2022年01月07日
アイデアよもやま話 No.5159 製紙大手が木質成分をEVやキャパシター用の素材などとして開発を急ぐ!
昨年9月20日(月)付けネット記事(こちらを参照)で木質成分をEVの車体やキャパシター用の素材、あるいは医療品の原料として開発を進める製紙大手について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

(EV普及で採用に期待)
・「鋼板車体からだと推計約100キログラム軽量化できる可能性がある」。大王製紙新素材研究開発室の玉城道彦室長は、自動車の車体にセルロースナノファイバー(CNF)を活用するメリットを強調する。
・CNFは木の繊維をナノ(ナノは10億分の1)メートル単位まで細かくした新素材だ。同じ体積の鉄より軽く強度も高いとされ、樹脂に混ぜるとさらに強度が高まることから自動車部品などを軽くできる性質がある。
・大王製紙は自社のCNFブランド「エレックス」シリーズを配合した複合樹脂を車体に使ってもらうことで、鋼板から軽くなり、車の燃費も改善すると誇る。完全な樹脂車体よりプラスチック使用量を減らせる。
・大王製紙はEVレースチームに2018年から協賛する。連携するのはゼロイースクエア(東京・港)が運営する競技チーム。ゼロイースクエアの神子力社長は「(EVには)モーターなどを1機追加しているが、ボディーをCNFで置き換え重量増を相殺している」と語る。
・モータースポーツでは炭素繊維をプラスチックで固めた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などを使って軽量化するのが主流だ。しかし再利用するのが難しく、従来は使用済み素材を埋め立てるなどして処分していることが多い。その点CNFは自然由来の素材であり、環境負荷の低減に大きく貢献する。大王製紙の若林頼房社長は「EV化はますます進む。厳しい環境で実証できれば車メーカーにも使ってもらえる」と見据える。
・重いガラスの代替でCNF活用を模索するのは王子ホールディングス(HD)だ。ガラスと同程度の透明性がある「ポリカーボネート樹脂」を補強するCNF技術を研究開発している。従来は熱で変形しやすく、たわみやすかったが、CNFを10〜15%配合することで従来のガラスに近い剛性を確保できる。重量の半減にも成功した。

(蓄電体にも利用)
・脱炭素に欠かせない蓄電装置を開発する動きもある。日本製紙と東北大学は3月、CNFからレアメタルを使わない高性能な蓄電体を開発した。原理は電気を貯蔵できる蓄電装置(キャパシター)と同じ。CNFは木の繊維を細かくしたもののため、電極表面の凹凸が多く表面積が大きくなり、蓄電量を増やせる。
・蓄電量で主流のリチウムイオン電池を超えることを目指しており、まずは再生可能エネルギー向けとして25年メドに営業提案を始める。
・日本製紙はCNFを年500トン生産できる世界最大級の設備を17年に稼働した。木からつくる電池の負極向け材料カルボキシメチルセルロース(CMC)でも高い世界シェアを持つ。30年までの戦略投資3500億円のうち、約8割は電池関連を含む紙以外の成長事業に投じる。
・ただCNFを巡っては、東亜合成が製造コストを下げる技術を開発した。異業種の化学メーカーとの激しい競争が待ち受けている。

・CNF以外の木質成分を医薬品などの新たな原料として有効利用しようとする動きも出てきた。その1つが王子HDの医薬品開発だ。
王子HDは製紙工程の副産物として発生する「ヘミセルロース」を医薬品原料に活用する。木の主成分の1つだが、紙原料には使えないため従来は主に燃料に使ってきた。20年に設けた医薬品子会社、王子ファーマ(東京・中央)が北海道大学と連携し、まず動物向けの抗炎症薬を開発する考え。馬や犬などの炎症である「変形性関節症」向けに24年度以降の発売を目指す。
・王子ファーマではヘミセルロースを原料として、人の血液が固まらないようにする抗凝固薬の開発も目指している。いま主流のヘパリンと同社が開発している成分の構造が類似しているのに着目した。現在主流の抗凝固薬は牛の肺や豚の小腸の粘膜といった家畜から作られており、生産過程で発生するメタンなどは温暖化係数が高い。植物から作れば温暖化ガス削減につながり、環境負荷も抑えられる。

(市場規模拡大が課題)
・調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)によると、CNFの世界市場規模(出荷金額)は30年に258億円と20年から5倍近くに成長する見込み。
・日本は国土の3分の2を森林に覆われており、こうした新素材の推進は安定調達になるだけでなく、世界展開への武器にもなる。製紙各社は洋紙生産から段ボールや衛生紙増産といった業態転換を進めているが、祖業で培った木の成分の活用ノウハウを脱炭素社会に生かせば、飛躍の原動力になりうる。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきましたが、その要旨を以下にまとめてみました。

(車体の軽量化、および強度の向上)
・CNFは木の繊維をナノメートル単位まで細かくした新素材で、同じ体積の鉄より軽く強度も高いとされ、樹脂に混ぜるとさらに強度が高まる
・自動車の車体にCNFを活用すると軽量化、およびクルマの燃費の改善が期待出来る
・ガラスと同程度の透明性がある「ポリカーボネート樹脂」の補強にCNFを活用すると、従来のガラスに近い剛性を確保でき、重量の半減も期待出来る
・CNFは自然由来の素材であり、環境負荷の低減に大きく貢献する

(キャパシターや医療品の原料として活用)
・レアメタルの代替としてCNFをキャパシターの製造に活用すると、CNFは木の繊維を細かくしたもののため、電極表面の凹凸が多く表面積が大きくなり、蓄電量を増やせる
・希少資源、リチウムに依存しないでキャパシターの製造が出来る
・製紙工程の副産物として発生する「ヘミセルロース」の医薬品原料としての活用により温暖化ガス削減につながる

(市場規模拡大が課題)
・CNFの世界市場規模(出荷金額)は2030年に258億円と20年から5倍近くに成長すると見込まれている
・日本は国土の3分の2を森林に覆われており、こうした新素材の推進は安定調達になるだけでなく、世界展開への武器にもなる

こうしてまとめてみると、あらためて木の繊維をナノメートル単位まで細かくした新素材、セルロースナノファイバー(CNF)の用途の多様性に驚きます。
しかも、森林が国土の3分の2を占める森林大国、日本はCNFの原料である木材の入手には事欠きません。
ですから、従来の製品をCNFで代替することによって、機能の改善、低価格化、更に地球温暖化の阻止を目指すべく、関連メーカーにはCNFの実用化に向けて取組んでいただきたいと思います。

 
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