2021年11月18日
アイデアよもやま話 No.5116 ”非接触レジ”で客単価が2割アップ!
7月22日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で客単価が2割アップする”非接触レジ”について取り上げていたのでご紹介します。

大手スーパーではヒトやモノにほとんど接することなく買い物が出来る”非接触レジ”を使ったお客の方が客単価が約2割高いことがわかりました。

スーパーマーケットのイオンスタイル幕張新都心(千葉市美浜区)で今導入が進んでいるのが「レジゴー」というシステムです。
買い物カゴに専用のスマホをセットし、買い物をスタート、商品を手に取り、バーコードを読み取ってカゴに入れていきます。
すると、その商品名と価格、そして商品の総額がスマホに表示されます。
商品をカゴに入れた段階で計算は完了、セルフレジのQRコードを読み取れば後は支払うだけです。
店側の人手不足対策やお客が並ばなくて済むなどがメリットとして考えられていました。
しかし、導入が進むにつれて意外なデータがありました。
イオンリテールの執行役員、山本実さんは次のようにおっしゃっています。
「客単価の差が15〜20%ぐらいございます。」
「「レジゴー」の方が沢山お買い物いただいていると。」

いったいなぜなのでしょうか。
お客に聞いてみると、以下のような声がありました。
「予算を決めておいて、ここ(画面)を見ながら買うので、逆に買い過ぎなくなったかな。」

「前はすごくなんでも見るものを(カゴに)入れてたんだけど、合計金額が出ているので無駄なものは買わないようにしようかとかいうのがあるので・・・」

しかし、データでみるとこうした人は少数派だといいます。
その理由について、山本さんは次のようにおっしゃっています。
「他のところで買っている商品が全て私どもの売り場の中で“買い忘れ”なく買っていただくことで(購入する)点数が伸びていると。」

カゴの中身がスマホで見て分かるため、「節約」よりも「買い忘れ」が減った効果の方が大きかったと分析しています。
更にお客の「気分」も関係するといいます。
1週間に2度は来るという男性客は商品のバーコードを慣れた手つきで読み取ります。
そして次のようにおっしゃっています。
「面白いよ。」
「欲しいものは入れちゃいますね。」

自分でカゴに入れるのが楽しくて買ってしまう効果もあるようです。
山本さんは次のようにおっしゃっています。
「勿論、鮮度や価格も重要ですけども、それに加えてお客様の体験値や買い物の楽しさを提供する必要があると考えております。」

この“非接触マジック”とも言える“客単価”のアップ、実はスーパー以外の業種でも見られるといいます。
7月21日に東京・町田市で100店舗目をオープンした中華料理チェーン、ぎょうざの満洲、店に入るとテーブルにはQRコードが表示されています。
一部店舗では自分のスマホで注文から決済までを“非接触”で行えるモバイルオーダーを導入しているのです。
気になるお客の単価ですが、副社長の池野谷高志さんは次のようにおっしゃっています。
「(モバイルオーダーを)使っていただいた方はそうでない方と比べますと、100円ぐらい客単価が増えているということ。」

ぎょうざ定食が450円とリーズナブルな価格が売りのお店、100円は大きな単価のアップです。
ある男性客は次のようにおっしゃっています。
「店員さんに声をかけなくてもスムーズに自分の携帯からサクサクと注文が出来て、「これも頼んじゃおう」っていうのが子どもとか家族と来ると、デザートとかも頼み易い。」

店側がモバイルオーダーで更に期待を寄せるのが“お土産ぎょうざ”などのテークアウト商品です。
飲食に来たお客が食事中にお土産を買うことも出来るからです。
池野谷さんは次のようにおっしゃっています。
「一度使って頂いた方がリピートして更に利用していただける確率が高いので、コロナが収まった後でもモバイルオーダーは増えていくと思います。」
「非常にうちの大きな柱になると思います。」

コロナ禍で加速した“非接触”ですが、消費に新たな効果を生み出しているようです。
アマゾンなどのネット通販がリアルを脅かすと言われて久しいですが、こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「リアルをデジタルに置き換えるというのが今までの流れなんですけど、このレジを見ているとネットのショッピングモールでカゴに入れる作業をリアルに置き換えた、逆にしたんじゃないかと思いますね。」
「ネットモールだとまずカートに入れて次に決済方法を決めてそれで決済するわけですね。」
「ところが「レジゴー」だと、お店に入って例えば果物があったら、この色はどうだとか匂いはどうかなって確認をしてスキャンをする。」
「それでカートに入るわけですね。」
「それで支払いに行って無人のレジで最後はキャッシュレスでやってもいいし、現金でも払えるわけです。」
「(ですからネットショッピングとリアルの体験の融合ということなのではという指摘に対して、)そうですね。」
「カートで商品を何買ったか一覧出来るので、ゆっくり見て回れると。」
「ネットだと、時間を有効に使えるとか言いますけど、意外に探すのに時間がかかる。」
「あるいは広告がかなりストレスになったりすると。」
「例えば今、ガソリンスタンドのセルフというのは割と普通ですよね。」
「だから一般の手厚い小売サービスを見直すきっかけが、消費者が変わることで出てくるんじゃないかなと思いますね。」
「(日本の良いところでもあるが、過剰なサービスだという時もあると言われるので消費者は意外と手間を受け入れるのではという指摘に対して、)はい。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

