2022年03月26日
プロジェクト管理と日常生活 No.738 『日本のEVも”ガラパゴス化”をたどる!?』
これまでEV関連についてはいろいろとお伝えしてきました。
そして、今やモーターショーでもEVが主役的な存在となっています。(参照:アイデアよもやま話 No.5223 今やモーターショーの主役はEV!?
そうした中、昨年12月10日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で日本のEVを”ガラパゴス化”の観点から取り上げていたのでその一部をご紹介します。

“脱炭素”への流れが加速する中、日本でもEV、電気自動車の普及が進んでいます。
政府はEVの充電インフラの拡充のために2021年度の補正予算で65億円を計上しています。
一方、アメリカではインフラ投資法で充電インフラに約8500億円を投資する計画があり、日米の差は歴然です。

番組では、環境に優しく、燃料費が安いのでEVを購入した方、および充電インフラがまだ整っていないのでEVを購入しないという両方の街の声を取材していました。
そうした中、解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「日本は普通充電器が圧倒的に多くて、安いからなんですよね。」
こちらにありますけど、新車のEVの比率、ヨーロッパや中国は既に2桁になっていますね。」
「で、日本はアメリカと同じで1%台ということで、まだまだ普及していない。」
「その理由は燃費性能が高いハイブリッド車が日本の場合は普及して、EVが中々広がらないということがあるんですよ。」
「これからはちょっと先の話なんですけど、ヨーロッパは一番進んでいて、2035年にガソリン車を全面禁止、中国は2035年に50%以上、ここはハイブリッド車も一応優遇するクルマとして認めているということですね。」
「アメリカは2030年に50%以上ということで、ここもハイブリッド車はダメ。」
「日本は全てを含んだグリーン化というか、電動車ということで2035年に100%です。」
「ハイブリッド車の王者というとトヨタ自動車なんですけど、先日アメリカで大規模なEV向けの充電器の工場を立ち上げると発表していました。」
「海外はEVが主流になりますから、それぞれの国で日本のメーカーも取り組んでいくということになります。」
「日本は冒頭からありますように、急速充電装置を国の主導で早く立ち上げることが大事だと思います。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

まず、先ほどの表を見ると、原田さんも指摘されているように、新車のEV比率から見ると明らかにヨーロッパと中国がEV化に向けて、先行しております。
そして出遅れているアメリカと日本とでは、政府による充電インフラへの投資の差は歴然です。
更に2035年の比較でも日本だけはハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、そしてEVを合わせて100%という目標からするとEV化に向けて他国に比べて遅れた状態が続いていると見込まれます。
要するに、EV化に向けて、明快な方針が無く、かつて携帯電話で日本が世界で先行していたにも係わらず、”ガラパゴス化”してしまったように、EVでも同様の動きが感じられるのです。
その大きな要因は、原田さんも指摘されているように、また以前お伝えしたようにハイブリッド車、およびプラグインハイブリッド車で日本が世界で先行し、今もリーダー的な存在ですが、このことが“EVシフト”の阻害要因となっているのです。
更にSDGs(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)の観点からも“EVシフト”は避けられません。
また、こうした状況から、特にヨーロッパの自動車メーカーはハイブリッド車、プラグインハイブリッド車で日本との真っ向勝負を避けて、一気に“EVシフト”を図り、主導権を取ろうとしているという戦略のようです。
さらにこうした流れと符合するように、ヨーロッパではEV以外は輸入車も含めて国内での販売を禁止する動きがあります。(こちらを参照)

なお、以前にもお伝えしたように、客観的に見てEVにはガソリン車にはない以下のようなメリットがあります。
・太陽光など再生可能エネルギー発電で得られる電気を搭載するバッテリーに蓄えることにより走行出来る(参照:アイデアよもやま話 No.5222 年間1800km分をEVのルーフで発電!
・充電給電装置を導入すれば、EV搭載のバッテリーを家庭用電源として利用出来、更には災害などによる停電時には非常用電源として活用出来る
・更に砂漠、あるいは山中の一軒家など、世界中のどこでもEV、再生可能エネルギー発電、充電給電装置、および家庭用バッテリーのセットが導入されれば、エネルギーフリーの暮らし、およびカーライフを手に入れられる
・更にこれらをスマートグリッドでつなげれば、地域ごとに電力需給バランスを最適なかたちでコントロール出来るようになる
・こうしたニューライフスタイルはまさにSDGsのゴールを達成するビジネスのニューフロンティアである

幸いにして、日本はこうした一連の製品技術においては、世界のトップグループにおります。
ですから、今回ご紹介したようなハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、あるいは燃料電池車というクルマの枠を超えて、“エネルギーフリーの暮らし、およびカーライフ”を目指して国を挙げて一気に世界をリードする存在を目指して欲しいと思います。
なお、こうした暮らしが実現出来れば、少なくとも化石燃料の供給不足や値上がりに一喜一憂しなくて済むようになります。
また、こうした技術の結集により海外展開を図れば、途上国を短期間で先進国並みの暮らしに引き上げることが出来るのですから、日本は途上国から大いに感謝される存在になり得るのです。

ということで、日本のEVの”ガラパゴス化”リスクの究極の対応策は“エネルギーフリーの暮らし、およびカーライフ”の提唱、および実現ということになります。

こうしてみてくると、もしトヨタ自動車がハイブリッド車の次に上記のようなビジョンのもとに一気にEVシフトに取り組んでいれば、世界の自動車市場においてテスラ(参照:No.4854 ちょっと一休み その757 『 テスラの株式時価総額がトヨタの2倍以上に』)以上の存在感を示し、今の電動車の世界的な普及状況はガラリと変わっていたはずで、とても残念に思います。
トヨタ自動車は潜在需要を睨んで適切なクルマづくりに取り組むと言われていますが、上記のようなビジョンのもとにEV化を進めていれば、今頃少なくとも世界中の大富豪、あるいは途上国ではEVにおいて圧倒的なシェアを獲得していると思うのです。

自動車メーカーはもっと上記のようなEVの特質を生かして、単なる移動手段ではない活用方法を念頭に置いてクルマの開発のみならず販売に取り組むべきなのです。

 
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