2021年11月15日
アイデアよもやま話 No.5113 iPS細胞関連研究の最前線 ー その1 iPS細胞を使った日本発のコロナ治療薬の開発!
7月22日(木)放送の「あさチャン」(TBSテレビ)でiPS細胞関連研究の最前線について取り上げていました。
そこで3回にわたってご紹介します。 
1回目はiPS細胞を使った日本発のコロナ治療薬の開発についてです。

コロナを治す薬は今どこまで研究が進んでいるのでしょうか。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所と共同開発している藤田医科大学、治療薬のカギを握っていたのは京都大学iPS細胞研究所の所長でもある山中伸弥教授の発見したiPS細胞でした。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所の河本宏副所長は次のようにおっしゃっています。
「iPS細胞を材料にして、そこから再生したキラーT細胞を新型コロナウイルスの治療薬として使おうということを考えています。」
「キラーT細胞というのはウイルス感染細胞を殺すためにいる細胞なんです。」
「最終的には(コロナを)治してしまう切り札となる細胞なんですね。」

緑色に光るのが人が誰でも持っているキラーT細胞です。
悪性の細胞にへばりつくとくっつかれた細胞が赤色に変わります。
これがその細胞が死にかけている証拠です。
キラーT細胞は新型コロナウイルスに感染した細胞を探し出して破壊する力を持っているのです。

この治療薬の作り方ですが、まず新型コロナウイルスから回復した感染者からキラーT細胞を取り出します。
これをiPS細胞で人工的に増やして患者に点滴液として投与することを目指しています。
3年後に実用化を目指すといいます。
河本副所長は次のようにおっしゃっています。
「人類にとってこんな大事なキラーT細胞がiPS細胞から作れるというのは、これは使わない手はないというような、キラーT細胞療法というのが(コロナ治療薬の)一つの大きな一画を占めるようになると確信しております。」

また山中教授は次のようにおっしゃっています。
「(無限の可能性を秘めているiPS細胞について、)(コロナに)感染して回復した人の血液をいただいて、そこからiPS細胞を作っています。」
「僕たちだけでは出来ることは限られていますから、世界中の方に無償で提供していますので。」
「普通、研究というのは競争なのですけれども、新型コロナウイルスに対しては競争というよりは協力が一番大切ですので、それぞれの研究者が得意分野で貢献して、みんなが力を合わせると一人では出来ないようなスピードで、一人では出来ないようなブレイクスルー(突破口)が出来ると思いますので。」
「(ワクチン、そして治療薬が確立されれば、新型コロナウイルスと私たちとの付き合い方はどのように変わっていくのかという問いに対して、)今までは「ウイルスと闘う」という感じが強かったのですが、ワクチン・治療薬が揃ってくると、ある意味「(コロナと)共存」と言いますか、そういうふうに考え方を変えることが出来るかもしれないです。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の要旨を以下にまとめてみました。
・iPS細胞を使ったコロナ治療薬のキーポイントはキラーT細胞である。
・キラーT細胞は新型コロナウイルスに感染した細胞を探し出して破壊する力を持っている。
・この治療薬の製法は、新型コロナウイルスから回復した感染者からキラーT細胞を取り出して、これをiPS細胞で人工的に増やして患者に点滴液として投与することで3年後の実用化を目指している。
・現在、この治療薬の研究に取り組んでいる研究者だけでは出来ることは限られているので、世界中の研究者に無償で提供することにより、それぞれの研究者が得意分野で貢献して、みんなが力を合わせることによるブレイクスルーを期待している。
・今までは「ウイルスと闘う」という感じが強かったが、ワクチン・治療薬が揃ってくると、「コロナとの共存」というような考え方に変わるかもしれない。

こうしてまとめてみると、キラーT細胞はコロナ治療薬だけでなくワクチンとしての可能性を秘めていることが分かります。
あらかじめ人の体内にキラーT細胞を含んだワクチンを投与しておけば、新型コロナウイルスに感染してもこのウイルスを死滅させることが出来るので軽症にも至らないほどの書状で済むと期待出来るからです。

更にこうした基本的な考え方は他の病気への対応策にも適用出来そうです。
そういう意味ではiPS細胞は医療革命をもたらす画期的なアイデアと言えます。

なお、山中教授が志向している、新型コロナウイルスの感染に立ち向かう国際的な取り組み方として、研究成果を世界中の研究者に無償で提供すること、そしてそれぞれの研究者が得意分野で貢献するという基本的な考え方は世界各国共通の大きな問題や課題に取り組むうえでとても効率的、かつ効果的だと思います。

なお、こうした基本的な考え方は、かつての近江商人の教訓である“三方良し”(参照:アイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え!)につながり、アメリカのトランプ前大統領の唱えた「アメリカファースト(アメリカ第一主義)」とは真逆な考え方であり、日本の外交方針における国是、あるいは企業の事業への取り組み方における社是とすべきだと思います。

 
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