2021年11月29日
アイデアよもやま話 No.5125 投機マネーで高騰する国産ウイスキー!
バブルと言えば、17世紀のオランダでチューリップ球根の価格が異常に高騰したチューリップ・バブルが歴史上有名です。(こちらを参照)
また、日本でも1986年12月から1991年2月51ヵ月間に日本で起こった資産価格の上昇と好景気、すなわちバブル景気が有名です。(こちらを参照)
そうした中、8月11日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で投機マネーで高騰する国産ウイスキーについて取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

昨年、香港のオークションで日本のウイスキーの高値記録を更新したのがサントリーのシングルモルトウイスキー、「山崎55年」です。
落札価格は約8500万円でした。
世界で日本のウイスキーの評価は年々高まっていますが、皆さんの家に眠っているかもしれない国産ウイスキーも今、意外な高値で取引されているのです。
神奈川県厚木市、家庭のお酒を出張買い取りする株式会社ファイブニーズ 酒買取販売事業部の椚(くぬぎ)春佑さんは大量のウイスキーを売りたいとの連絡で飛んできました。
出てきたのは品薄状態の続く「山埼12年」、更に世界的に評価の高い「イチローズ モルト」も、全て箱に入っています。
ウイスキー 9本で買取価格は18万円、買った時の価格の2.6倍で売れました。
原酒が不足し、買取価格が年々高騰、椚さんは次のようにおっしゃっています。
「1年後、現状から1.5倍くらいまでは余裕で伸びていくんじゃないのかなと考えています。」
「(買い取ったウイスキーの値段について、横浜・中区のファイブニーズ 神奈川横浜店
で)一番値段が上がっているところで言いますと、「山崎18年」ですね。」

希望小売価格が2万5000円のこのウイスキー、店頭価格は5倍の12万5000円、それでもすぐに売れるといいます。
その理由について、椚さんは次のようにおっしゃっています。
「エンドユーザーは中国の富裕層の方ですね。」
「本当に「山崎18年」が飲めるのがステータスといった状況の方がご購入されているような状況ですね。」

世界的な評価の高まりで国産ウイスキーの輸出額は2020年に約271億円と、2010年の約17億円から10年で16倍となっています。
そのため国内では手に入りにくくなり、価格の高騰が起きていたのです。
6年前に11ヵ所だった国内のウイスキー蒸留所は現在37ヵ所、新たな蒸留所が続々と開設されています。
その一つが世界有数のスキーリゾート、北海道・ニセコ町にあります。
今年3月に稼働を始めたニセコ蒸留所です。
実はここ、日本酒「八海山」で知られる、新潟県にある八海醸造のグループ会社が運営、ニセコ町から誘致を受け、本格的にウイスキー事業に乗り出したのです。
八海醸造の副社長、南雲真仁さんは次のようにおっしゃっています。
「スキーリゾートとして世界的に注目を浴びるような土地でもあるので、日本酒を製造する中で培った発酵の技術を生かしながら、とにかく品質の良いものを作っていきたい。」

日本酒の輸出に力を入れる八海醸造、国産ウイスキーの海外展開で更に成長を目指します。

埼玉県利根川のほとり、羽生市で国産ウイスキーをいち早く確保しようという新たなビジネスが動き出していました。
その仕掛け人、ユニカスクの社長、上海生まれのクリス・ダイさんが訪ねたのは今年2月に稼働を始めた東亜酒造 羽生蒸留所です。
20年ほど前、国内市場の縮小で蒸留所の操業を停止しましたが、今回、クリスさんの後押しもあって再開することが出来ました。
東亜酒造の社長、仲田恭久さんは次のようにおっしゃっています。
「すぐ販売いただけるというお話があったのは大きな力にはなりました。」

通常、ウイスキーはボトルにするまで最低でも3年樽で熟成させる必要がありますが、既に販売済みでオーナーがいるといいます。
クリスさんは樽の状態でヨーロッパの投資家に数億円で売ったというのです。
クリスさんは次のようにおっしゃっています。
「すごく甘いアロマが出てきている。」
「やっぱり繊細な味わいが日本の精密な管理の下で作られているというのはグローバルに知られていることで、海外の投資家も愛好家もバイヤーも期待をしております。」

クリスさんが始めたのは樽の状態でウイスキーを買えるユニカスク(UniCask)という新たなサービスです。
お客がユニカスクを通して蒸留所の樽を買うとユニカスクが証明書を発行します。
3年後、お客は出来上がったウイスキーをボトルで受け取ることが出来ます。
更に熟成させて価値を高めてから樽の権利を第三者に売ることも出来るのです。
お客はスマホで樽の温度や湿度をいつでも確認出来、取引記録もブロックチェーンで安全に管理しているといいます。
投資は熟成したばかりの樽にまで、国産ウイスキーブームが過熱しています。
解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「新しいものが出来てくると品質が上がってきますし、安いものがより美味しくということだと思うんですよ。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

まず、昨年の香港のオークションで日本のウイスキー、「山崎55年」の落札価格が約8500万円だったという事実、そして世界的な評価の高まりで国産ウイスキーの輸出額は2020年には2010年の16倍となっているという事実にはとても驚きます。
いつかこのバブルも弾けますが、それまでに「山崎55年」の落札価格はいくらまで上がるのでしょうか。

こうした状況において、自分の両親、あるいはその先代に多少の資産家でウイスキー好きの人がいたら、ダメで元々でウイスキーの保管してありそうな場所を探してみる価値はあると思います。
他にも世界で日本のウイスキーの評価は年々高まっているといいますから、ウイスキー好きの方は以前購入して何十年か保管しっぱなしの国産ウイスキーがあったら、ネット検索してどのくらいの価格で売買されているか確認してみたらいかがでしょうか。

一方、このウイスキーの購入者はどのような想いを込めてどんな状況で飲むのでしょうか。
あるいは当初から更なる値上がりを見込んで投資目的での購入かもしれません。

それはさておき、国産ウイスキーの買い取り価格高騰の理由は以下の2つといいます。
・原酒の不足
・中国の富裕層がエンドユーザー

こうした海外からの需要に応えるように国内では日本酒メーカーの参入も含めて新たな蒸留所が続々と開設されているといいます。
しかも、通常、ウイスキーはボトルにするまで最低でも3年樽で熟成させる必要がありますが、既に販売済みでオーナーがいたり、樽の状態でウイスキーを購入出来るユニカスク(UniCask)という新たなサービスがあるのでビジネスリスクは低いと思います。
また、長い目で見れば、中国の富裕層は今後も増え続けると見込まれます。
ですから、国産ウイスキーの過熱状態は当分続くのではないでしょうか。
また、こうした過熱状態だからこそ、ウイスキーをボトルにするまでの樽での熟成期間をより短くする技術が実現出来ればという思いが強くなってきます。

いずれにしても冷静に考えれば、ある商品に当初の価格の何十倍、あるいは何百倍もの値が付くという情況は異常です。
しかし、こうしたバブル状態はヒトの気持ち、すなわちいくら払ってでも是が非でも購入したいというとても強い欲望がそうさせているのです。
そしてこうした欲望を抑えるのはとても難しいことを今回のウイスキー・バブルも物語っています。
一方で、こうした強烈な欲望が経済の活性化につながっている側面もあるのです。
ですからヒトの欲望は社会的な観点からすれば、“諸刃の剣”と言えます。

 
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