2022年02月19日
プロジェクト管理と日常生活 No.733 『歩くと保険料が割引に!』
昨年10月29日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で歩くと保険料が割引になるサービスについて取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

コロナ禍で見直された“お散歩”、靴小売り大手のABCマートやアシックスではウォーキングシューズは前年同期比で売り上げを大きく伸ばしています。
また、歩くモチベーションにつながるとして、加入者を増やしている商品もあります。
住友生命保険が3年前に始めた保険「Vitality」(こちらを参照)です。
バイタリティ推進室の梅村好美さんは次のようにおっしゃっています。
「ウォーキングやランニングを評価してポイント化して、ポイントに応じて保険料が変動していくというサービスを提供しています。」

専用のアプリを使うと、歩数などが自動でカウントされ、ポイントが加算、そのポイントに応じてランクが上がると翌年支払う保険料が割引される仕組みです。
梅村さんは次のようにおっしゃっています。
「毎年の健康診断を受けて提出し、週に3〜4日、1万歩とか1万2000歩、歩いていただくと(最高のゴールドを)達成出来るかなと思います。」

ゴールドを維持すると9年目には最大30%の割引に、しかし全く何もしないと毎年少しずつ保険料が増え、15年目には最大10%の割増になるシステムです。
更に保険料の割引以外にも特典があります。
歩数の条件などを満たすとスターバックスで使えるドリンクチケットを受け取れるなど、提携する17企業の優待が受け取れます。
今年上半期には過去最高となる約20万人が加入しました。
梅村さんは次のようにおっしゃっています。
「(利用者は)加入直後に比べまして1年後の歩数が約9%増えまして、それが3年間継続出来ているという調査結果も出ております。」
「健康になっていくことによって入院給付金や介護給付金のお支払いが減っていくことを期待しております。」

立教大学ビジネススクール教授の田中道昭さんは次のようにおっしゃっています。
「マーケティングの要諦ということで、このサービス「バイタリティ」を「サービスはミッション起点のDX(デジタルトランスフォーメーション)で進化する」ということでまとめてみました。」
「3つのプロセスは、DXの最も基本的なプロセスなんですが、「顧客とデジタルでつながる」ということは「ウエアラブル」、「デジタルと人で深める」ということは「“歩く”の習慣化」、そして「デジタルで成長させる」ということは「他社との連携」で成長させるということで、住友生命のミッションが「あなたの未来を強くする」ということなので「健康増進のサービスを通じてあなたの未来を強くする」ということで、「サービスはミッション起点のDXで進化」するということで、いろんな会社でも使えるマーケティング要諦ではないかと思いますね。」

「(企業のミッションを明確にするというのが今の時代に大事なのではという指摘に対して、)そうですね。」
「ミッションを商品サービスに練り込むことが重要ですよね。」
「(練りこみ方も難しいのではという指摘に対して、)難しいですね。」
「まずは働いている1人ひとりの行動に練りこむということが重要ですよね。」
「(コロナ禍で人々との行動も変わってきますから、それを見極めるということも大事ではという指摘に対して、)そうですね、ミッション起点にということで。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して、住友生命保険が3年前に始めた保険「Vitality」のメリットを以下にまとめてみました。
(保険加入者)
・加入者は加入直後に比べて1年後の歩数が約9%増え、それが3年間継続出来ているという調査結果も出ている
・ウォーキングやランニングで健康増進を図るほど限度額まで保険料が安くなる
・更に保険料の割引以外にも提携する17企業の優待が受け取れる
・一方、全く何もしないと毎年少しずつ限度額まで保険料が増えるので加入者はウォーキングやランニングのやる気を促される

(保険会社)
・保険加入者の保険料が安くなっても、保険加入者が健康であれば保険金を支払うリスクが低くなると期待出来る
・昨年上半期には過去最高となる約20万人が加入した
・利用者の健康促進によって入院給付金や介護給付金の支払いが減っていくことが期待出来る

こうしてまとめてみて思ったのは、ウォーキングやランニング以外にも例えば水泳、テニス、野球などのスポーツ、あるいはヨガや太極拳も健康増進に寄与します。
ですから健康増進に寄与するあらゆるものについて、何らかの尺度で評価し、その結果を保険料や優待につなげられれば、もっと加入者は増えると見込まれます。
このことが気になったので直接住友生命に問い合わせたところ、「バイタリティ」専用のアプリの適用範囲はウォーキングやランニングなど一部に限られていました。(こちらを参照)
また、専用のアプリを使うためにはこの保険加入者がウエアラブルデバイスを購入する必要があるとのことでした。

なお、田中教授は「バイタリティ」を「サービスはミッション起点のDX(デジタルトランスフォーメーション)で進化する」ということで、マーケティングの要諦として以下の3つの基本的なプロセスをあげています。
・顧客とデジタルでつながる ⇒ ウエアラブル
・デジタルと人で深める   ⇒ 「歩く」の習慣化
・デジタルで成長させる   ⇒ 他社との連携

そして、田中教授は次のようにおっしゃっています。
「「顧客とデジタルでつながる」ということは「ウエアラブル」でつなげる、「デジタルと人で深める」ということは「“歩く”の習慣化」、そして「デジタルで成長させる」ということは「他社との連携」で成長させるということで、住友生命のミッションが「あなたの未来を強くする」ということなので「健康増進のサービスを通じてあなたの未来を強くする」ということで、「サービスはミッション起点のDXで進化」するということで、いろんな会社でも使えるマーケティング要諦ではないかと思いますね。」

また、田中教授は次のような指摘もされております。
・ミッションを商品サービスに練り込むことが重要である
・商品サービスを1人ひとりの行動に練りこむということが重要である
・ミッション起点において人々の行動変容を見極めることも大事ある

なお、田中教授のこの指摘から、プロジェクト管理におけるプロセス管理(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.435 『 企業活動におけるプロセス管理の重要性!』)、および定量管理(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.598 『選挙における定量的な評価の必要性』)を思い出しました。
プロセス管理とは、平たく言えば、目的を達成するための一つひとつのステップを明確にし、そのステップを実行し、管理することです。
何事においてもいくら目標を掲げても目標達成のためのプロセスが明確でなければ目標を達成することは危ういということなのです。
「バイタリティ」ではウォーキングやランニングがこの管理の対象になります。

また定量管理とはただ漠然と管理するのではなく、数量的に管理することです。
「バイタリティ」では歩数などの数値で健康管理をしているわけです。
また住友生命保険の視点に立てば、保険加入者の提供するこうした数値と毎年の健康診断の結果などから「バイタリティ」により得られる数値データと健康状態との相関関係からより精度の高い加入者から得られる保険料の算出が出来るようになります。
具体的はこうして集められたビッグデータとAI、およびディープラーニング(参照:アイデアよもやま話 No.3076 人工知能進化のカギ − ディープラーニング!)の活用です。

ということで、「バイタリティ」のようなサービスをより多くのスポーツ、あるいはトレーニングに展開していくことにより、またあらゆる人がウエアラブルデバイスを身につけるだけで健康管理が出来るようになれば、保険会社も収益性が向上し、国の支払う保険料の削減にもつながるというわけです。

まさに“Win-Win”、あるいは“三方良し”(参照:アイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え!)の良い関係が築けると期待出来るのです。


 
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