2022年06月13日
アイデアよもやま話 No.5293 ウクライナ問題は北方領土交渉の絶好のチャンス!
3月3日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でウクライナ問題をきっかけに北方領土交渉をどう進めるかについて取り上げていたのでご紹介します。 

ロシアによるウクライナ侵攻下における北方領土交渉について、小野寺元防衛大臣は次のようにおっしゃっています。
「(ロシアに強い態度で臨むと交渉に影響が出ると見られているが、)例えば今までロシアと融和的になって交渉しましたが、結局は何も返ってこなかった。」
「私はロシアはそういうスタンスだと今回ではっきり見るべきだと思っています。」
「それはプーチンなのかもしれません。」
「実は今、ウクライナの中のクリミアがロシアにより不法占拠され、今、東部が不法占拠されていますが、実は日本は70年前に北方領土をロシアによる力によって今でも不法占拠されているわけです。」
「これをやっぱり私たちはこの機会にG7とか国際社会にしっかり伝えることによって、むしろ日本もそういう問題があったんだと初めて世界が気づいて、世界の声を後押しして解決に結びつける。」
「私は、今回、むしろ良いチャンスだと思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

小野寺元防衛大臣のご指摘はまさにその通りだと思います。
軍事大国、ロシアが今回、自国の国家安全保障のためとは言えウクライナ東部をほとんど不法占拠していますが、実は2014年にもロシアはクリミア半島を不法占拠し、クリミア共和国とセヴァストポリ特別市の一方的な独立宣言をし(クリミア共和国の成立)、一方的にそれらのロシアへの編入の宣言をしてしまったのです。(こちらを参照)
そして、こうした不法行為があっさりと出来てしまったことから、プーチン大統領は今回のウクライナ侵攻も数日で目的を達成出来ると考えたわけです。
ところが、ウクライナのゼレンスキー大統領はプーチン大統領の想定外の不屈の闘志で祖国を守り抜くと決意したことがウクライナの国民のみならず世界中の多くの国々の首脳をも動かし、様々な支援を得て、多くの犠牲を払いながらもいまだに抵抗を続けているのです。

もし、仮にクルミア半島の時と同様にウクライナが短期間のうちに不法占拠を許してしまっていたら、国際社会もほとんど動きが無く、ロシアへの編入の宣言がなされてしまった可能性が高いと思います。

更に、そうなるとこうした状況を見計らって中国による台湾侵攻も現実のものとなる可能性が高くなっていると思います。

そういう意味で、ロシアによるウクライナ侵攻が客観的に見て、失敗だったという判断が下されるような結果になれば、ゼレンスキー大統領の功績は絶大だと思います。
今回のロシアによるウクライナ侵攻に対して、ゼレンスキー大統領は即座にSNSを通して国内外に向けて徹底抗戦の覚悟を示し、同時に国際社会に向けて説得力を持って協力を求めたのです。
その闘志、熱意、そしてウクライナを支援することが自国にとっても少なからずメリットになると世界各国を協力に向けて動かしたのです。
客観的に見れば、ゼレンスキー大統領は“覇権主義国による他国への不法侵攻に対する民主主義国の防波堤”となってくれたということになるのです。

いずれにしても国際社会には国連(国際連合)といった国際組織があり、法に基づいて問題解決を図ろうという仕組みがありますが、残念ながら現実には軍事力、あるいは経済力を背景に中国やロシアのような覇権主義大国は時として、いとも簡単にこうした国際法を無視して自国の目的を達成しようとします。
そして、残念ながら現在の国連にはこうした大国の暴挙を防ぐ有効な仕組みが備わっていないのです。

さて、以下のように日本も北方領土問題を抱えています。
外務省のホームページには以下の記述があります。(こちらを参照)

(1)日本はロシアより早く、北方四島(択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島)の存在を知り、多くの日本人がこの地域に渡航するとともに、徐々にこれらの島々の統治を確立しました。それ以前も、ロシアの勢力がウルップ島より南にまで及んだことは一度もありませんでした。1855年、日本とロシアとの間で全く平和的、友好的な形で調印された日魯通好条約(下田条約)は、当時自然に成立していた択捉島とウルップ島の間の国境をそのまま確認するものでした。それ以降も、北方四島が外国の領土となったことはありません。

(2)しかし、第二次大戦末期の1945年8月9日、ソ連は、当時まだ有効であった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、日本がポツダム宣言を受諾した後の同年8月28日から9月5日までの間に北方四島のすべてを占領しました。当時四島にはソ連人は一人もおらず、日本人は四島全体で約1万7千人が住んでいましたが、ソ連は1946年に四島を一方的に自国領に「編入」し、1948年までに全ての日本人を強制退去させました。それ以降、今日に至るまでソ連、ロシアによる不法占拠が続いています。(詳しくは「北方領土問題の経緯」のページを参照下さい。)

(3)北方領土問題が存在するため、日露間では、戦後70年以上を経たにもかかわらず、いまだ平和条約が締結されていません。

こうした現実から、日本もまさに終戦直前に今のロシア(当時のソ連)によるウクライナ侵攻と同様の多大な被害を被っていたのです。
残念ながら、当時の終戦時の日本には今回のウクライナのようにソ連の侵攻、および不法占拠に対抗するような余力はなかったのです。
また、当時の世界情勢から、また現在に至るまでソ連、現在のロシアによる北方領土の不法占拠に対して結果的に有効な対応がなされず、いまだに北方領土はロシアに不法占拠された状態が続いているわけです。
まさに国際社会の不条理と言えます。

ということで、小野寺元防衛大臣のご指摘の通り、日本は今回のロシアによるウクライナ侵攻を千載一遇のチャンスと捉えて、国を挙げて国際社会に向けて北方領土の返還を訴えるべきだと思うのです。
ウクライナと同様に日本の粘り強い、そして国際社会に向けた有効な発信力が国際社会を動かすことが出来るのです。
同様に、新疆ウイグルにおける人権問題に国際社会が注目しているこの機会に北朝鮮による拉致問題についてもあらためて国際社会に訴えるのも有効だと思います。
そういう意味で、現政権の外交力の真価が問われていると言えます。

 
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