2022年04月08日
アイデアよもやま話 No.5237 やはりロシアでも中国と同様の報道規制が起きている!
これまで国による報道規制については、中国における香港国家安全維持法の施行により廃刊に追い込まれた香港の人気大衆紙「リンゴ日報」でお伝えしました。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.700 『香港「リンゴ新聞」を廃刊に追い込んだ中国の横暴さ!』
そうした中、ロシアでも同様の事態が起きているのです。
3月28日(月)付けネット記事(こちらを参照)でロシアのリベラル系紙「ノーバヤ・ガゼータ」の発行停止について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・編集長のドミトリー・ムラトフ氏が2021年のノーベル平和賞を受賞したロシアのリベラル系紙「ノーバヤ・ガゼータ」は28日、ロシアによるウクライナへの「特別軍事作戦」が終了するまで新聞発行を停止すると発表した。ウェブサイトでの記事掲載も見合わせる。
・記事内容について当局から警告を受けたためで、メディア規制強化の影響を受けた形だ。
・ムラトフ氏は今回の侵攻開始後、「戦争反対」を呼びかける声明を発表。22日にはウクライナの難民支援のためにノーベル平和賞のメダルを競売にかける考えも表明した。
・ノーバヤ紙は、露軍の活動に関する「虚偽情報」を罰する法改正が成立して以降、侵攻関連の報道を一時止めたが、その後は露軍の制圧したウクライナ南部のルポや政府系テレビのニュース番組で反戦を訴えた女性編集者のインタビューを掲載するなど、政権に批判的な報道を続けていた。
・ロシアの独立系メディアを巡っては、当局によってサイトを遮断されたラジオ局「モスクワのこだま」が解散、インターネット放送局「ドーシチ」が放送を中断するなど、ウクライナ侵攻後に活動を停止する動きが広がっている。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

やはりロシアでも今回のウクライナ侵攻に伴い、中国と同様のメディアへの規制強化が起きてしまいました。
No.5016 ちょっと一休み その784 『世界報道自由度ランキングで気になる日本の順位!』でもお伝えしたように、独裁政権の国、あるいは政情不安の開発途上国では報道の自由度が低い傾向があります。
そして、プロジェクト管理と日常生活 No.690 『中国式“法治”の脅威!』でもお伝えしたように、中国においては中国共産党が全てを超越する、憲法よりも上位の存在なのです。
要するに憲法や法律は全て中国共産党政権が存続するための手段なのです。
今のロシアはまさにプーチン大統領政権が憲法よりも上位の存在なのです。
しかし、報道で知る限り、どうも中国の方が規制の徹底度合いが厳しいようです。

さて、これまで何度となく繰り返しお伝えしてきたように、どんな政権の国においても“自由”、“平等”、“人権”、“民主”といった価値観の尊重が重視されるべきなのです。
そうした時に、報道の果たす役割は極めて重要です。
というのは、自由な報道により私たち国民一人ひとりは国内外で起きている出来事のより真実に近い内容を認識することが出来るからです。
また、一つの出来事について、その解釈は報道する側の価値感によって、またどの視点に立つかによって内容が異なってきます。
こうした多様な見方があることを認識することによって、私たちは多角的な視点から物事に向き合うことが出来るのです。

なお、今もロシアによるウクライナ侵攻は続き、世界中から報道記者がウクライナの現地に赴き、日夜取材に取り組んでおります。
そして、不幸にして取材中にロシア軍の攻撃に遭い、亡くなった記者の方々もいらっしゃいます。
それでも、こうした記者の方々は「自分たちが現地に出向き、現実の状況を伝えなければ」という義務感で必死に頑張っておられるのです。
ですから、私たちはテレビなどの報道機関を通して、生々しい現地の戦闘状況を垣間見ることが出来ているのです。
以前にもお伝えしたように、報道記者や報道機関は私たちが冒頭の価値感を持ち続ける上でなくてはならない存在なのです。
感謝、感謝です。

一方、今回のロシアによるウクライナ侵攻に伴うロシア政府による報道規制は物事を考えるうえで大切な真実を歪めてしまい、政府の意向に沿った判断を国民に強制することになります。
更にロシア政府は報道規制をする一方で、自らにとって都合のいい偽の情報も拡散させています。
一方で、この真実を知った一部の人たちは真実と偽りの報道の狭間で悩んでしまい、その中の一部の人たちは偽りの報道を社会に向けて発信し、政府による法律を捻じ曲げた運用により、犯罪者として扱われてしまうのです。

