2021年11月01日
アイデアよもやま話 No.5101 「日の丸技術」が温暖化問題の救世主に!?
7月5日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で温暖化問題の救世主になり得る「日の丸技術」について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

今や世界中が“脱炭素”に向けて動き出していますが、そうした中で再び注目されているのが日本企業が積み重ねてきた「日の丸技術」です。
世界の環境問題を解決する日本のインフラ輸出の最前線を追いました。

ロシアの首都、モスクワから約60kmの町、ティモホボにあったのはヨーロッパ最大のごみ置き場です。
自然に囲まれた場所ですが、すごく臭いです。
こちらは巨大なごみ処分場で、広さは東京ドーム24個分もあります。
ロシアではごみ焼却施設が不足していて、約9割が埋め立てられています。
近くに住む人に聞いてみると、「臭くて、もうここでは暮らせない」、あるいは「住んでいた人もみんな引っ越ししてしまった」といいます。
深刻化するロシアのごみ問題、我慢強いと言われるロシア国民ももう限界です。

プーチン政権がごみ問題の解決で頼ったのは日本の日立造船グループです。
モスクワ近郊の町、スビスチャギノです。
既に日立造船グループがごみ焼却施設の建設を始めていました。
2023年に完成予定のごみで発電する「ごみ焼却発電」施設、その最大の特徴はごみを燃やすだけでなく、その熱を使って発電も出来ることです。
ごみを廃棄物にするのではなく、資源として生かす発想です。
日立造船イノバのアーンスト・ゲルハルトさんは次のようにおっしゃっています。
「今から日立造船グループがつくった、焼却場で最も重要なパーツを取り付けます。」

ごみを空気に触れさせ、燃焼効率を上げる部品、排出する有害物質が少ない日本式の焼却場は海外から高く評価されています。
ここも合わせ、今後モスクワ近郊の4ヵ所でごみ焼却発電所を建設する予定、その受注額は数百億円規模とされています。
日立造船グループはこのごみ焼却発電の世界シェア1位に成長しました。
ロシア国営企業傘下RTインベストのアンドレイ・シペロブCEOは次のようにおっしゃっています。
「最高の技術で安全にごみ処理出来るのは日立造船のおかげです。」
「このプロジェクトはロシアにとって非常に重要なものなのです。」

世界で注目される日本のインフラ輸出はイギリスにも行われています。
中部のノ−スヨークシャーにあるドラックス発電所は2.6ギガワット、400万世帯の電力を供給する、世界最大のバイオマス発電所です。
燃料は木質ペレットで、焼却時にCO2を排出しますが、木が成長過程でCO2を吸収しているため、CO2の排出はプラスマイナス“ゼロ”と見なされます。
更にバイオマス発電が排出するCO2は煙突の先から出るのですが、三菱重工の技術でこれを回収します。
三菱重工グループは今年6月、イギリス電力大手のドラックスと連携し、世界最大のCO2回収施設を建設すると発表しました。
年間800万トン以上のCO2を回収することで、プラスマイナス“ゼロ”だけでなく、CO2排出量“マイナス”を目指す計画です。
イギリスの発電大手、ドラックスのトップ、ウィル・ガーディナーCEOが番組の取材にその巨大な投資額を明かしました。
「CO2の排出をマイナスにする世界最大の事業です。」
「この発電所全体では3000億円以上の巨大事業になります。」

いったいどうやってCO2を回収するのでしょう。
三菱重工業の現地のトップ、細見健太郎常務執行役員は次のようにおっしゃっています。
「これが吸収塔ですから、まずガスを冷却してここ(パイプの中)で(CO2を)吸収させるということなのです。」

このパイプの中を通っているのがアミン吸収液です。
発電所で発生した排気ガスをこのアミン吸収液に触れさせるとCO2だけを分離し、回収出来ます。
実は三菱重工は関西電力と連携し、30年以上も前からアミン吸収液の研究をしてきました。
長年培ってきた技術がようやく世界の注目を集め、排ガスからのCO2回収の分野で世界シェア7割を占める事業にまで育ったのです。
細見常務は次のようにおっしゃっています。
「2050年にカーボンニュートラルという世界的に明確な目標があるので、ようやくそういう技術が世界に花開く時代が来たなという。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

