2022年05月07日
プロジェクト管理と日常生活 No.744 『今更ですが、今年の世界の「10大リスク」を見ると・・・』
1月10日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で今年の世界の「10大リスク」について取り上げていたのでご紹介します。 

こちらはアメリカのリスク調査会社、ユーラシア・グループが発表した今年の世界の「10大リスク」です。
その中で3位に入りましたのが11月8日に行われますアメリカの中間選挙です。
この「10大リスク」を作成したユーラシア・グループの代表で国際政治学者のイアン・ブレマーさんは今年の中間選挙がアメリカの「歴史の転換点」になると予測しています。
バイデン大統領は1月6日の演説で次のようにおっしゃっています。
「私はアメリカを守る。」
「民主主義を脅かす者は許さない。」

バイデン大統領に対してアメリカ国民の審判が下ることになる今年の中間選挙、ブレマーさんは共和党が勝利すると予測します。
その理由について、次のようにおっしゃっています。
「バイデン大統領は79歳で動きが鈍く、支持率は非常に低い。」
「90〜95%の確率で共和党が下院を制し、上院はかなりの接戦になるだろう。」
「共和党の勝利はトランプ氏の再出馬を後押しするだろう。」

もし中間選挙で共和党が勝利すれば、2年後の大統領選挙に向け、トランプ氏が再び勢いづくと指摘するブレマーさん、そのうえでトランプ氏が大統領選で負けた場合、深刻なシナリオが待っているといいます。
「大統領選挙の結果は上院と下院がそれぞれ認定することになるが、(中間選挙の結果次第では)上院と下院で異なる結果が認定される可能性がある。」
「その場合、共和党と民主党の間で誰が大統領になるか取引が行われる。」
「つまり選挙制度自体が崩壊する。」

仮に中間選挙で上院と下院の多数派が民主・共和で別れた場合、それぞれが別の候補者を大統領として認定する可能性があり、アメリカの選挙制度が崩壊するというのです。
実際、前回の大統領選挙でもバイデン氏勝利の認定を阻止しようと暴徒化したトランプ氏の支持者たちが議事堂内に乱入するという、前代未聞の事態に陥りました。

しかし、これを上回る最悪のシナリオもあります。
それは大統領職の“奪取”です。
ブレマーさんは次のようにおっしゃっています。
「共和党が(上下院で)多数派となり、トランプ氏が大統領選に負けた場合、トランプ氏が大統領の座を盗む可能性が高い。」
「つまり民主党の候補者が勝ったのに、トランプ氏が大統領になってしまうのだ。」
「その場合、民主党の候補に投票した州は大統領の正当性を認めないだろう。」
「抗議者の自治区設立や暴力的デモが頻発し、軍が介入する可能性もある。」

仮に今回の中間選挙で共和党が上下両院で勝利した場合、トランプ氏が大統領選挙の結果に係わらず大統領の座を盗み取ることも現実味を帯びるというのです。
ブレマーさんは次のようにおっしゃっています。
「アメリカの歴史上で最も重要な中間選挙になる。」
「トランプ氏が共和党の大統領候補になれば、2024年はかつてないほど危険でアメリカにとって歴史的な転換点になるだろう。」

さて、「10大リスク」の1位は中国のゼロコロナ政策の失敗ですが、これについて解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「注目したいのは、今、都市封鎖の対象になっている西安市の状況なんですね。」
「これはイギリスのBBCが報じているところなんですけれども、真夜中に自宅から連れ出されてバスで隔離施設へ送られていく、こういうような問題さえ出ているんですね。」
「(これが世界のリスクになっていくということなのかという問いに対して、)中国発のサプライチェーンが寸断されてしまうリスク、ここは日本への影響も無視出来ないと思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、5月1日(日)付けネット記事(こちらを参照)で中国のゼロコロナ政策の近況について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・全世界で累計620万人以上が死亡した新型コロナウイルスに関し、中国と米欧などの対応が大きく二分している。
・「ゼロコロナ」政策を堅持する中国が上海など各地でロックダウン(都市封鎖)を続けるのとは対照的に、米欧や韓国では、ワクチンの普及などで危機的状況を脱したとの認識が広がる。一方、ウイルスの変異やワクチン効果の低減による再流行への懸念も依然として根強い。
・中国全土の1日あたりの新規の市中感染者数は4月には、無症状を含めて連日おおむね1万人超の水準。湖北省武漢で感染が拡大した2020年2月以来の流行期にあり、中国最大の経済都市・上海では3月末からロックダウンが続く。
・習近平国家主席はゼロコロナ政策の継続にこだわり、4月29日に主宰した共産党の会議で「堅持し、人民の生命と健康を最大限守らなければならない」との方針が強調された。習氏の長期体制を目指す党大会を控え、抜本的な方針転換は求心力の低下に関わるという事情がうかがわれる。
ただ、中国の感染症対策の第一人者である鍾南山(しょうなんざん)氏は4月上旬、経済・社会の正常化のためにはゼロコロナ政策を「長く続けることはできない」と指摘する論文を発表。中国経済の減速懸念が増す中、習政権にとり「脱ゼロコロナ」は難題となっている。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

こうして見てくると、「10大リスク」の中でロシアが5位に入っています。
これを作成したブレマーさんもさすがにロシアによるウクライナ侵攻が2月24日に開始されたことについては想定外だったと思います。
今現在、ロシアによるウクライナ侵攻が人類にとって、その存続を左右する最大のリスクの顕在化だと思います。

しかし、1位の中国によるゼロコロナ政策の行方も無視出来ません。
習近平国家主席は自らの威信にかけて、この政策を全うさせるつもりのようなので、中国経済の停滞、更には中国におけるサプライチェーンの寸断の世界的な影響により国際経済の停滞の顕在化をもたらしつつあります。
こうした経済の停滞は国民の暮らしに影響を及ぼし、国民のストレスを高めます。
こうした国民感情が増していくと、各国の国民の気持ちはウクライナに侵攻しているロシア、あるいは世界的な経済の停滞の一因であるゼロコロナ政策によるサプライチェーンの寸断をもたらしている中国にストレスの矛先が向いてくる可能性が高まります。

更に3位のアメリカの中間選挙について、ブレマーさんは共和党が勝利すると予測しています。
そして、その結果、最悪のシナリオとして、トランプ氏が大統領選挙の結果に係わらず大統領の座を盗み取ることも現実味を帯びるとブレマーさんは予測しています。
この予測が的中すれば、最悪の場合、アメリカ国内は“トランプ派”、および“反トランプ派”に分かれ、現代版“南北戦争”の様相を呈してきます。

こうした状況が現実になれば、民主主義陣営の国々の結束が弱まり、世界は混とんとして誰もが予測不能のとても不安定な、そして“あるべき社会”とはかけ離れた社会になってしまいます。

では、私たち一人ひとりがこうしたリスクの顕在化を防ぐためにはどのような対応策が考えられるでしょうか。
以下に私の思いついたことをまとめてみました。
・自由、平等、人権、平和といった基本的な価値観の尊重を絶えず心掛けること
・フェイクニュースに振り回されず、何が真実かを見極めて物事を判断すること
・リスクは早期にその芽を摘むことが鉄則であること

 
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