2022年05月24日
アイデアよもやま話 No.5276 デパ地下食品を丸ごと冷凍食品化!
2月4日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でデパ地下食品の丸ごと冷凍食品化について取り上げていたのでご紹介します。 

コロナ禍において、巣ごもり需要で売り上げが好調な冷凍食品ですが、大手百貨店ではデパ地下の強みを生かして、全く新しいスタイルの冷凍食品を販売する試みが始まりました。
更に食品メーカーも電子レンジのある特性を生かした意外な商品を開発しました。

午前10時の横浜高島屋、地下の食品売り場、いわゆるデパ地下で今日(2月4日)から始まったのが冷凍食品の販売イベント、「凍眠」フードフェア、横浜高島屋の猿田文彦さんは次のようにおっしゃっています。
「通常、お惣菜は当日限りが多いんですけれども、冷凍にすることによりまして、製造から約30日持ちますので、好きな時に食べていただける。」

この冷凍食品にはある秘密があります。
普段同じフロアで売っている商品を凍らせて冷凍食品に変身させたのです。
このメロンパンは通常はベーカリースクエアで焼きたてで提供されているのですが、行列店のメニューを中心に普段と同じ価格で約60種類が並びました。
デパ地下の人気商品を丸ごと冷凍食品化、それを可能にしたのが「凍眠」と名付けられたアルコール液を活用した急速冷凍技術です。
株式会社テクニカンの津田谷英樹さんは次のようにおっしゃっています。
「−30℃のアルコール液体に浸していくと外側から白く凍っていきます。」
「この凍るスピードが普通の冷凍庫の20倍くらい早い。」
「早く凍ると食品へのダメージが少ないので美味しさを損なわない冷凍が出来ると。」

その冷凍技術は、今回商品を提供した店主たちからもお墨付きです。
尾島商店の小此木敬子店長は次のようにおっしゃっています。
「冷凍食品どうなんだろうなと、ちょっと不安もあったんですけども、食べてみたらびっくりするぐらい全く変わらないことにかなり驚きました。」

商品は電子レンジで3分温めるだけ、お皿に盛りつけるとどちらが冷凍か分からないほどです。
こちらのイベントは2月8日までですが、一部商品は継続して販売していく計画です。
猿田さんは次のようにおっしゃっています。
「手応えは非常に良いです。」
「デパ地下グルメを時代に合わせながらお客様に提供していくのがデパートの使命なのではないかなと思っております。」

コロナ禍の巣ごもり需要などを追い風に売り上げを伸ばしている家庭用冷凍食品市場、今年も右肩上がりが続くと見られています。

競争激化の中、冷凍食品大手の株式会社ニチレイフーズ(東京・中央区)はサプライズ商品を仕掛けます。
この春、新たに47種類の冷凍食品を投入しています。
中でも目玉商品が“冷凍”冷やし中華で、ニチレイフーズの蟹沢壮平さんは次のようにおっしゃっています。
「(“冷凍”冷やし中華は)電子レンジで調理をします。」

しかし、“冷凍”冷やし中華を電子レンジで温めてしまったら、冷たさが売りの冷やし中華にはならないのではないでしょうか。
なんと温めても麺が冷たい、その秘密は麺の上に載っているいくつもの氷、実はこの商品、電子レンジと氷のある特性を生かしているのです。
蟹沢さんは次のようにおっしゃっています。
「食品は温まり、氷は残るといった性質を利用しています。」

なぜ氷は電子レンジにかけても溶けにくいのでしょうか。
試してみると、水は湯気がでていますが、氷には変化がありません。
電子レンジはマイクロ波で水分子を振動させて温める仕組みです。
ただ氷は水分子が結合していて、ほとんど振動しないため温まらないのです。
ニチレイフーズは5年かけてこの仕組みを応用した冷やし中華を開発、特許申請中です。
蟹沢さんは次のようにおっしゃっています。
「冷凍食品を考えてきた我々だから出来た発想なのかなと思っていて、古くから積み上げている知見をしっかりと見つめ直して、(消費者にとって)何が大事なのか、どのようなお役に立てるのかというところにもう一度立ち返って商品をいく。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今回ご紹介した2つの冷凍食品について、それぞれの特徴を以下にまとめてみました。
(「凍眠」冷凍食品)
・「凍眠」と名付けられたアルコール液を活用した急速冷凍技術により製造から1ヵ月程度まで賞味期限を延ばせる
・従って、これまで輸出出来なかった食品の輸出が可能になる
・電子レンジで3分温めるだけでお皿に盛りつけるとどちらが冷凍か分からないほどである
・冷凍食品ではあるが、その味は全く変わらない

(“冷凍”冷やし中華)
・ニチレイフーズは5年かけて氷の性質を生かした冷やし中華を開発した
・冷凍のまま電子レンジで調理出来る

こうしてまとめてみると、これからの冷凍食品のあり方が以下のように見えてきます。
・「凍眠」技術により多くの食品の賞味期限を劇的に伸ばすことが出来る
・これまで冷凍食品としては不可能と思われていた食品もアイデア次第で可能に出来る

そして、こうした技術は間違いなく、私たちの食生活の選択肢を拡げ、更に食品ロス(参照:アイデアよもやま話 No.5254 食品ロス対策の最新状況!)防止対策としても大いに役立ちます。

なお、ニチレイフーズは5年をかけて“冷凍”冷やし中華を開発したといいますが、冷凍食品メーカーとしての新商品開発に賭ける大変な意気込みを感じます。
「凍眠」冷凍食品を開発したテクニカンも実現までにはかなりの試行錯誤を繰り返しただろうことは容易に想像出来ます。

やはり、ここで思い出されるのは、アイデアは既存の要素の組み合わせであり、発見するものであるということです。
しかし、アイデアを発見するのは一般的に容易ではありません。
更に発見後に開発し、実用化するまでには何年かかるか分かりません。
そうなると、大事なのは“ネバーギブアップ”精神です。
そして、こうした精神を持ち続けるためには、発見者には以下のような要件が備わっていることが求められるのです。
・並外れた好奇心
・並外れた金銭欲や名誉欲
・アイデアが実用化された時の社会的な貢献度の大きさの認識

ただし、ロシアによるウクライナ侵攻が未だいつ終息するか見通しが立たない中、またロシアのプーチン大統領が核兵器や生物・化学兵器の投入をちらつかせている中において、社会的に悪影響をもたらしたり、人類の存続に係わるような兵器の発明、あるいはその使用には何らかのかたちで歯止めがかけられるような仕組みの必要性をとても感じます。

 
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