以下に“脱炭素”に向けた、2社の日本企業による海外での取り組みについてまとめてみました。

(日立造船グループのロシアでの取り組み)
・ロシアではごみ焼却施設が不足しており、約9割が埋め立てられている
・深刻化するロシアのごみ問題、我慢強いと言われるロシア国民ももう限界という
・プーチン政権がごみ問題の解決で頼ったのは日本の日立造船グループである
・2023年に完成予定のごみで発電する「ごみ焼却発電」施設、その最大の特徴はごみを燃やすだけでなく、その熱を使って発電も出来ることである
・ごみを廃棄物にするのではなく、資源として生かす発想である
・ごみを空気に触れさせ、燃焼効率を上げる部品、排出する有害物質が少ない日本式の焼却場は海外から高く評価されている
・今後モスクワ近郊の4ヵ所でごみ焼却発電所を建設する予定で、その受注額は数百億円規模とされている
・日立造船グループはこのごみ焼却発電の世界シェア1位に成長した

(三菱重工グループのイギリスでの取り組み)
・イギリス中部のノ−スヨークシャーにあるドラックス発電所は2.6ギガワット、400万世帯の電力を供給する、世界最大のバイオマス発電所である
・燃料は木質ペレットで、焼却時にCO2を排出するが、木が成長過程でCO2を吸収しているため、CO2の排出はプラスマイナス“ゼロ”と見なされる
・更にバイオマス発電が排出するCO2は三菱重工の技術でこれを回収する
・三菱重工グループは今年6月、イギリス電力大手のドラックスと連携し、世界最大のCO2回収施設を建設すると発表した
・年間800万トン以上のCO2を回収することで、プラスマイナス“ゼロ”だけでなく、CO2排出量“マイナス”を目指す計画である
・ドラックス発電所全体では3000億円以上の巨大事業になる

こうしてまとめてみると、日立造船グループの例では単にごみを焼却するだけでなく、ごみの持つエネルギーを利用して発電させるといい、三菱重工グループの例では単にバイオマス発電所を建設するだけでなく、焼却時に排出するCO2を回収するというのです。
こうした技術はいかにもきめ細かい配慮をしたハイブリッド技術で、まさに「日の丸技術」と言えます。

そして、今や“脱炭素”に向けて世界中には途上国を中心にこうした技術を必要とする国々が沢山あるはずです。
ですから“脱炭素”関連事業はビジネスにおける一つの大きなニューフロンティアと言えます。
しかも、日本企業には今回ご紹介したように素晴らしい技術を有する企業が少なからずあるのです。
ですから日本国家としてみれば、こうした企業の海外での活躍は経済活性化の一つの大きな柱になり得るのです。

ということで、こうした企業には世界的な“脱炭素”への貢献、および日本の経済活性化への貢献を目指してどんどん海外進出を果たしていただきたいと思います。
更に言えば、こうした個々の“脱炭素”への取り組みを個々の企業が進めるのではなく、“日の丸企業集団”として、また政府も全面的に支援しながら一丸となってどこかの国の都市、あるいはどこかの途上国を丸ごと持続可能な社会として実現させてしまうという国家戦略を打ち立てるべきなのです。

今の日本経済は他の先進国に比べて相対的に活性化されていません。
こうした中、このような壮大な構想を持って世界展開することは単に日本経済を活性化させるだけでなく、従業員一人一人のモラルアップ、更には各国との良好な交流が進み、国家安全保障上からみてもとても有意義だと思うのです。
そして、こうした戦略を実行に移すうえで、その裏付けとなる技術力を日本企業は持ち合わせているのです。
なお、こうした取り組みを進める際、留意すべきはこうしたビジネスを日本企業が独り占めするのではなく、日本のどこかの企業がインテグレーターとなって必要に応じてその国の企業、あるいは他の先進国の企業にも参加していただくといった計らいです。
そして、こうした取り組みの萌芽と見られる事例としてトヨタ自動車の取り組みが挙げられます。(参照;アイデアよもやま話 No.4917 トヨタ自動車がウーブン・シティの建設に着手!

日本の政治家、中でも特に総理大臣にはこうした壮大な構想をぶち上げていただきたいと思います。
今の日本の政治に欠けているのはこうした実効性のある壮大な、そして国民にやりがいをもたらす構想力だと思うのです。

 
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