2021年12月28日
アイデアよもやま話 No.5150 中国の台頭で世界経済はどこへ・・・
9月10日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中国の台頭による世界経済の行方について取り上げていたのでご紹介します。 

9月11日で経済の中心を襲った同時多発テロから20年になりますが、世界経済を取り巻く環境はどのように変わったのでしょうか。

2001年9月11日、世界金融の中心地を直撃した同時多発テロ、当時、ニューヨークに滞在し、世界貿易センタービルの崩壊を目の当たりにした野村総研のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英さんは次のようにおっしゃっています。
「(同時多発テロが発生した時、)現場になった世界貿易センタービルから200〜300m離れた別のビルの34階にいまして、ちょうど会社に出社した頃に1機目がぶつかり、しばらく外を見ていると2機目が南棟にぶつかるところを目の当たりにしていました。」
「(世界経済が一変したこの20年、最大の変化、中国の台頭という情況について、)アメリカはテロとの戦いを20年間やってきたんですが、効果があまり見られなかった一方で、やはりアメリカにとっての脅威は中国になったと。」

木内さんは同時多発テロが起きたこの2001年こそが中国台頭のきっかけになった年だと指摘します。
実は中国はこの年、WTO、世界貿易機関に正式に加盟、それが中国製品の輸出を後押しし、中国の飛躍的な経済成長の引き金になったのです。

一方、アメリカは大きな痛手を受けることになりました。
サブプライムローン問題を発端とする2008年からの世界金融危機です。
アメリカを始めとする先進国の経済が大きく打撃を受けました。
このリーマンショック(2008年9月)後に存在感を示したのが中国です。
中国のGDPが世界経済に占める割合はこの後、次のように大きく増えました。

    2008年 2020年 (世界銀行データより)
中国    7%   17%
アメリカ 23%   24%

そして今、世界は新型コロナウイルスの感染拡大による未曾有の危機に直面しています。
アメリカを始めとする先進国が中国と対立を深める中、中国は独自のワクチン外交などを通じて新興国などへの影響力を格段に強めています。
木内さんは次のようにおっしゃっています。
「行き着く先は世界経済の分裂だと思います。」
「経済だけでなくて、政治、外交、安全保障も分裂していく新しい冷戦構造。」
「新興国、中国も含めてだんだん離れてしまえば、日本経済の潜在力ももっと落ちてしまう。」
「接点を見出して、出来るだけ歩み寄ることが結局はアメリカや日本にとっての利益になってくるんじゃないかと。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

米中の視点から番組の内容を以下のように整理してみました。

(アメリカ)
・2001年9月11日、同時多発テロが世界金融の中心地を直撃した
・その後、アメリカはテロとの戦いを20年間やってきたが、効果があまり見られなかった
・またサブプライムローン問題を発端とする2008年のリーマンショックからの世界金融危機で大きな打撃を受けた
・その結果、アメリカの世界経済に占める割合はほとんど増えていない
・一方、アメリカにとっての脅威は中国になった

(中国)
・同時多発テロが起きた2001年、中国はWTO(世界貿易機関)に正式に加盟した
・それが中国製品の輸出を後押しし、中国の飛躍的な経済成長の引き金になった
・更に中国はリーマンショック後に存在感を示し、中国のGDPが世界経済に占める割合は大きく増え、アメリカに追いつきつつある
・そして今、世界は新型コロナウイルスの感染拡大による未曾有の危機に直面しており、
アメリカを始めとする先進国が中国と対立を深める中、中国は独自のワクチン外交などを通じて新興国などへの影響力を格段に強めている

こうした現状を踏まえて、米中対立の今後の行方について、野村総研の木内さんは以下のように指摘しています。
・行き着く先は世界の経済、政治、外交、安全保障が分裂していく新しい冷戦構造である
・その結果、日本経済の潜在力ももっと落ちてしまうことになる
・従って、中国との接点を見出して、出来るだけ歩み寄ることがアメリカや日本にとっての利益につながる

こうして見てくると、経済面や軍事・外交面で勢いを増す中国に対して、相対的に中国に対する優位性を失いつつあるアメリカという構図が浮かんできます。
そして、この構図は民主主義陣営対覇権主義陣営の対立という構図につながり、このような状況が新しい冷戦構造と呼ばれるのです。

そして、バイデン大統領も習近平国家主席も国内的にも対外的にもそれぞれ自らの威信を賭けて一歩も引くわけにはいかない状況のようです。
こうした冷戦状況がちょっとしたことをきっかけに偶発的に戦闘にまで突き進んだ場合、両陣営の多くの国々の国民が未曾有のとんでもない状況に追い込まれることになります。
日本も無傷で済むようなことは全く期待出来ません。

ではこのような状況において、日本としてどのような対応が主体的な観点から求められるかですが、以下にまとめてみました。
・中国をはじめとする覇権主義に対する民主主義の優位性について再認識する
・その信念に基づいて、SDGsの観点を中心に再生可能エネルギー関連の製品、あるいはこれからの“産業の米”と言われる半導体などの分野で世界的に圧倒的な地位を築くべく、官民一体で突き進む
・その成果でまず日本自らが“持続可能な国”を実現し、先進国、途上国を問わず、その世界展開を実現する
・こうした取り組みと並行して、軍事的にも日米同盟を基軸として民主主義陣営の結束を強め、その総合的な軍事力を中国をはじめとする覇権主義陣営の国々の軍事的な暴発を食い止める抑止力となるまで高める
・今後とも米中、あるいはロシアの首脳に対して、万一戦争状態になった場合に世界各国の多くの国民に犠牲を強いることになることを繰り返し強調し、その時々の問題において平和的な解決の重要性を説く

ではこうした取り組みの最終ゴールはどのようなイメージかですが、以下のように考えます。
・民主主義陣営、あるいは途上国の国々が経済的に中国に依存しなくて済むレベルを維持すること
・民主主義陣営の国々の軍事力が覇権主義陣営の国々を常に上回る状況を維持する
・民主主義陣営の国々が国連などの国際機関におけるリーダーシップを取り続けること

なお、日本はこれまで明治維新、そして戦後の奇跡的な復興、そして高度経済成長を成し遂げ、更にオイルショックも乗り越えてきました。
しかし、1990年代のバブル崩壊以降、経済が停滞したまま現在に至っています。
その根本原因は総じて国も企業も高度経済成長という過去の成功体験を引きずったまま、チャレンジ精神が相対的に失われた状態がいまだに続いていることにあると思うのです。

こうした状況を打破すべく、現政権には先ほど掲げた最終ゴールを目指してリーダーシップを発揮していただきたいと思います。
しかし、企業も過去の成功体験に縛られることなく、先ほど掲げた最終ゴールを目指して独自にチャレンジ精神を発揮し、失敗を恐れずに果断に突き進んでいただきたいと思います。
なぜならば、経済力は国家安全保障の観点からもとても重要な要素だからです。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています