2022年01月06日
アイデアよもやま話 No.5158 トヨタがハイブリッドを電動化の主力にする理由!
昨年9月19日(日)付けネット記事(こちらを参照)でトヨタがハイブリッドを電動化の主力にする理由について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・2021年9月7日、トヨタは電池・カーボンニュートラルに関する説明会をおこない、2030年時点で考えるトヨタの電動車販売見通しを発表。電動車の販売見通しを800万台とし、うち純電気自動車(BEV)+燃料電池車(FCEV)は200万台と考えている。つまり残りの600万台はハイブリッド車(HEV)となるのだ。

(ハイブリッド車は効率的な二酸化炭素削減技術)
・トヨタHEVの累計販売台数は1810万台。これをBEVの電池量や二酸化炭素排出削減効果に換算すると図のような結果となる。HEVは効率的に二酸化炭素を削減できるのだ(出典:『トヨタの電池の開発・供給〜カーボンニュートラル実現に向けて〜』)
・目下、最大の課題であるCO2排出量削減。近年では産業構造全体で、CO2排出をゼロにする「カーボンニュートラル」が考え方の主流だ。
・カーボンニュートラルは、クルマを使っているときだけではなく、原料の調達から始まり、製品を作る、運ぶ、使う、そしてリサイクルして廃棄するまでの間で発生するCO2を、森林などに吸収される量と、差し引きしてゼロにするという仕組みである。
・トヨタはこれまで1810万台ものハイブリッド車を販売してきた。トヨタの試算では、HEV 3台の二酸化炭素削減効果は、BEV 1台とほぼ同等だという。つまり、これまで販売してきたハイブリッド車は、BEV 550万台相当のCO2削減効果を持つということになる。1810万台のHEVに搭載された電池の量は、BEV 26万台分というのも驚きだ。
・1810万台のHEVは、BEV26万台ぶんの電池で、BEV 500万台分のCO2削減を実現したことになる。今、最も効率的にCO2削減ができるクルマはハイブリッド車なのかもしれない。

(EVは内燃機関車の2倍の二酸化炭素を排出する?)
・BEVは製造時に排出される二酸化炭素量が多い。そこで2030年に販売見込みの電動車800万台のうち、600万台をHEV・PHEVにしようというのがトヨタの計画だ
・内燃機関を持つクルマは、走行時に二酸化炭素を多く出すので悪であり、電気自動車を多く作れば、CO2排出量の削減につながるという考え方は根深く残る。しかし、この考え方では、CO2排出量は減っていかない。なぜなら、電池を搭載したBEV製造の際に発生するCO2は、内燃機関のみのクルマを製造する際に発生するCO2の2倍と言われているからだ。特に電池を作る際のCO2排出量が多く、リチウムイオン電池の総電力量が増えるほど、製造過程でのCO2の排出は増えていく。
・また、BEVを動かす電気を作る際にもCO2は発生する。再生可能エネルギーを使えばいいが、まだまだ化石燃料による発電に頼る国は多い。日本でも、総発電電力量に占める火力発電の割合は2020年も約75%にもなる。
・BEVが脱炭素社会で活躍するのは、もう少し技術革新が進んでからになるだろう。それまでは、従来の内燃機関をベースにして、製造時のCO2排出が比較的抑えられる、ハイブリッド車が環境対策の上でも、有効性の高い手段なのである。

(「安全・長寿命・高品質・良品廉価・高性能」を満たさなければEVは作らない)
・トヨタは元々BEVには懐疑的で、現在のトヨタ・レクサスを合わせたラインナップでもBEVはレクサス UX300eのみとなる。
・トヨタは、「安全・長寿命・高品質・良品廉価・高性能」という5つの要素を高次元でバランスさせ、お客様に安心して使ってもらえるクルマを作ってきた。このスタンスは、これから先も変わらない。
・今後、安全安心にBEVを使ってもらうために、インフラ整備に加えて、電池制御システムの拡充、バッテリーの長寿命化や電費の向上及び高品質化、電池単体のコスト目標達成など、課題は多い。
・それでも待ったなしにCO2排出量を削減しなければならない未来はやってくる。現在のハイブリット技術に磨きをかけながら、2050年のカーボンニュートラルに向けて、もっといい電動車の本質的普及を目指し、トヨタは進みつづけるはずだ。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

そもそもカーボンニュートラル、あるいは“脱炭素化”の必要性ですが、あらためてその問題点、および対応策について以下にまとめてみました。

(問題点)
・産業革命以降、人類の様々な経済活動の中で石炭など化石燃料の消費量が増加を続け、それに伴いCO2をはじめとする温室効果ガスが増加していき、一方で森林開発などによる環境破壊によって自然環境が吸収するCO2の量が減少し、これらが原因で地球温暖化の進行をもたらしている
・地球温暖化は以下のような問題を引き起こしている
  これまでの温暖な気候下での暮らしが熱帯下での暮らしを強いられるようになる
  これまで農産物や海産物が豊富に採れた地域の収穫量や漁獲量が激減する
  海面などからの水分の蒸発量が増加し、集中豪雨や巨大台風の発生頻度の増加や規模の増大をもたらす
  北極や南極の氷山など、あるいは氷河や永久凍土などを溶かし、海水面を上昇させ、その結果陸地面積を減少させる
  これまで永久凍土などの中に閉じ込められていたウイルスが活動を再開し、新たなパンデミックを引き起こすリスクが高まる
  このまま対策を強化せず、気温が上がり続けると「限界点」、いわゆる“ティッピングポイント”に達し、温暖化に歯止めが利かなくなり、二度と後戻りが出来なり、温暖化の暴走、いわゆる「ホットハウス・アース(温室地球)」という現象をもたらす(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.724 『地球温暖化関連の最新事情』

(対応策)
・産業革命前に比べて地球上の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えることを世界的な目標とする

なお、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)での国際的な合意事項として、2050年までに上記の目標を掲げていますが、その前に“ティッピングポイント”に達してしまえば“後の祭り”となってしまいます。
ですから、各国、および各企業は1年でも早く自らの活動プロセス全般にわたって“脱炭素化”を達成することが求められているのです。
そして、その取り組みの大枠は以下の2つです。
・CO2排出量を実質ゼロにする
・排出したCO2をそのまま大気中に廃棄するのではなく、リサイクルを図る

こうした枠組みの中で自動車業界における“脱炭素化”の取り組みについて考えてみると、以下のような取り組みが考えられます。
・クルマの生産に必要なエネルギーは全て再生可能エネルギーにする
・クルマの生産に必要なパーツは全てカーボンニュートラルの要件を満たすものを使用する
・クルマの走行時に排出するCO2をゼロにする
・クルマの航続距離は従来のガソリン車と同等かそれ以上に伸ばす
・クルマの走行時に排出するCO2をゼロに出来ない場合は、そのCO2をリサイクルする
・クルマの燃料は全てカーボンニュートラルの要件を満たすものを使用する
・その燃料費は従来のガソリン車と同等かそれ以下に抑える
・クルマの寿命は従来のガソリン車と同等かそれ以上に伸ばす

・寿命を迎えたクルマのパーツは全てリサイクルする
・上記の要件を満たすクルマの価格は従来のガソリン車と同等かそれ以下に抑える

こうしてみると、単純に現行のガソリン車をEV化すればクルマにおけるカーボンニュートラルは達成出来るというものではないのです。
要するに、クルマのライフサイクル全体を通して、カーボンニュートラルの達成を目標とすべきなのです。

こうして考えを進めていくと、一概に“ガソリン車は悪”、あるいはEVは燃料電池車よりも優れているとは言えなくなってきます。
なぜならば、ライフサイクル全体を通して、カーボンニュートラルの達成度合いがどのクルマがより高いかこそが重要な尺度になってくるからです。

更に、集めたCO2からガソリンの代替燃料を作る技術が実用化され、世界的に普及されれば、少なくともガソリン車が走行中に排出するCO2の問題は解決されるのです。(参照:アイデアよもやま話 No.5143 空気中からCO2を回収する簡易装置!?
更にCO2のリサイクルにより新たな代替燃料が生産出来るのですから、まさに“一石二鳥”です。

ということで、現在、世界的な流れとして、EV化こそこれからの時代のクルマの主流であるという暗黙の了解がなされているようですが、クルマのライフサイクル全体としてゼロエミッションを追求するうえで様々な取り組みが並行して進められるべきだと思うのです。
今はまだ未来のクルマ社会のあるべき姿を試行錯誤して追い求める時期なのです。

 
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