2022年01月15日
プロジェクト管理と日常生活 No.728 『新型コロナウイルス対策の接触確認アプリ「COCOA」の信じられない不具合』
これまで新型コロナウイルス対策の接触確認アプリ「COCOA」については、プロジェクト管理と日常生活 No.684 『日本政府におけるデジタル化の課題』プロジェクト管理と日常生活 No.687 『GoToトラベルで感染拡大!?』などでお伝えしてきました。
そうした中、昨年10月29日(金)付け読売新聞の朝刊記事でも新型コロナウイルス対策の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の不具合について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

新型コロナウイルス対策の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」に不具合が生じた問題で、会計検査院は、開発業者への指示を怠るなど対応が不適切だったとして、厚生労働省(厚労省)に改善を求めた。

アプリは、厚労省が昨年(2020年)6月に運用を開始したが、同9月に、スマートフォンのアンドロイド端末で接触通知が届かない不具合が発生し、今年(2021年)2月まで改修されなかった。厚労省は4月、動作テストを実施しなかったことや外部からの不具合の指摘を放置したとする報告書を公表した。

 検査院が改めて調べたところ、アプリの仕様書にはテストに関する具体的な記載が一切なかった。意見を募るためにプログラムを外部公開していたのに、指摘があった際の対応も開発業者に指示していなかった。

 契約では、不具合が起きた際には、業者負担での修理か、代金の減額かを指示することができたが、放置したままだった。

 アプリは、厚労省が開発と運用保守をIT業者に委託し、約3億8000万円を支払った。検証報告後に、運用や保守は別の業者に変更された。9月30日時点で約3000万件がダウンロードされている。厚労省の担当者は「指摘を踏まえ、適切に対応する」としている。

以上、記事の内容の一部をご紹介してきましたが、「COCOA」に不具合が生じた問題で、会計検査院により指摘された事項を以下にまとめてみました。

・2020年9月、スマートフォンのアンドロイド端末で接触通知が届かない不具合が発生した
・この不具合について2021年2月まで厚労省による改修がされなかった
・「COCOA」開発の仕様書にはテストに関する具体的な記載が一切なかった
・意見を募るためにプログラムを外部公開していたのに、指摘があった際の対応も開発業者に指示していなかった
・契約では、不具合が起きた際には、業者負担での修理か、代金の減額かを指示することが出来たが、放置したままだった

こうしてまとめてみると、厚労省の「COCOA」開発部署はアプリ開発の“イロハ”さえ理解しておらず、業者に“丸投げ”状態で厚労省は単なる窓口であったというのが実態だったことが分かります。
まさに国民にとってはとんでもない税金の無駄使いだったのです。

更に「COCOA」は、厚労省が開発と運用保守をIT業者に委託し、約3億8000万円を支払い、検証報告後に運用や保守は別の業者に変更されたといいます。
このことも普通はあり得ないことです。
アプリ開発に限らず、一般的なシステム開発において、開発の委託先にシステム稼働後の保守も引き続き依頼するのが一般的だからです。

なお、今回は厚労省による「COCOA」の開発に伴う問題についてお伝えしましたが、ほかの省でも同様の問題が起きていないのか懸念されます。

ということで、以前にもお伝えしましたが、“デジタル化”、あるいはDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していくうえで、まず関連部署の官僚が“システム開発とは何ぞや”、そして“システム開発におけるオーナー業務として何が重要か”といったことをしっかり学ぶことが求められます。
こうしたステップを踏まずに国のDXを進めても税金の垂れ流し状態が続くリスクはとても高いと言えます。
こうしたリスクを最小化するためには、台湾のIT担当大臣、オードリー・タンさん(参照:アイデアよもやま話 No.5029 参考にすべきオードリー・タンさんの基本的な考え方!)のようなIT関連に精通した優れた専門家を外部からスカウトしてDXにおいては全権を委任するくらいの覚悟を岸田総理が持つことが求められます。

 
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