イオンスタイル幕張新都心で今導入が進んでいる”非接触レジ”の「レジゴー」というアプリを使ったお客の方が客単価が約2割高いことはとても意外です。
そこで「レジゴー」を使うメリットとデメリットについて以下にまとめてみました。
(メリット)
・商品の購入ごとに商品名と価格、そして商品の総額がスマホに表示されるのでお客は買い過ぎをしなくて済む
・一方、購入商品が全てスマホに表示されるのでお客の“買い忘れ”が減る
・また、「レジゴー」を使うこと自体がお客の楽しみになっており、一部のお客は“買い過ぎ”の傾向も出ている
・その結果、客単価が15〜20%伸びているので店の売り上げ増に貢献している
・店側の人手不足対策や混んでいる時でも従来のレジ係によるレジにお客が並ばなくて済む

(デメリット)
・お客は商品を選んで買うたびにいちいちバーコードを読み取る必要がある

ちなみに、私がよく行くスーパーでは、やはり一部のレジで”非接触レジ”を導入していますが、「レジゴー」とは異なり、従来のように買い物を済ませた後、レジで全ての商品をお客が自分でバーコードを読み取らせています。
これでは単純にお客が従来のレジ係の肩代わりをしていることになり、何となく割り切れなさが残ってしまいます。
それでも、一部のお客は従来のレジよりも並ぶ時間が少なくなる済むことから”非接触レジ”使用しています。
ちなみに、私は一度だけこの”非接触レジ”を使いましたが、やはり自分でいちいち商品を読み込ませるのが面倒に感じ、今でも従来のレジに並んでいます。

さて、ここで思い出すのはユニクロの”非接触レジ”です。
ユニクロでは6年ほど前から画期的な取り組みを進めていたのです。
全品に無線で商品情報を読み書き出来るICタグを付け、レジでの即時精算を可能にしているのです。
要するにいちいちお客がバーコードを読み取る必要がなく、一瞬で会計を済ますことが出来ます。
そして、今では恐らく全店舗でこのシステムが導入されていると思います。(参照:アイデアよもやま話 No.3131 ようやく無人レジで即時精算が可能になる時代到来!

ちなみに、私もよくユニクロを利用しており、最初にこのシステムを利用した時は手間取り、係の人にサポートしていただきましたが、今では快適に買い物を済ますことが出来ています。

一方、中華料理チェーン、ぎょうざの満洲でも一部店舗では自分のスマホで注文から決済までを“非接触”で行えるモバイルオーダーを導入しているのですが、モバイルオーダーを使用するお客は使わないお客と比べて100円ぐらい客単価が増えているといいます。
更にこちらのお店では店員に声をかけなくても自分のスマホからテークアウト商品の注文も出来るのでリピーターになってくれる確率が高く、コロナ禍の収束後もモバイルオーダーは増えていくと見込んでいます。

ということで、まさにコロナ禍で加速した“非接触レジ”はリアル店舗での消費に新たな効果を生み出しているのです。

アマゾンなどのネット通販がリアル店舗を脅かすと言われていますが、現実にその売り上げをリアル店舗と比べれば圧倒的に勝っています。
しかし、ネット通販も良い点ばかりではありません、
解説キャスターの原田さんも指摘されているように、ネット通販だと意外に買いたい商品を探すのに時間がかかる場合があります。
更に中には粗悪品を扱う業者もあり、その判断が付きにくい場合があります。
また、こうした業者と連絡を取る手段がメールだけに限られる場合があり、面倒で泣き寝入りしてしまいがちです。
ということで、リアル店舗もネット通販に取り組みつつありますから、今やネット通販とリアル店舗とが相互に入り乱れている状態と言えます。

しかし、バーコードやICタグなどの普及により、今や従来のビジネスを見直し、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むことが容易な状況になっています。
今回ご紹介した事例はその一例と言えます。

さて、小売業を念頭に置いた場合において、お客の視点から見た場合の望ましい買い物の要件を以下にまとめてみました。
・ネット通販でもリアル店舗でも状況に応じて自分の買いたいものが買うことが出来る
・買いたい商品、あるいは探している商品について、必要に応じてリモートで相談出来る
・信頼のおける業者から商品を購入出来る
・必要に応じて買い物代行サービスや宅配サービスを利用することが出来る
・アフターサービスにおいても丁寧な応対が期待出来る
・会計を速やかに済ますことが出来る
・必要に応じてカードや現金などでの支払いが選択出来る
・DXの導入などでコスト削減した分の一部は値下げに反映して欲しい

なお、今回ご紹介したような事例が増えていくと働く場が縮小していくと見られています。
しかし、一方でロボットと人とが融合した“分身ロボット”によるサービスも誕生していいます。(参照:アイデアよもやま話 No.5092 ”分身ロボット”の広がる活用!
こうしたサービスはこれまで雇用の機会に恵まれなかった人たちにも働く場を提供出来るのです。
ですから、DXへの取り組み方次第で逆に雇用機会の増大を期待出来るのです。

ということで、まだまだ小売業に限らず全ての業界において改善の余地は沢山あり、先ほどの要件を徹底的に追及していけば、ベンチャー企業と言えどもアマゾンなどに対抗出来る余地があるのです。

 
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