2021年11月08日
アイデアよもやま話 No.5107 森林大国、日本にとって森林は経済のニューフロンティア!?
7月13日(火)放送の「あさチャン」(TBSテレビ)で木の有効活用のいくつかの事例について取り上げていたのでご紹介します。 

デザインスタジオ(東京・江東区)、Playfoolで作られていたのは木の幹を原料としたクレヨンです。
スギやヒノキ、ケヤキなど12種類の木を粉砕して蜜蠟と固めることでクレヨンになっているのです。
こちらのサキ・コッペンさんは次のようにおっしゃっています。
「家具とか家の建材になる木の端っこの部分とか、木の上とか下とかは家具に使えないのでそういう部分がクレヨンになっています。」

また、森林総合研究所(茨城県つくば市)では木からお酒を作る研究が行われています。
杉、白樺、桜など現在6種類の試作品があって、それぞれの木の香りが特徴で、商品化されれば世界初となるのだそうです。
ミズナラはウイスキーのような芳醇な香りがします。
木の粉と水を混ぜて特殊な技術ですりつぶして酵母と酵素で発酵させて、その後蒸留すれば完成します。
森林総合研究所 森林資源化学研究領域の大塚祐一郎主任は次のようにおっしゃっています。
「今、日本各地で植えられている杉は使い道がなくて、樹齢100年を超えるものが沢山あるんですけども、そのできた瞬間から100年の時間がお酒の中に込められている。」

ロマンがあるだけでなく、この高齢の木を有効活用することにも意味があるのです。
今、日本では人工林の半数以上が樹齢50年を超えて、木の高齢化が進んでいます。
成長のピークを越えた木はCO2の吸収量が減るため、伐採して森林を循環させるということが大切なのです。
大塚さんは次のようにおっしゃっています。
「切ったところには次の木を植えて山を循環しながら使っていただければ・・・」

森を循環させるために切った木を利用する取り組みは他にもあります。
ザ・キャピタルホテル 東急(東京・千代田区)で飲み物と一緒に運ばれてきたのは木でできたストローです。
ほのかに木の香りがします。
木造住宅を手掛けるメーカー、アキュラホームとカンナ削りの技術を使って開発したものなのです。
ザ・キャピタルホテル 東急の末吉孝弘総支配人は次のようにおっしゃっています。
「プラスチックを減らすだけでなく、木でやることに意味がある。」
「それも間伐材・廃材を使ってやることに長い意味で環境に対していいサイクルを作っていく役目を果たせる。」

伐採した木の有効活用、ホテルでは2年間で約10万本のストローを利用しています。(2019年から導入)

更に自動車の外装や内装の部分に、そしてパソコンなどに使われる電子基板に、全てこれらは木からできた新素材「改質リグニン」なのです。
森林総合研究所 新素材研究拠点の山田竜彦拠点長は次のようにおっしゃっています。
「電子基板は性能が結構高いプラスチックじゃないと出来ない。」
「キロ9000円レベルの高級なプラスチックです。」
「(木からできる新素材だと)約3分の1くらいのコストで出来ます。」

更に木からできた新素材は耐熱性が高く、高性能のプラスチックの代わりに利用が可能です。
従来のプラスチックと燃え方を比べてみますと、熱に強く燃えにくいことが分かります。
更に繊維状にかたちを変えることも出来るので3Dプリンターの材料としても利用可能です。
山田さんは次のようにおっしゃっています。
「山には森林資源が循環的、持続的に生産されている森がすごくある。」
「それを利用するという、日本の山には資源が眠っていたということです。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

アイデアよもやま話 No.5103 果樹栽培で地球温暖化を防止!?では“脱炭素農業”の一環として、栽培途中で出てくる選定した枝を炭にして土の中に埋めることでCO2排出を削減するアイデアをご紹介しました。
今回ご紹介した木の有効活用は家具や家の建材になる木の端っこの部分を原料としてクレヨンを作るというリサイクルです。

また、木からお酒を作る研究も行われているといいます。
杉、白樺、桜など現在6種類の試作品があり、それぞれの木の香りが特徴といいますから、SDGs(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)という時代の要請、あるいは世界的な日本酒ブームがある中で商品化されれば世界中からの引き合いが大いに期待出来ます。
普段お酒を飲まない私でも木の香りのするお酒が市販化されたら是非一度飲んでみたいと思います。
また、高齢の木のこうした有効活用は、伐採して森林を循環させるという観点からも大切なのですから一石二鳥です。
それにして木からお酒を作るというのはかなり突飛なアイデアだと思います。

他にも森を循環させるために伐採した木の有効活用として、ザ・キャピタルホテル 東急では原料を従来のプラスチックからから木に替えたストローを使用しているといいます。

更に自動車の外装や内装の部分やパソコンなどに使われる電子基板として活用されているのは木からできた新素材「改質リグニン」といいます。
しかも従来の電子基板は性能が高いけれど高額のプラスチックが使われていたのが「改質リグニン」で代用すれば約3分の1のコストで済むというのです。
しかも、「改質リグニン」は耐熱性も従来のプラスチックに比べて高いといいます。
更に繊維状にすることも出来るので3Dプリンターの材料としても利用可能といいます。

こうしてみてくると、人工林をきちんと管理することによって空気中のCO2を吸収出来るので地球温暖化対策として有効であり、一方で私たち人類の生存に必須な酸素を供給してくれ、しかも高齢になった木は今回ご紹介したようにいろいろな用途があるのですから、木は貴重な資源と言えます。

幸いにして日本は森林大国です。
ですから、私たちはあらためて森林の重要性を認識し、国を挙げて人工林の保護・育成、そして高齢になった木の有効活用を積極的に進めるべきだと思います。
ということで、森林大国、日本にとって森林は経済のニューフロンティアになる可能性を秘めているのです。

 
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