つのステップと言える
・ウクライナ侵攻もクリミヤ併合のように短期間で軍事行動は終息するとプーチン大統領は見誤ったが、NATOや日本は絶対に中国に見誤まらせないようにしなければいけない

こうしてまとめてみると、アイデアよもやま話 No.5219 驚くべきウクライナ侵攻のロシアの1日当たりの戦費!でもお伝えしたようにロシアはウクライナ侵攻で毎日莫大な戦費をつぎ込んでいるので櫻井さんも指摘されているように凋落の一途でロシアが復権することは当分なく、ロシアは中国に依存せざるを得ない立場になると思います。

今後の世界情勢をみた時に大きな問題は一方の中国です。
今回の番組を通して、あらためて習近平国家主席による世界戦略の本質が見えてきました。
それは、世界の安全の共有を促進するために冷戦構造を無くすことを名目に中国共産党の価値感に基いた「人類運命共同体」として現在の世界を再構築することなのです。
要するに、中国国内同様に世界各国の国民を中国流に人民と国民に区分けして中国共産党政権が世界を支配するという世界戦略なのです。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.749 『”中国式民主主義”の世界展開による民主主義の危機』
そして、その実現の手段として以下のような取り組みを着々と進めているのです。
・国連における発言力の強化(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.666 『国連の専門機関の支配権を強める中国!』
・グローバル安全保障イニシアティブの提案
・TPPへの加盟申請
・一帯一路政策の推進
・アフリカなどの途上国へのインフラ投資
・南太平洋の島しょ国への協定締結の働きかけ

そして、現状では中国によるこうした一連の取り組みに対してアメリカを始め、民主主義陣営の国々、あるいは国連の対応は後手後手に見えてなりません。
ですから、櫻井さんのような専門家が中国に対して大変な脅威を感じていることはとてもうなずけます。
民主主義陣営に属する日本ももっともっと真剣に、かつ現実的にこの大きな問題に対して取り組むべきなのです。
もはやロシアによるウクライナ侵攻は“対岸の火事”では済まない状況になりつつあるのです。

 
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