2021年12月24日
アイデアよもやま話 No.5147 農地情報公開システム開発に投じた137億円が無駄に!
アイデアよもやま話 No.5129 10万円相当給付で事務経費1247億円に!で国による予算の無駄遣いについてお伝えしました。
そうした中、12月3日(金)付けネット記事(こちらを参照)でも同様の事例について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・農林水産省の補助事業で137億円かけて整備した農地情報公開システム。利用が進まず無用の長物と化していたことが2021年10月に明らかとなった。
・会計検査院の調べでは、ユーザーの約8割は日常業務として利用していなかった。周知や研修が不十分だったことに加え、稼働初期の不具合で評判を落とした。農林水産省は研修の強化やデータ入力の簡易化などで改善を急ぐ。
・農地情報公開システムは全国の農地情報を一元管理し、Webサイト「全国農地ナビ」で公開するためにクラウド上に構築したシステムだ。農林水産省の2013年度補正予算で構築に着手し、全国の農業委員会を束ねる全国農業会議所を事業実施主体として整備を進めてきた。もともとは各市町村の農業委員会が個別に構築した農地台帳システムなどで農地情報を管理していたところ、全国共通のシステムで登録から公開まで一括して行えるようにした。2016年4月に整備を終え、その後、数度にわたって改修してきた。
・だが会計検査院が17道県にある783の農業委員会を対象に利用状況を調べたところ、47.1%に当たる369の農業委員会は既存の農地台帳システムのみを利用していた。さらに32.0%に相当する251の農業委員会は既存の農地台帳システムを主として使い、公表データの更新時などに限って農地情報公開システムを利用しているとした。つまり、79.1%は同システムを日常業務で利用していなかった。
・会計検査院の指摘を受け、金子原二郎農相は2021年10月26日の記者会見で「改善を図るように指導していく。もう1回よく調査をして、確実にシステムが機能するように取り組んでいきたい」と釈明に追われた。同省は研修の強化やデータ入力の簡易化などで利用率の底上げを図っていく構えだ。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

農地情報公開システムは農林水産省の2013年度補正予算で構築に着手し、2016年4月に整備を終え、その後、数度にわたって改修してきたといいますが、今年になってもほとんど使用実績がない状態が続いているのです。
そこで、記事を通して、このシステムに関する問題点を以下にまとめてみました。
・農林水産省の補助事業で137億円かけて整備した農地情報公開システムの利用が進んでいないことが2021年10月に明らかとなった。
・周知や研修が不十分だったことに加え、稼働初期の不具合で評判を落としたとして、農林水産省は研修の強化やデータ入力の簡易化などで改善を急ぐとしている。
・このシステムの稼働開始以来、長年にわたって使用実績が少ないという事実に主管官庁である農林水産省は正面から向き合ってこなかった

次になぜこうした問題が起きたのか、その原因と思われる点について以下にまとめてみました。
・エンドユーザーが具体的にどのような悩みを抱えているかという現状把握の重要性に対する当事者意識が不足していた
・システムオーナーとしての自覚が不足していた
・このシステム開発において、それぞれの担当職員がシステムオーナーとして必要なスキルを身につけていなかった
・前回も指摘したように、ユーザー要求の声をきちんと把握していなかった
・開発に伴うユーザーサイドによるシステムテストが適切に実施されなかった
・システム開発において、業務委託業者への依存傾向があった
・開発中、および開発後のユーザー向け研修が適切に実施されなかった

ということで、農地情報公開システムの開発の狙いは全国の農地情報の一元管理ということで、狙いそのものは良かったので、その成果が137億円のほぼ無駄使いになっている状況はとても残念です。
この事例も開発における業者への“丸投げ”が疑われても仕方ないと思います。
“丸投げ”状態も大問題ですが、一般的に行われるシステムの稼働後のシステム評価がこれまで適切に実施されなかったことも大問題です。
もし、システム評価がタイムリーに実施されていれば、エンドユーザーによる利用がほとんどない状態が稼働後数年経っても続くような状態になっていなかったと思われます。

ということで、現在の国の行政においてデジタル化の現状における様々な問題を解決するためには“DXとは何ぞや”から始まってシステム開発の意義や進め方、管理の仕方などについて、組織全体として当事者意識を持って習得することが早急に求められているのです。

なお、DXは本来、行政プロセスの生産性、および国民への行政サービスを向上させるとても有効なツールなのです。
ですから、当然、官僚の方々の業務も楽になるのですから、とてもやりがいのある業務なのです。
ということで、デジタル庁担当の牧島大臣には本来優秀な官僚の方々が日本全体のデジタル化の先駆けとして真摯にDXに取り組めるようにリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 
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