2022年01月05日
アイデアよもやま話 No.5157 自己修復する最先端のコンクリート!
昨年9月18日(土)放送の「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」(NHK総合テレビ)で自己修復する最先端のコンクリートについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。

道路の未来を変えるとも言われる最先端のコンクリートですが、その秘密はコンクリートの中にバクテリア(微生物)が閉じ込められているのです。
このバクテリア、普段は眠っているのですが、ひび割れが出来るとそこから浸み込んだ雨と空気が反応し、目を覚まして活動を開始、栄養分を取り込むとコンクリートと同じ成分の炭酸カルシウムを排出するのです。
この炭酸カルシウムがひび割れを埋め、補修していくという仕組みなのです。
一般的に0.4mmほどのひびであれば2ヵ月ほどでふさがり、補修出来るといいます。
ひびがふさがり乾燥するとバクテリアは再び眠るのです。

なお、コンクリートの中に入っているバクテリアは200年生き続けると言われています。
ですから200年間、自己治癒を繰り返すことが出来るのです。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

また一昨年11月17日付け(こちらを参照)、および一昨年11月25日付け(こちらを参照)のネット記事でも同様のテーマについて取り上げていたので併せてその一部をご紹介します。

會澤高圧コンクリート株式会社と同社のR&D部門であるアイザワ技術研究所株式会社(札幌市)は、2017年4月より、オランダのデルフト工科大学とバクテリアの代謝機能を活用した自己治癒コンクリート技術を共同開発してまいりましたが、およそ2年半に及ぶ実証試験を経て、このほどバクテリアとその餌となるポリ乳酸を配合したコンクリートの自己治癒化材料の新たな量産技術を確立いたしました。

この最先端のバクテリアが直す自己治癒コンクリートの量産技術は會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)とアイザワ技術研究所(札幌市)により世界で初めて確立されました。
なお、この自己治癒手法は、オランダのデルフト工科大学のヘンドリック・ヨンカース准教授が率いる研究チームが考案しました。
アルカリ耐性の強いバクテリアとその餌となるポリ乳酸をコンクリートに配合しておくというものです。

以上、ネット記事の一部をご紹介してきました。

さて、こうした情報をもとに最先端のコンクリートについて以下にまとめてみました。
・アルカリ耐性の強いバクテリアとその餌となるポリ乳酸をコンクリートに配合しておくと普段は眠っているが、ひび割れが出来るとそこから浸み込んだ雨と空気が反応し、目を覚まして活動を開始、栄養分を取り込むとコンクリートと同じ成分の炭酸カルシウムを排出する
・この炭酸カルシウムがひび割れを埋め、補修していく
・ひびがふさがり乾燥するとバクテリアは再び眠る
・コンクリートの中に入っているバクテリアは200年生き続けると言われている
・このバクテリアによる自己治癒手法のアイデアはオランダのデルフト工科大学のヘンドリック・ヨンカース准教授が率いる研究チームが考案した
・そして、バクテリアが直す自己治癒コンクリートの量産技術は會澤高圧コンクリートとアイザワ技術研究所により世界で初めて確立された

さて、現在、コンクリートは道路以外にも堤防など様々なところで使われています。
そしてこれらは耐用年数が近づいてくれば修復が必要になります。
一方、今回ご紹介した自己治癒コンクリートであれば、その耐用年数は飛躍的に伸びるので、多少初期費用がかかっても保守費用は従来に比べてずっと少なくて済むので、ライフサイクル全体で見れば安く抑えられるはずです。
ですから、この自己治癒コンクリートの技術はとても画期的でコンクリートという素材に新たに大きな付加価値を加えるものです。

それにしてもアルカリ耐性の強いバクテリアとその餌となるポリ乳酸をコンクリートに配合するだけで自己治癒コンクリートが出来てしまうというアイデアのきっかけは何だったのか、興味が湧いてきました。
すると、ネット記事には以下の記述がありました。

人体に傷が生じた場合、出血した後にかさぶたが出来て、自然と治癒します。同じようにバクテリアという生物の代謝でコンクリート表層の傷が絶えず治癒される状態をつくり出せれば、構造クラック等の遠因になる劣化因子の侵入を阻止し続け、コンクリートを実質的に永久構造物にすることができます。

ということで、きっかけは人間の持っている自然治癒機能だったのです。
これまで自然の知恵、すなわちその仕組みを私たちの生活に生かす研究、ネイチャー・テクノロジー(Nature Technology)については何度かお伝えしてきました。(参照:アイデアよもやま話 No.1726 ネイチャー・テクノロジーで究極のエコ社会が実現!?
そして、今回ご紹介した自己修復するコンクリートの発明は人間の仕組みを応用したというわけです。
ですから、この発明はネイチャー・テクノロジーをもじってヒューマン・テクノロジーの一環と言えます。

ということで、私たち人類、あるいは自然界にはそれぞれ生存していくうえで長年培われてきた様々な仕組みがあるのです。
ですので、これらの個々の仕組みを整理して、これらの仕組みと現実の課題とをマッチングさせることにより、新たな発明につながるというわけです。
ここであるアイデアが閃きました。
それはこの分野での発明プロセスにおけるAIの活用です。
AIは思考パターンがアルゴリズム化出来れば、ディープラーニング(参照::アイデアよもやま話 No.3076 人工知能進化のカギ − ディープラーニング!)により関連データの入力の増加とともに解決手段がどんどん進化していきます。
ですから、発明や物事の解決における脅威的なスピードを持ったツールと言えます。
まさに、アイデアは存在し、発見するものである、そしてアイデアは既存の要素の組み合わせであるということなのです。

なお、ネット記事によれば、會澤高圧コンクリートの會澤祥弘社長は、自己治癒コンクリート事業の開始にあたり、以下のコメントを発表しました。

「当社はこれまで、安全第一(Safety First)、品質第二(Quality Second)、生産第三(Products Third)という少し風変わりなモットーを掲げて来た。3つの重要事項に敢えて序列をつけることで、判断に迷ったときの基準を社員に明確に示すためだ。自己治癒コンクリート事業の開始にあたり、約20 年ぶりにこれを見直し、3つの重要事項のさらなる上位価値として、脱炭素第一(Decarbonization First)を掲げることにした。」

このコメントもとても好感が持てて、これから本格的に各企業がSDGs(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)に取り組んでいくうえでとても参考になる内容だと思います。

 
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