2021年10月23日
プロジェクト管理と日常生活 No.716 『アメリカの対中国・台湾政策が”曖昧”から”明確”に!?』
6月17日(木)放送の「国際報道2021」(NHKBS1)でアメリカの対中国・台湾政策について取り上げていたのでご紹介します。

G7サミットが閉幕したばかりで台湾に戦闘機を派遣して中国は一段と強硬な姿勢を示していますが、こうした状況について、番組キャスターで前ワシントン支局長の油井秀樹さんは次のようにおっしゃっています。
「挑発的とも言えるこうした中国の行動を抑止するためにアメリカでは最近長年続けてきたある政策を止めるべきという声が上がっています。」
「それは何かと言いますと、“曖昧戦略”です。」
「アメリカは中国と台湾が軍事衝突した場合、アメリカ軍が介入するかどうか曖昧にする戦略(Strategic Ambiguity)を長年取ってきたんです。」
「曖昧にすることで中国にも自制を促してきたわけなんですが、最近の中国のあからさまな軍事的威嚇に対して台湾防衛を明確にする戦略(Strategic Clarty)に転換すべきという議論が高まっているんです。」
「これはアメリカ外交に大きな影響力を持つ外交問題評議会のハース会長が(昨年9月に)軍事的介入を明確にした方が戦争リスクを減らせると提言したものなんです。」
「更にアメリカ軍のデービッドソン司令官も(今年4月に)曖昧戦略を再検証する必要性があると発言したんです。」
「また議会でも保守強硬派を中心に台湾防衛を明確にすべきという声が少なくないんです。」
「(こうした声を受けてバイデン政権は曖昧戦略から明確戦略への転換を検討しているのかという問いに対して、)バイデン政権の高官なんですが、ヘインズ国家情報長官は(4月に)「曖昧戦略を転換すれば、中国はアメリカの国益を害する行動を活発化させる」と述べています。」
「またキャンベルインド太平洋調整官は(5月に)「今の戦略が平和と安定の最善の道だ、明確戦略には欠点がある」と発言したんです。」
「バイデン政権は現時点では、明確戦略が米中の緊張を高めかねないと見て、曖昧戦略を維持する考えなんです。」
「ただ中国が今後も力で台湾を脅かす姿勢を強めれば、アメリカで曖昧戦略を止めるべきという声が一段と高まることが予想され、日本の安全保障環境にも大きな影響を及ぼすことになりそうです。」

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、その要旨を以下にまとめてみました。

・アメリカは中国と台湾が軍事衝突した場合、アメリカ軍が介入するかどうか曖昧にする戦略(Strategic Ambiguity)を長年取ってきた
・しかし、最近の中国のあからさまな軍事的威嚇に対して台湾防衛を明確にする戦略(Strategic Clarty)に転換すべきという議論が高まっている
・バイデン政権は現時点では、明確戦略が米中の緊張を高めかねないと見て、曖昧戦略を維持する考えである
・ただ中国が今後も力で台湾を脅かす姿勢を強めれば、アメリカで曖昧戦略を止めるべきという声が一段と高まることが予想される
・日本の安全保障環境にも大きな影響を及ぼすことになりそうである

要するに、アメリカの対中国・台湾政策が”曖昧”から”明確”になるかどうか、今のところはっきりしていないということなのです。
こうした状況において、リスク管理の観点からすると、一般論として以下のことが言えます。
・リスク管理のキーポイントはリスクが小さいうちに有効な対応策を実施することである
・その理由はリスクが顕在化した後での対応では、何倍もの手間がかかってしまうからである
・中国がいずれタイミングを見計らって台湾を武力攻撃で中国統一を図ることは明確である
・その結果、今や、特に半導体関連では台湾企業は無視出来ない存在なので、台湾が大混乱に陥ると、世界経済は大きな影響を受けることになる
・更に、台湾統一後、中国は尖閣諸島、更には沖縄にも触手を伸ばしてくるリスクがある
・従って台湾問題の行方は日本にとって国家安全保障上、極めて重要である
・更に民主主義圏陣営国家全体にとって中国の覇権主義は大変大きな脅威になる
・もし、米中戦争が勃発すれば、そして核兵器が使用されれば、どちらが勝利しても計り知れないほどの人類の命が失われることになる
・そして日本という国家の存続も危機に瀕することになる
・もし、結果的に中国が世界制覇を成し遂げれば、世界各国は全て自由、人権、主権在民といった価値観から無縁の世界になってしまう
・同時に地球温暖化阻止に向けた世界的な取り組みの行方もどうなるか分からなくなる

このように想いを巡らせていくと、あらためて米中対立、および既に始まっている中国による台湾進攻を早期に食い止ることが人類共通の存続リスク対応策として浮き上がってきます。

その際、民主主義陣営の国々が対応するにあたっては以下のような要件があげられます。
・中国による台湾への軍事的進攻は数年以内に必ず起きることを前提とした対応を検討する(習近平国家主席の台湾統一を目指す意志はとても強く、変えることは出来ない)
・欧米、および日本などの民主主義陣営の国々は中国無しでも経済的に回るような環境づくりを早急に整備する
・同時に軍事的にも民主主義陣営の国々は一致団結して中国の軍事力を凌駕する体制を整え、このことを中国政府、および中国国民に理解させ、もし中国が台湾に軍事的な侵攻を始めれば、中国そのものも壊滅的な打撃を受けることを実感させる
・中国国内外における中国人の反政府勢力とも協力して中国政府に政策転換を促す

いずれにしても習近平国家主席率いる中国は国連などの国際機関に対してもその支配力を強めつつあるので、アメリカをはじめ世界各国が曖昧な態度を取り続けることは民主主義の崩壊を招くことにつながるということを肝に銘じるべきなのです。

 
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