2021年10月21日
アイデアよもやま話 No.5092 ”分身ロボット”の広がる活用!
分身ロボットについてはこれまでアイデアよもやま話 No.4234 高齢者や身障者にも働く場を広げる分身ロボット!などで何度となくお伝えしてきました。
そうした中、6月21日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で 新たな側面から取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

ロボットが器用にコーヒーを入れていますが、実は難病で寝たきりの人がロボットを自宅から遠隔操作して、コーヒーを入れる仕事をしています。
人工知能(AI)ではなく、リアルな人とロボットが融合した分身ロボットがもたらす未来とはどのようなものなのでしょうか。

6月21日、東京・日本橋にオープンしたロボットカフェ「DAWN ver.β(ドーン バージョン ベータ)」では、テーブル上で可愛らしく動くロボットは「Orihime(オリヒメ)」です。
操作しているのは都内に住む永廣柾人(ナガヒロ マサト)さん、脊髄性筋萎縮症という難病で寝たきりの生活をしています。
永廣さんは口元に設置したコントローラーを唇を使って操作、コミカルなロボットの動きは画面の右側にあるボタンを押すことで動く仕組みです。

このカフェを運営するのは「Orihime」を開発したオリィ研究所で、所長の吉藤オリィさんは次のようにおっしゃっています。
「分身ロボットカフェのメンバーたちは全国各地から参加し、東京で働くというふうなことが出来るわけなんですけど、・・・」

3年前から期間限定カフェの実験を重ね、今回、常設店舗としてオープンしました。
3年前の実験から参加する永廣さんは次のようにおっしゃっています。
「(働き始める前と比べて今の気持ちの変化について、)ロボットを使えば出来ないことはないと思えるようになりまして、ポジティブになれたかなと思いますね。」

このお店が生まれたきっかけには、吉藤さんが会ったある男性の存在があります。
7年前(2014年7月)、この番組は吉藤さんを取材、当時秘書として働いていたのが番田雄太さん、4歳の時の交通事故がきっかけで20年以上寝たきりの生活をしていました。
番田さんは当時の取材で次のようにおっしゃっています。
「病院にいると孤独で、人と社会との関わりがなくて、つらい。」

背景にあるのは、日本の障害者雇用の厳しい現状でした。
民間企業において、法律に定められた障害者の雇用率を達成している割合は48.6%と、半分に届いていません。
吉藤さんと番田さんは多くの寝たきりの人が働けるカフェをつくろうと決心、しかし番田さんは4年前に他界しました。
吉藤さんは次のようにおっしゃっています。
「これ(今回のカフェのオープン)が1つのモデルになれば、友達を作ったり、社会参加し易いんじゃないか。」

また、このロボットを活用するのは障害者だけではありません。
海の向こう、オーストラリアに住みながら働く健常者もいます。
2019年から分身ロボットパイロットを務めるマクドナルド万里伊さん(女性)です。
吉藤さんは次のようにおっしゃっています。
「「Orihime」ごと、働く場所を増やすということが今後も同じように継続されていくのかは検証していきたいところですけども、恐らくこの先寝たきりになっていく私たちもどうやって楽しく生きていけばいいか、そういったロードマップを引きやすいんじゃないかという・・・」

今、寝たきりの状態の方というのは、最初は周りの家族だったりヘルパーさんに「ありがとう」と言っているんですけど、だんだんと「すいません」、「ごめんなさい」というような気持になってしまうので、この「Orihime」を通じて社会に参加して、当たり前のように「ありがとう」というふうに言われるような社会になって欲しいと吉藤さんはおっしゃっています。

なお、このロボットがあれば、世界で活躍することが出来るようになります。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して、あらためて感じたことは、インターネットというコミュニケーション・インフラの凄さです。
今やネット社会と言われるように、世界中の誰とでもインターネットを介してコミュニケーションを取ることが出来ます。
こうしたインフラが整備されているからこそ、今回のコロナ禍においても在宅勤務やリモート会議などにより多くの日常業務を継続させることが出来ているというわけです。
そして、こうした延長線上でAIやロボットの活用により今回ご紹介したような“ロボットカフェ”も成立するのです。
こうした取り組みの積み重ねにより、健常者のみならず身体障害者でも、そして世界中のどこの国の人たちでも国境を越えて働く場を得る機会が格段に増えるのです。

ということで、”分身ロボット”を介したカフェのような世界展開により、身体障害者も含めて世界中のより多くの人たちが収入を得て、更に働く喜びを感じることが出来るようになると期待出来るのです。

さて、ここで思い出したのはポケトーク(参照:アイデアよもやま話 No.5086 リモート会議に便利なポケトークの追加機能!)の活用です。
例えば、英語やフランス語などの言語を気軽に、しかもお金をかけずに学びたい人たちは沢山いると思います。
そうした場合、例えば日本人が英語圏の日本語を学びたいと思っている不特定の人から英語を学びたい場合、その出会いの場を提供し、お互いに相手から会話などを学べるようにすれば、お互いに無料で気軽に語学を実践的に学ぶことが出来るようになります。
その際、サポートツールとして活躍するのがポケトークのような機能なのです。

ということで、今、日本は少子高齢化の進行により人手不足が深刻な問題になりつつありますが、インターネットというコミュニケーションインフラをベースにAIやロボットなどを活用することにより世界中から仕事を探している人たちを労働力として確保することが出来、こうした人たちに収入の手段を提供することが出来るようになります。

なお、こうした仕組みを作ることもDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環と言えます。
ちなみに、DXについてはこれまでアイデアよもやま話 No.4825 世界電子政府ランキングに見える日本政府のDX化の遅れ!などで何度となくお伝えしています。
そもそも“始めにDXありき”ではないのです。
あらゆるデジタル関連技術を活用して、これからの社会のあり方を明確にし、その具体的な姿をイメージし、その姿を実現するための“社会大変革”を進めるべきなのです。
そして、DXを制する企業こそがこれからのビジネスを制する、そしてDXを制する国こそがこれからの世界を制すると言えるのです。
なぜならば、今や“デジタル化”の活用により世界中からヒト・モノ・カネを確保することが可能だからです。
ですから、一見小さなベンチャー企業でも実質的には巨大なパワーで世界的に活躍出来る環境は既に整っているのです。

ここで思い出すのは日本のマイナンバーカードの導入です。
当初、マイナンバーカードの導入はまさに“始めにマイナンバーカードの導入ありき”でした。
だから失敗したのは同然の成り行きです。
目的が明確でなければ、更にその目的を達成するか、そのプロセスが明確でなければ、単なるデジタル化では“宝の持ち腐れ”で終わってしまうのです。
そもそもターゲットとする人たち、あるいは企業にメリットを理解されなければユーザー登録などをしてくれないのです。
これまでのマイナンバーカードの導入プロセスを反面教師にして、これからの社会のあり方を明確にするところからスタートしなければ、日本のDXは必ず失敗することは目に見えています。
しかも今回の日本版DXが成功しなければ、日本の経済的な衰退は避けられないということを現政権には肝に銘じていただきたいと願います。

 
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