2022年06月17日
アイデアよもやま話 No.5297 レアアースが半分で済む”磁石”!
3月8日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でレアアースが半分で済む”磁石”について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

東芝 研究開発センターの技監、桜田新哉さんは次のようにおっしゃっています。
「自動車ですとかハードディスクなどの中の小さなモーターにはボンド磁石、その中にレアアースが含まれているんです。」
「(レアアースは)価格が高騰し易いですとか、非常に資源リスクが高くて注目されています。」

そこで東芝と東北大学が1年半かけて開発したのはレアアースの量が半分で済むボンド磁石です。
ボンド磁石は、自動車のワイパーや窓の開け閉め、ハードディスクドライブなど、あらゆる小型モーターに使用される磁石です。

原材料のネオジムは産地が限られているレアアースで獲得競争が激しく、価格高騰が見込まれています。
そこで今回目を付けたのがサマリウムというレアアース、実はネオジムを採掘する時に一緒に採れる副産物です。
桜田さんは次のようにおっしゃっています。
「今はほとんど(のボンド磁石)がネオジムになります。」
「ネオジムだけを使っていますと、同時に採れるサマリウムがどんどん余ってきます。」

サマリウムは磁力が弱いという課題がありましたが、今回の研究によって他の元素を足し合わせることで磁石の力が増す鉄分がネオジムよりも多くなることが分かりました。
磁力が増す分、サマリウムを使う量は半分で済みます。
耐熱性に優れ、さびにくいことから将来的にはクルマのモーターなどへの実用化を目指します。
桜田さんは次のようにおっしゃっています。
「(サマリウムの価格が高騰する心配はないかという問いに対して、)勿論これ(サマリウム)だけを使うと同じ問題が起きます。」
「ネオジムとサマリウムを今後はバランスよく使っていくと。」

磁石の生産設備ですが、これまでのネオジムとほとんど変わらないということから、このサマリウムは代替品として適しているといいます。

このことについて解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「やっぱり中国に対する経済安全保障やなんかでも重要な意味を持ってくると思いますね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今回ご紹介した、レアアースが半分で済む”磁石”について以下にまとめてみました。
・ボンド磁石は自動車のワイパーや窓の開け閉め、ハードディスクドライブなど、あらゆる小型モーターに使用されている
・ボンド磁石の中にはレアアースが含まれている
・原材料のネオジムは産地が限られているレアアースで獲得競争が激しく、価格高騰が見込まれている
・東芝と東北大学はレアアースの量が半分で済むボンド磁石を開発した
・今回目を付けたサマリウムというレアアースはネオジムを採掘する時に一緒に採れる副産物である
・ネオジムとサマリウムをバランスよく使うことにより耐熱性に優れ、さびにくいことから将来的にはクルマのモーターなどへの実用化を目指すという

今後、世界的にEV(電気自動車)の普及が見込まれ、EV搭載のモーターの生産量も増えていきます。
そうした中、モーターの原材料であるレアアースの量の十分な確保が求められます。
しかし、日本は中国と政治的に難しい関係にある中、日本のレアアースの輸入先1位は中国で、しかも約92%を中国に依存しているといいます。(こちらを参照)
ですから、滝田さんも指摘されているように、中国に対する経済安全保障の観点からレアアースの輸入先を分散させたり、今回ご紹介したようにレアアースの原材料の代替資源を開発することがとても重要なのです。
更には日本が得意とする「都市鉱山」関連技術の活用(参照:アイデアよもやま話 No.5132 日本は資源大国になり得る!?)も求められます。
また、この技術を世界展開することは世界的な省資源の貢献につながります。
なお、こうした取り組みはロシアによるウクライナ侵攻下における他の資源においても同様に求められるのです。

 
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