こうして見てくると、今回のウクライナ侵攻を例に取ると、勿論最大の被害者はウクライナの国民ですが、国民という視点に立つと、ロシアの国民もプーチン政権による覇権主義の犠牲者と言えます。
なぜならば、報道規制により、多くのロシア国民はプーチン政権に都合の良い報道しか目に触れることが出来ないので、歪んだ判断しか出来ないからです。
こうした状況からアイデアよもやま話 No.5215 生け捕ったロシア軍を解放するウクライナ!でもお伝えしたようにプーチン大統領の支持率は69%でウクライナ侵攻前よりも高くなっているのです。
なお、4月2日(土)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)によれば、プーチン大統領の支持率は更に83%にまで上がっています。(民間の世論調査機関「レバダセンター」の調査 3月24日〜30日)
この調査結果について、慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は次のようにおっしゃっています。
「(プーチン大統領の支持率の急上昇について、)非常に驚きを持って受け止めております。」
「この調査が政府系の調査機関が行ったということであれば、その数が偽造されている可能性は高いわけなんですけども、独立系のレバダセンターが出している数字は極めて信頼のおける数字でありますので、いかにプロパガンダ(特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った行為)が国内に浸透しているか如実に示していると思います。」
「(この国民の支持の感情について、)愛国心に満ちたような状態になっていると思われまして、2014年のクリミヤ併合直後の熱狂に似たような感情になっていると思われます。」

さて、もし世界中の国々のより多くの国民がこうした政府による報道規制や偽の情報の拡散の中で暮らせば、“間違いだらけの社会”になってしまいます。
そして、どの国の政権も大なり小なり、自らに都合の悪い情報は隠したがる傾向があります。
こうした傾向を食い止めるために、報道の自由はとても重要なのです。

では、世界中のより多くの人たちが“健全な社会”の実現、そしてその維持をしていくためにはどのようなことが求められるでしょうか。
一言で言えば、私たち一人ひとりのつながり、すなわち“万民の連帯”だと思うのです。
どんな政権の国であっても、“自由”、“平等”、“人権”、“民主”といった普遍的な価値観を破壊する政権に対しては、世界中の万民が連帯し、大きな声を発し続けることが各国の政府の政策の軌道修正をもたらす大きな効果があるのです。
今回のロシアによるウクライナ侵攻においても、“万民の声”が各国の政府を動かし、更にウクライナのゼレンスキー大統領や国民を勇気づけているのです。
その結果、プーチン大統領の当初の目論見も転換させつつあるのです。
更に中国の習近平国家主席の覇権主義にも軌道修正をもたらすと期待出来ます。
またアメリカのバイデン大統領がロシアによるウクライナ侵攻前に「アメリカ軍をウクライナに派遣することはない」と明言されていますが(こちらを参照)、こうした背景には世論調査の結果(3月27日(日)放送の「時論公論」(NHK総合テレビ)で示されたこちらのグラフを参照)では62%の国民が「米ロの衝突回避をして、限定的な支援にとどめるべきだ」という意見があるのです。
要するにアメリカ国民の多くの声がバイデン大統領に米ロの衝突回避に向けた発言をさせているのです。

このように見てくると、単純にプーチン政権を倒すというのではなく、ロシア国民の視点にたって、いかにロシア国民を歪んだ報道から解放するかといったような国際的な政策が求められるのです。
そして、こうした政策も“万民の声”が大きくなることによってその取り組みを加速させることが出来るのです。
ですから、世界中の万民はこうした自覚を持つことがとても重要であり、そのことを自覚すべきなのです。
しかし、現実はそれほど甘くなく、中国やロシアのように自由な報道や発言が禁止されている国もあります。
ですから、一部のこうした勇敢な報道機関や個人をその国の政権から救うためにも万民が団結して“あるべき社会”の実現に向けて、その声をより大きくすることがとても重要なのです。

繰り返しになりますが、どのような国家体制においても、“自由”、“平等”、“人権”、“民主”といった普遍的な価値観を共有すべきなのです。
しかし残念ながら、今回のロシアによるウクライナ侵攻により、現実は帝国主義時代へと逆行するきっかけになろうとしているのです。
ですから、是が非でも“万民の声”で各国の政府を動かし、速やかにロシアによるウクライナ侵攻を休戦させ、プーチン政権に高い代償を求めることがとても重要なのです。
逆に、もしプーチン大統領が満足するような終結を迎えれば、次は中国による台湾侵攻も起きる可能性が高まるのです。

 
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