2022年04月30日
プロジェクト管理と日常生活 No.743 『尖閣諸島問題において中国に反論出来ない日本!』
未だにロシアによるウクライナ侵攻は停戦を迎えることなく、ロシア軍に包囲されたウクリアナ南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所で立てこもりを続けるウクライナ軍の兵士、および民間人は食料不足で餓死寸前と報じられています。
そうした中、2020年11月30日(月)付けネット記事(こちらを参照)で「尖閣諸島問題において中国に反論できない日本」をテーマに取り上げていたのを思い出したのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・王毅外相が尖閣を中国の領土としたのに対して日本がその場で反論しなかったことを中国は外交勝利と狂喜している。GDP規模が2025年にはアメリカの9割に及ぶとしたIMF予測を背景に中国は強気に出たのだ。
・11月24日、中国の王毅外相は茂木外相と会談し、会談後の記者会見で「最近、一部の正体不明の日本の漁船が釣魚島(尖閣諸島)のデリケートな海域に侵入している。中国はそれに対して必要な対応をするしかない。この問題に関する中国の立場は非常に明確で、われわれは今後も引き続き中国の主権を守っていく」と述べた。
・これに対して茂木外相はその場で反論することもなく、日中外相会談は有意義で喜ばしいものであったという趣旨の冒頭に述べた感想を否定もしていない。
・実際の会談では日本は尖閣問題に関して「遺憾の意を伝え」かつ「改善を強く求めた」と言い訳しているが、中国側に百万回「遺憾の意」を伝えたところで中国はビクともしないし、「改善を強く求めた」と言ったところで、中国側は「中国の領土領海に日本の漁船らしきものが不当に侵入してくるのはけしからんことで、これを追い払うのは中国の当然の権利であり、追い払う際に船舶の衝突が起きないような海上のメカニズムだけは整えてもらいたい」という姿勢でしかない。
・25日には菅総理とも会談したが、尖閣諸島問題に関して、やはり「中国側の前向きの対応を強く求めた」としているだけで、日本側は誰一人「尖閣諸島を中国の領土などと言うのでしたら、どうぞお帰り下さい。会談はここまでに致しましょう」とは言っていない。
・実はIMF(国際通貨基金)のGDP予測によると、2020年の中国のGDPは前年比1.9%増で、主要国・地域の中で唯一のプラス成長になることが報告されている。さらに中国にとって大きいのは、GDP規模が2025年までにアメリカの約90%にまで達するというデータが出されたことだ。
・中国では2030年までに「中国はアメリカを追い抜く」と計算し意気込んでいる。
・この予測値を背景に、王毅は日本に乗り込んできたわけだ。
・王毅外相が茂木外相などと会談している真っ最中に、李克強総理は「1+6」円卓会談を開き、世界銀行やIMFあるいはWTOなど6つの金融や貿易あるいは労働問題などの国際組織の長と「中国が中心になって」話し合っていたのである。中央テレビ局CCTVは、各国際組織の長が「コロナ禍をいち早く脱却した中国が世界経済をけん引していく」と褒めちぎる顔を大きく映し出していた。
・日本の現在の「嫌中度」は、(一部の)政治家を除けば世界一なので、メディアも「専門家」も、日本国民の感情に心地よいメッセージを発信し続ける傾向にある。
・敵(中国)は「日本を取りに来た」のだ。尖閣諸島における中国の横暴を既成事実化して日本が反論しなかったことを以て「日本が中国の領有権を認めた」とみなし、その上でTPP11への加入交渉を中国に有利な方向に持って行こうとしている。
・王毅外相は「中国に反論できない日本」を確認しに来たのである。
だからオンラインではなく、このコロナ禍でもリアル空間に現れ、日本の無様(ぶざま)と自分の「勇ましい晴れ姿」をきちんと計算した映像として世界に知らしめたのである。
日本政府もメディアも「専門家」たちも、そのことに目を向けるべきではないだろうか。

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

更に記事の要点に絞って以下にまとめてみました。
・GDP規模が2025年にはアメリカの9割に及ぶとしたIMF予測を背景に中国は強気の外交を展開していること
・また中国では2030年までに「中国は(GDPで)アメリカを追い抜く」と計算し意気込んでいること
・こうした状況を背景に、2020年11月24日、中国の王毅外相は茂木外相と会談し、尖閣を中国の領土としたのに対して茂木外相はその場で明確に反論しなかったこと
・王毅外相は2020年11月25日には菅総理とも会談したが、尖閣諸島問題に関して菅総理もやはり「中国側の前向きの対応を強く求めた」としているだけで強い口調で反論しなかったこと
・中国は尖閣諸島における中国の横暴を既成事実化し、日本が反論しなかったことを以て「日本が中国の領有権を認めた」と見なし、その上でTPP11への加入交渉を中国に有利な方向に持って行こうとしていること

確かに今や、日本は中国に比べて経済的にも軍事的にも劣っていますが、だからと言って外交で中国に弱腰のところを見せてしまえば、中国の“思うつぼ”になってしまいます。

これまで何度となく繰り返しお伝えしてきたように、リスク管理の要諦はリスクが小さいうちにリスクが大きくならないように対応策を実施することなのです。
ですから、今回ご紹介したような日本政府の弱腰外交の積み重ねはやがて尖閣諸島における中国の領有権を現実化させてしまうことになるのです。
しかし日本独自で中国に対抗することは実効性を伴いません。
そこで、日本にとって尖閣諸島リスクに有効な対応策を以下にまとめてみました。
・国連のような国際機関に中国の横暴について強く訴えかけること
・更に今回のロシアによるウクライナ侵攻の再発防止策として、有効な仕組みの構築を国連に強く訴えかけること
・日米軍事同盟をベースに民主主義陣営の国々と一体となって中国やロシア、北朝鮮のような独裁国家に対峙していくこと

こうした有効な対応策に取り組み続けなければ、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに中国は今後増々世界的な覇権主義の展開を図り、北朝鮮は核兵器開発をどんどん進め、どちらも日本の国家安全保障を脅かす存在へと突き進んでいくことになるのは間違いありません。

ということで、まず国際社会はウクライナの国民が大変な苦しみから解放されるように停戦を働きかけ、その次にはこうした覇権国による他国への侵攻を抑止するような国際的な再発防止システムを構築することが求められるのです。
同様に、覇権国が使用をちらつかせる生物・化学兵器や核兵器の廃絶に向けて取り組むことも、人類の存続にとって必須なのです。
なぜならば、今回のロシアによるウクライナ侵攻でも、もしロシアが核兵器を使用することがあれば第三次世界大戦に発展する可能性が非常に高まるからです。

 
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