2022年05月15日
No.5268 ちょっと一休み その825 『中国の全人代は本当に国民の代表?』
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)については、これまでアイデアよもやま話 No.4953 見習うべき中国の変異ウイルス対応!などで触れてきました。
その全人代ですが、本当に中国の国民の代表による大会と思われている方々も多いと思います。
ところが、そうではないのです。
私もしばらく前まではそう思っていましたが、たまたまそうではないことに気づきました。
ウィキペディアによると、全人代について以下の記述があります。

全国人民代表大会は立法権を行使する他に国家の最高権力機関として、行政権・司法権・検察権に優越する。中華人民共和国主席(国家元首)・副主席・国務院(最高行政機関)・国家中央軍事委員会(最高軍事指導機関)・最高人民法院(最高司法機関)・最高人民検察院(最高検察機関)の構成員は全人代によって選出され、全人代に対して責任を負い、その監督を受ける。

全人代は省・自治区・直轄市・特別行政区の人民代表大会及び中国人民解放軍から選出された代表(議員)によって構成される。一般国民(公民)が代表を直接選挙するのではない。一般国民が直接選挙できるのは、県級以下の人民代表大会のみであるため、全人代代表の選出は間接選挙となる。人民代表選挙は中国共産党によって指名された候補に対する信任投票となることが多いが、県級以下の直接選挙では複数の候補から選択する「差額選挙」が行われることもある。いずれにせよ指導政党である共産党の原則的方針から根本的に逸脱する者が人民代表に選出されることはない

要するにプロジェクト管理と日常生活 No.690 『中国式“法治”の脅威!』でもお伝えしたように、中国では“まず中国共産党ありき”で中国共産党が全てに超越する存在で、憲法よりも上にあり、憲法も法律も全ては中国共産党の存続のための道具という位置付けなのです。
ですから、当然のことながら人民代表も中国共産党の方針に賛成する人物に限られるということなのです。
ということで、中国の全人代の人民代表の実態は民主主義国でいうところの国民代表とは全く別物であり、中国共産党独裁政権の展開する方針や施策を忠実に実行するための手段なのです。
習近平政権はこうした実態を“中国式民主主義”(こちらを参照)と称していますが、欧米や日本のような民主主義国の民主主義とは似て非なるものなのです。

今や、こうした中国本土での国家統治方法は香港においても展開されようとしています。
5月9日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で香港政府のトップを決める香港行政長官選挙について取り上げていたのでその内容の一部をご紹介します。 

5月8日に行われた香港政府のトップを決める香港行政長官選挙で当選したのは警察出身で民主派への強硬姿勢で知られる李家超さんです。
これにより香港では更に統制が強まるのではないかと懸念されています。
李次期行政長官は次のようにおっしゃっています。
「内外からのリスクと破壊行為から(香港を)防御する。」
「香港の全体的な安定を保障する。」

香港の新たな行政長官に選ばれた李さん、香港政府のトップとしては初めての警察出身で、2019年の反政府デモを抑え込み、民主派寄りのメディアの締め付けを主導した人物です。
今回、唯一の立候補者で、中国政府の支持を受け、圧倒的多数の支持を得て当選しました。
しかし、香港市民から歓迎の声はあまり聞こえてきません。

香港で昨年、中国主導で選挙制度が見直され、中国に批判的な勢力は立候補出来なくなりました。
また、一般市民に投票権が無く、親中派を中心とする選挙委員による投票のみで実施されたため、民意を反映したとは言い難い選挙なのです。
こうした状況について、現代中国研究者で神田外語大学の興梠一郎教授は次のようにおっしゃっています。
「行政長官は突出した存在ではなくなり、あくまでも中央政府の意向を受けて動く人と。」

G7、主要7ヵ国の外相は、9日、中国の後押しを受けた唯一の候補者の李家超さんが当選したことに関して選挙プロセスに“重大な懸念”があるとの声明を発表しました。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

いかがですか。
こうした今の香港の状況においては、“民主の女神”と言われた周庭さん(こちらを参照)たち、民主活動家の方々の居場所はないのです。

 
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