2022年03月17日
アイデアよもやま話 No.5218 増え続ける中国の”債務の罠”にはまる途上国!
これまで中国による“債務の罠”に陥った国々について、以下のようにお伝えしてきました。

No.4458 ちょっと一休み その690 『「米中対立の世界」その先は?』

アイデアよもやま話 No.4503 中国の経済進出は曲がり角に来ている!?

そうした中、昨年12月2日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でラオスを中心に同様のテーマについて取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

中国とラオスの首都、ビエンチャンを結ぶ高速鉄道が明日つながります。
ラオスにとっては中国への輸出や観光客の誘致といったメリットがあります。
中国にとっては“一帯一路”構想の具体化で、最終的にはASEANを通ってシンガポールまでつなぐ構想だったのです。
解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「今回の建設費はラオスのGDPの3分の1に相当するんですよ。」
「借金の多くが中国からの借入金で、IMFも借金依存に警告を発しているんです。」
「(中国から融資を受けた国、つまり借金を抱えている国は非常に多いんですが(こちらを参照)、)アメリカのシンクタンクの分析なんですけど、中国政府への債務、それから中国企業への債務、これを両方合わせるとラオスの中国への依存度はGDPの64%に達している。」
「一番多い国と見られていますれている。」
「政府は借金を計画的に返せると言ってるんですが、他にも似たような国がこれだけあるわけですね。」
「(これがいわゆる中国に対して“借金漬け”になってしまって、返済が滞ってしまった場合は没収されたりするというような“債務の罠”なのかという問いに対して、)」そうです。
「例えば、こちらにありますけど(こちらを参照)、スリランカでは港湾施設の建設費が返せなくて、中国企業が99年間貸与ですけど、事実上接収する事態になっていますね。」
「ギリシャのコンテナふ頭の運営も中国企業が握りましたし、ジブチでは中国軍の基地まで出来ているということですね。」
「(こうした中国の動きは世界が疑念を示してはいるわけですけども、日本はどのように関与していったらいいかという問いに対して、)日本は医療や農業といった技術分野の人的な貢献、ここに強みがあるんですね。」
「ですから、中国とは違ったやり方で日本の援助政策を展開すべきだと思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

中国とラオスの首都、ビエンチャンを結ぶ高速鉄道について、ラオスと中国の視点から以下にまとめてみました。
(ラオス)
・中国への輸出や観光客の誘致を増やす期待効果がある
・今回の建設費はラオスのGDPの3分の1に相当する
・借金の多くが中国からの借入金で、IMFも借金依存に警告を発している
・中国政府、および中国企業への債務を合わせるとラオスの中国への依存度はGDPの64%に達する
・政府は借金を計画的に返せると見ているが、中国に対して“借金漬け”になり、“債務の罠”にはまるリスクがある

(中国)
・一帯一路構想の具体化
・最終的にはASEANを通ってシンガポールまでつなぐことが狙いである

それにしても、いくらラオス政府が中国からの借金は計画的に返せると言っても、今回ご紹介した高速鉄道の建設費がGDPの3分の1に相当し、中国への依存度がGDPの64%に達するという状況は国の政策として無謀のように思えます。

なお、一帯一路構想について、ウィキペディア(こちらを参照)には以下の記述があります。
・中華人民共和国が2017年から推進し続け、中国と中央アジア・中東・ヨーロッパ・アフリカにかけての広域経済圏の構想・計画・宣伝などの総称を指す。
・習近平中国共産党中央委員会総書記が2013年9月7日、カザフスタンのナザルバエフ大学における演説で「シルクロード経済ベルト」構築を提案したことに始まり、翌2014年11月10日に中国北京市で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で習総書記が提唱した。
・中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画である。

このように一帯一路構想の本来の目的は対象地域のインフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進することにあるのです。
しかし、これまでの事例からすると、今回のラオスも含めて、以下のような中国の隠れた意図が感じられます。
・対象とする途上国を“債務の罠”にはめて、港湾施設など各国の社会インフラを支配したり、中国軍用の基地を建設したりすること
・一帯一路構想の対象地域全体を中国の支配下に置くこと
・国連における支配力を強めること(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.666 『国連の専門機関の支配権を強める中国!』、およびプロジェクト管理と日常生活 No.718 『ウイグル人の人権を巡る国連での米中支持の驚くべき割合!』

ということで、中国の進める一帯一路構想の進展については途上国のみならず、民主主義陣営の国々も注意を要するのです。
また、一方で、原田さんも指摘されているように、日本も含めた民主主義陣営の国々も中国とは違ったやり方で本来の目的達成を目指して途上国の援助政策を展開すべきなのです。

 
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