No.5166 ちょっと一休み その808 『岸田政権の掲げる”成長と分配”の本質!』で“成長と分配”の本質について私の思うところをお伝えしました。
そうした中、昨年10月20日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で自民党の強調する「成長と分配の好循環」について取り上げていたのでご紹介します。
野党がこぞって分配政策を打ち出す中、「成長と分配の好循環」を強調する自民党、自民党の甘利幹事長(当時)は次のようにおっしゃっています。
(「成長と分配の好循環」をどう実現するのかについて)
「好循環というのは分配して終わりじゃないんですよ。」
「分配が成長のけん引力になるような設計をしなきゃいけないんですね。」
「我々は、例えば企業でいえば、内部留保を投資に分配せよということなんです。」
「ただ配るじゃなくて内部留保を投資に分配せよと。」
「その投資は何かというと、賃金投資は勿論、労働者のスキルアップ、これが労働生産性投資になるんです。」
「つまり、その投資は生産性につながって成長力につながるという設計になるわけです。」
(成長産業をどうつくるのかについて)
「安倍内閣から取り組んできたことがあるのは基礎研究をする分野の刷新なんですよ。」
「世界の大学は私立公立を問わず大変革が起きているんです。」
「研究の成果とか特許の成果とかを社会のニーズと結びつけることを常に考える部署が出来ているんです。」
「(自民党は公約で大学改革を後押しするため、10兆円規模の大学ファンドを2022年度までに実現することを掲げていますが、)どうやったら研究を効率的に出来るか、どうやったら経営を考えられるかっていう、改革に向っている方に補助金を出していくんです。」
「何もしないところには出しません。」
(産業界にも大学と連係しつつ、日本発の「成長産業」を作り出すことを求めていることについて)
「日本の産業界には、厳しいことを言いますけど、アニマルスピリット(野心的な意欲)がないです。」
「グーグルを見たらわかるでしょ。」
「内部留保をそのまま置いておかないですよ。」
「バンバンイノベーションの種に投資して、10投資して1つ当たればよいと。」
「一つ当たれば20や30で返ってきますから。」
「だって世界を変えるイノベーションて全部日本からじゃないですか。」
「スマホだって日本ですよ、元はね。」
「3Dプリンターも日本、量子コンピューターも日本。」
「“技術で勝ってビジネスで負ける”のは日本のお家芸ですよ。」
「これはもう終止符を打たなきゃ。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
甘利幹事長(当時)の発言には以下のキーワードがありました。
・アニマルスピリット(野心的な意欲)
・内部留保(こちらを参照)
・技術で勝ってビジネスで負ける
そこで、番組を参考に“成長と分配”のうち“成長”に焦点を当てて私の思うところを以下にまとめてみました。
(ビジネスを取り巻く環境)
・IT関連を中心にすさまじいスピードで技術革新が継続的に進んでいる
・米中の覇権争い、台湾問題やウクライナ問題などの国際的なビジネス活動の阻害リスク
(こうした環境における企業のパターン)
技術革新の観点:
・技術革新の流れの中でリスクを取ってある特化した技術を活用した製品やサービスの研究・開発に取り組む企業
・こうした技術革新の延長線上で成立する将来性のある有望なビジネスモデルにリスクを取って取り組む企業
・リスクを極力回避して、これらの企業の後に続く企業
人事制度の観点:
・年齢などに無関係な実力主義の企業
・終身雇用の企業
国際的なビジネス活動の阻害リスクの観点:
・阻害リスクよりも低賃金などの低コストを優先して海外進出する企業
・阻害リスクの顕在化を想定し、海外展開を図る企業
(企業の新規事業に向けた活動を資金的に支援する投資機関のパターン)
・リスクを取って積極的に企業に投資する投資機関
・リスクを極力回避して企業に投資する投資機関
(国のパターン)
企業活動への支援:
・国の進むべき方向性、具体的な方針、イメージなどを明確に国民や企業に提示し、その方針に則った企業活動を積極的に支援する国
・国の進むべき方向性は示せても、企業活動の支援に直結するような施策を示せない国
企業の海外展開:
・企業の海外展開を積極的に支援したり、阻害するリスクを常に把握し、企業にタイムリーにアドバイスする国
・企業の海外展開を支援せず、阻害するリスクを軽視する国
人材育成:
・国の将来を見据えて、国民として必要な基礎知識や基礎技術を習得出来るようなカリキュラムを学校教育に取り入れる国
・漫然と従来通りの教育に取り組む国
国民の最低限の生活保障:
・失業しても国民のある程度の文化的な生活を保障する国
・失業した場合、最低限の文化的な生活さえ保障しない国
こうしてまとめてみると、自ずと企業や国のあり方が見えてきます。
要するに、企業は常に技術の将来性を見据えてた新しいビジネスモデルの構築に次々に果断に挑戦する企業、およびこうしたビジネスモデルの構築に必要な個々の商品を開発する企業という、大きく2つのグループの企業群です。
同時に年齢や過去の職歴、あるいは国籍に関係なく、必要に応じてタイムリーに実力のある人材を登用して最大限効率的、かつ効果的にビジネスに取り組む企業です。
一方で投資機関はリスクを取ってこうした企業活動を資金的に支援するのです。
また国は個々の企業、中でも特にベンチャー企業がリスクを取って活動し易い環境を整備し、一方でリスクを取って果断にニュービジネスに取り組んだ企業が夢破れて倒産して、その従業員が失業しても安心して暮らせるような制度を構築することが求められるのです。
なお、こうした国や企業の取り組みのインフラとして国全体を串刺しするようなDX(デジタルトランスフォーメーション)がとても重要になります。
このDXにより様々なコミュニケーションがスムーズになり、しかもそれぞれの活動の生産性向上が格段に期待出来るからです。
更に企業がグルーバル展開を図るうえで、特にDXの取り組みが遅れている国に対して、国が率先して国内のDXの成果を売り込むこともグルーバル展開を図る企業にとってとても有益に働きます。
こうした観点から国が率先して普遍性を持ったDXに取り組むことが将来的な企業の成長にとってとても重要なのです。
ということで、日本はデジタル化、更にはDXの取り組みで国際的に後れを取っていると言われていますが、国はこうした戦略的な方針のもとにDXに真摯に取り組んでいただきたいと思います。
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