2022年01月12日
アイデアよもやま話 No.5163 出生率が上昇している町の秘訣!
昨年9月23日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で出生率が上昇している町の秘訣について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

2020年の出生率は1.34と5年連続の低下となりました。(こちらを参照)
一方で出生率が上昇している町もあります。
いったいなぜなのかその訳を番組が取材しました。

どんなアイデアで出生率を上昇させたのか、日経電子板「データで読む地域再生」より関東と山梨県で出生率を上昇させた町をランキング(合計特殊出生率」の上昇幅03〜07年と13〜17年を比較しました。

まずは10位から8位、番組が注目したのが10位の千葉県流山市です。(こちらを参照)
東京から約20km、人口増加率は全国で常に上位、実はこの町、コンビニより保育園の数が多いのです。
その数91ヵ所、いったいなぜこんなに保育園が多いのか、流山市の伊崎義治市長は次のようにおっしゃっています。
「つくばエキスプレスができて、都心へのアクセスが良くなりますので、共働き、子育て世代は流山市を選んでいただけるだろうと。」
「仕事をしながら子育てが出来る、し易い環境、仕組みをつくることが最も重要であると。」

2005年に開通したつくばエキスプレス、実は開通時の沿線開発費の市の負担は当時の税収の約3倍、約600億円、人を呼び込めなければ市の財政を直撃する、そこでターゲットにしたのが子育て世代でした。
毎年、保育園を約10ヵ所ずつ増やし続け、保育士確保のために月に最大6万7000円の家賃補助が、そして毎月給与とは別に流山市が最大4万3000円支給しています。
こうした取り組みの結果、市の調査では市民の92%が「これからも流山市に住み続けたい」と回答しました。

続いては4位まで(こちらを参照)、4位の山梨県忍野村とは東京から約85km、人口約9700人、忍野八海という世界遺産で知られていますが、富士山を臨むこの小さな村がなぜ出生率を上げたのか、村のはずれの森を進んでいくと、次々と巨大な建物が現れました。
実は全てファナック株式会社という世界有数の産業用ロボットメーカーの建物、1980年、忍野村がファナックの工場を誘致、その後ファナックは成長を續け、本社・工場などの敷地を東京ドーム約38個分に広げ、本社もこの村に移転しました。
従業員と家族を合わせ、約2500人が居住、このファナックの存在が出生率アップのきっかけとなったのです。
忍野村役場 企画課の米山卓也課長は次のようにおっしゃっています。
「村にとっては非常に大きな税収をいただけることになったと。」
「ファナックからいただける豊かな財源と併せて、独自の施策をしっかりと展開はしていると。」

忍野村役場が最も力を入れているのは子育て支援、給食費は小・中学校、医療費は高校までが無料、そしてもう一つが村でも定住化策、新築で一律100万円、リフォームで最大200万円の補助、移住者も増えています。

いよいよトップ3(こちらを参照)、1位に輝いたのは東京都の日の出町です。
東京の西側の山間に位置する日の出町、駅もない自然豊かな町がなぜ出生率を上げたのか、その一つが日の出町が子育て支援のために配布しているクーポン券です。
日の出町はクーポン券や現金を高校卒業まで毎月1人1万円、合計、最大で216万円を支給、更に医療費は高校まで無料、また相場より割安な子育て向けの町営住宅の整備など、15年前から次世代育成プログラムを推し進めてきました。
日の出町役場 子育て福祉課の野口孝博課長は次のようにおっしゃっています。
「町民が「もう1人産んでみよう」と思ってもらえるようなのを願ってつくった(制度です)。」

その結果、子育て世代が増加し、出生率の上昇幅が全国でトップになったのです。

出生率を上げる様々な取り組み、自治体の挑戦は続きます。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきましたが、その要旨を以下にまとめてみました。

・日経電子板「データで読む地域再生」より関東と山梨県で出生率を上昇させた町をランキング(合計特殊出生率」の上昇幅03〜07年と13〜17年を比較した
・番組が注目した10位の千葉県流山市の取り組みの特徴は以下の通りである
  コンビニより保育園の数が多い(つくばエキスプレスの開通に伴う、共働き、子育て世代の転入が狙い)
  保育士確保のために月に最大6万7000円の家賃補助、そして毎月給与とは別に流山市が最大4万3000円支給している
・同じく4位の山梨県忍野村の取り組みの特徴は以下の通りである
  優良企業の誘致(税収増)
  豊かな財源による子育て支援(給食費や医療費の無料化)
定住化策(新築で一律100万円、リフォームで最大200万円の補助)
・同じく1位の東京都日の出町の取り組みの特徴は以下の通りである
  子育て支援(クーポン券や現金の配布、相場より割安な子育て向けの町営住宅の整備など)

こうしてまとめてみると、出生率が上昇している町の秘訣が見えてきます。
それは以下の3つです。
・子育て支援
・定住化の推進
・優良企業の誘致

そして、注目すべきは出生率の上昇対策を国に依存しなくても自治体独自の取り組みによって成し遂げられるという点です。
なお、定住化の推進策の一つとして今問題になっている各地の空き家の活用が考えられます。
私の実家のある千葉県外房の漁村でも徐々に空き家が増えつつあります。
そして、空き家の中にはまだ十分に住める家もあります。
また、他にも海や森など豊かな自然に恵まれた地域であれば、地の利を最大限に生かした定住化策が考えられます。
なお、こうした地域の復興策を後押ししているのがコロナ禍をきっかけに注目を浴びるようになった在宅勤務やリモートオフィスといった働き方の変化です。
こうしたライフスタイルを支えるインフラの一つがDX(デジタルトランスフォーメーション)なのです。
そして、DXの推進は少子化対策のみならず人手不足対策としても極めて有効なのです。
ですから、国にはDX推進の重要性を十分に理解し、社会インフラ整備の一つとして真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 
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